ADHD(注意欠陥多動性障害)のグレーゾーンの人は、働きづらさを感じていることが多いです。一般就労で働いても、その特性を職場で理解や配慮が得られることは難しいからです。また健常者と同じ土俵で成果や実績を求められるため、無理を押してしまいうつなどの二次障害に至るおそれもあります。

こうしたとき、心身を病むくらいであれば転職を視野に今後を検討した方がいいといえます。また、原因となっているADHDの特性をカバーしながら働くためには、これまでの一般就労にこだわらず、障害者雇用も選択肢に入れて転職活動を行った方が成功しやすいです。

そこで以下ではADHDのグレーゾーンの人が、転職で失敗しないための秘訣と方法をみていきます。

ADHDのグレーゾーンの人が転職で失敗する原因

ADHDのグレーゾーンとは、ADHDの診断基準を完全に満たしていないが、一部のADHDの特性を持っている人を指します。こうしたグレーゾーンの人が転職で失敗する原因について、診断の付いている障害者と比べた場合との違いをみながら考えていきます。

まず、障害者として認定されている人は、障害者雇用の制度や、就労支援のサービスが利用できます。一方、グレーゾーンの人は障害者として認定されていないため、このような支援を受けることができないことが多いです。

また、ADHDの診断を受けている障害者は、障害に対する自己理解や職場から配慮が受けられるため、周囲とのコミュニケーションがしやすくなります。

一方、グレーゾーンの人は自分自身の特性を把握しにくく、周囲との認識にずれが生じることがあります。また、自分自身を「普通の人と同じように働かなければならない」というプレッシャーを感じることがあります。

そのため、自分に合わない職場や仕事で無理をしてしまい、ストレスや不安を抱えることがあります。これによって、パフォーマンスが低下し、転職で失敗する可能性が高まります。

また、障害者としてのアイデンティティーを持たないグレーゾーンの人は失敗やミスが多くなり、自分が本当に必要とされているのか、自分の能力や特性が評価されているのか不安を感じることがあります。そのため、職場での自信やモチベーションが低下したり、職場でのストレスやプレッシャーによって、より一層ミスやトラブルにつながることがあります。

このように、ADHDのグレーゾーンの人が転職で失敗する原因として、障害者としてのアイデンティティーの欠如や、職場でのストレスやプレッシャーによる特性の増加、業務内容や環境の不適切などが挙げられます。

障害者手帳を取得する多くのメリット

ADHDのグレーゾーンの人が転職するとき、病院で発達障害の診断を受けて精神障害者保健福祉手帳、いわゆる障害者手帳を取得しておくと有利になることが多いです。障害者雇用で転職することには以下のようなメリットがあるからです。

  • 障害者雇用という選択肢が増える
  • 障害への配慮が受けられる
  • ストレスが減って、興味のあることに集中しやすくなる
  • 創造力を活かせる

手帳取得によって一般枠だけでなく、障害者雇用を選べるようになります。例えば以下は、システム開発会社の障害者雇用・正社員求人です。

営業職の障害者雇用求人です。応募条件は、障害者手帳が必須であることが明記されています。このように障害者雇用の求人は、障害者手帳を所持している人に限られます。

なお、国が障害者の雇用機会創出のために助成金などで採用側を補助しているため、障害者手帳を持っていると職場での配慮措置を求めることもできます。

またADHDの特性である注意散漫、落ち着きがない、集中力にムラがある、ミスが多いなどは、職場でのストレスや疲れを引き起こす原因となることがあります。しかし、障害者雇用であれば、ADHDの特性を理解した上で働き方や環境を調整してくれるため、ストレスが減り、疲れにくい環境が整います。

そして、ADHDの「興味のあることには過集中できる」「創造力がある」という特性を活かして障害者雇用で働くことにより、アイデアや発想力を活かしたり、自分の得意分野や興味がある仕事に取り組むことができます。それによって、仕事へのモチベーションが高まり、より生産的な働き方ができる可能性があります。

このように障害者雇用で働くことによって、ストレスを減らしながら興味のあることに集中して働くことができます。

障害者雇用で受けられる配慮や理解

ADHDのグレーゾーンの人が手帳を取得した場合、障害者雇用の配慮としては以下のようなものがあります。

  • タスクの明確化とスケジュールの調整
  • 集中できる環境の提供
  • コミュニケーション方法の調整と、肯定的なフィードバックの提供

ADHDの人は、物事を細分化することで理解しやすくなります。そのため、仕事のタスクを明確に定義し、スケジュールを調整することが重要です。

例えば以下は、大手化粧品会社の障害者雇用・正社員求人です。

この求人は、社内システムエンジニアです。システムエンジニアの業務はチーム作業が多いですが、社内システムがメインの場合、個人への直接の業務依頼も多いです。このとき、この求人のように上司が業務依頼を管理、調整してくれると安心です。

ADHDの特性に対する必要な配慮は他にもあります。それはADHDの人は集中力が短いため、効率的な仕事をするためには集中できる環境が必要だということです。

また長時間同じ作業をすることが苦手だったり、静かな環境の整備や柔軟なスケジュールの設定、休憩時間の調整が必要になる場合があります。

ADHDの人は言葉足らずや誤解を生んだり、ミスをしやすく負のフィードバックに敏感に反応したりすることがあるため、コミュニケーションの頻度や方法を調整したり、肯定的なフィードバックを積極的に提供したりすることが必要です。

このようなとき障害者雇用においては、個人の特性やニーズを理解し、適切な配慮を受けられることが多いです。

グレーゾーンの人が手帳取得するための条件とは

ADHDのグレーゾーンに属する人が、障害者手帳を取得するためには、以下の手順を踏むことが必要です。

まずは医療機関を受診し、ADHDの診断を受ける必要があります。ADHDは医師による専門的な診断が必要です。診断書には、診断日、診断結果、症状、治療法等が明記されています。

例えば以下は、私が手帳を申請したときの担当医の診断書です。

この診断書のうち、手帳取得に必要となる所見の主要な部分は以下の通りです。

日常生活や社会生活で、障害に対する援助がどの程度必要かが列記されています。この所見で、特性が社会生活等で支援が必要ないと判断されると手帳は取得できません。

このため担当医に障害者雇用による転職の意向を伝え、手帳を取得するための相談しましょう。そうして今の職場や人間関係で、特に困っていることを整理してできるだけ詳しく伝えましょう。するとADHDの特性を踏まえて、手帳取得のために必要な診断を下してくれやすくなります。

そうして診断が下ったら、市役所の福祉担当部署に手帳の申請します。そして障害者手帳の申請書に必要事項を記入し、診断書を添付して提出します。

例えば以下は、私の場合の申請書です。

申請書を提出後、役所からの審査を受けます。そうして、日常生活に支障をきたす症状や必要な支援内容などが判断され、障害者手帳の種類や等級が決定されます。

このときADHDのグレーゾーンの人は、日常生活に支障をきたしている症状があるかどうかが重要なポイントとなります。例えば、注意力散漫によって勉強や仕事がうまくいかない、社交的な場での行動や発言が適切でないなど、社会的な制約がある場合は障害者手帳の取得が可能となります。

このように障害者手帳の取得には、あくまでも医師による専門的な診断書が不可欠です。手帳取得の強い意向や、ADHDの特性が社会生活などで様々な障害となっていることを担当医にわかりやすく丁寧に伝え、診断書を作成してもらいましょう。

はじめての障害者雇用で適職に出会うためには転職エージェントを利用しよう

転職先を選ぶとき、多くの障害者はハローワークへ相談します。ただ、中小・零細から大企業までさまざまな求人があります。このため条件の悪い会社もまぎれており、求人の質は様々です。

こうした判断は、求職者自身が求人情報から判断しなければいけないことがあります。このため、膨大な情報の中から自分に合った求人情報を見つけることが難しいです。

このように、はじめての障害者雇用で転職をしようとするときは、転職エージェントを利用することが有益です。

まず、転職エージェントは求人情報を提供する際に、求人会社とのマッチングを重視しています。このため、ADHDの求職者のスキルや経験、キャリアの希望などを考慮して、求人企業を紹介してくれるため、求職者にとって最適な職場を見つけやすくなります。

また、転職エージェントは障害に詳しい担当者が、求職者が抱える障害に関する悩みを支援してくれるため、求職者自身が力を入れずに転職活動を進めることができます。特に、はじめての障害者雇用による転職活動のとき、転職エージェントが味方になってくれることで自信を持って転職活動を進めることができるでしょう。

さらに、転職エージェントは、求人情報を探し出すことから面接対策までサポートしてくれることがあります。求職者自身が面接に慣れていない場合や、自己PRやコミュニケーション能力に不安がある場合、転職エージェントは面接対策をアドバイスしてくれます。そのため、求職者は面接で自分をアピールすることができ、求人企業からの内定を獲得しやすくなります。

ただし、転職エージェントを利用する場合は、担当者との相性が良し悪しがあります。このため1社ではなく複数のエージェントに登録して転職活動をすることが重要です。

まとめ

ADHDのグレーゾーンの人が転職で失敗する主な原因は、自らの障害を受け入れられておらず、配慮や理解がないまま働き続けることによるプレッシャーやストレスです。これによって職場でトラブルの原因となったり、仕事のパフォーマンスの低下につながったりすることがあります。

一方で、グレーゾーンの人が障害者手帳を取得して転職すると、理解のある職場でADHDの特性である興味あることへの集中や創造性を発揮できやすいです。

なお、グレーゾーンの発達障害者が障害者雇用を目指すとき、障害者手帳取得が必要です。そのためには、まず担当医とよく相談することが必要です。このとき働きづらさを整理して、担当医に伝えましょう。

はじめての障害者雇用求人選びは、転職エージェントを利用する必要があります。専門性の高い担当者が求人情報の提供だけでなく面接の対策までサポートしてくれるからです。このとき担当者との相性の良し悪しがあるため、複数のエージェントに登録するようにしましょう。

このようにグレーゾーンの人が働きづらさを感じて転職するときは、障害者雇用を選択肢にいれましょう。そうして担当医と相談しながら手帳を取得し、転職エージェントを活用することで、はじめての障害者雇用による転職を成功させましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。