銀行は国や地域金融の要であるため法制度で保護されている業種であり、信用力や堅実性があります。そのため都市銀行は財閥の筆頭企業であり、地方銀行はどこでも地場優良企業の一つです。

銀行員には堅実で冷静な判断力が求められることから一般的に信頼性は高く、毎年有名大学から多くの学生が就職しています。

このため銀行に就職や転職したいと願う障害者は多いです。一方で「自分は優秀じゃないから無理」「障害者なので健常者と同じように働けない」と考えてあきらめる障害者もいます。

ただ障害者採用枠であれば、一般枠よりも就職や転職しやすい職種があります。そこで障害者の銀行の求人について、どのような職種が適しているかを解説していきます。

障害者雇用の銀行求人は大半が事務職

銀行は支店の預金や融資、営業が主な業務です。ほかにも本部の企画、審査、システム部門など様々な部署があります。

以下の写真は、私が以前一般枠で勤めていた地方銀行の支店です。

銀行は一般枠の応募資格は大卒総合職が普通です。入行後は支店の預金融資窓口や後方事務を経験し、数年後に営業になります。また40歳代で支店長などの管理職になれることを目指して、銀行業務検定やファイナンシャルプランナーなど数多くの社内外の資格を取得しながら実績を積み重ねます。

一方、障害者正社員採用の求人は、預金や融資の事務補助が大半です。そのため障害者雇用も応募に必要な資格はありません。以下では、銀行の障害者求人について詳しく確認していきます。

銀行の後方事務職

障害者向けの銀行員の求人の大半は、銀行店舗の窓口業務のサポートする後方事務です。窓口事務は、障害者にとって心身に負担が大きいからです。

預金窓口業務は多種多様ですが、主な業務は次のとおりです。

  • 来店客からの預金の預入や払出し、送金を受け付け
  • 紛失などの各種届け出の受け付け
  • クレジットカードや投資信託などの契約や解約などの受け付け

簡単な事務処理は窓口係が済ませますが、時間のかかる処理は後方事務に回します。以下の写真のように、窓口係の後ろの場所にいるのが後方事務です。

融資窓口も来店客から個人ローンや事業資金の融資の相談を受け付けたり契約書の作成などを行ったりします。来店客は預金窓口ほどではないので、預金窓口ほどの忙しさはありません。

一方、障害者雇用の中心である後方事務は、窓口が来店客から受け付けた各種申込や届出のうち、時間がかかる事務処理を引き受け、窓口業務を支えます。またその合間には伝票精査や書類の間違いがないかを確認します。

例えば以下は、あおぞら銀行の障害者向け事務職の求人です。

この求人は、預金や融資係などの各部門のフロントオフィスにあたる窓口業務について、後方からサポートする事務です。なお後方事務は、この求人に記載されているようにミドルオフィスやバックオフィスと呼ばれています。

ただ銀行事務は一般の事務職と比べて全体的に相当忙しいので、知的障害者やうつ病の人は混乱するおそれがあります。このため人並みに情緒が安定している障害者や、事務処理能力を高めたい意欲ある障害者でないと厳しいです。

銀行の一般事務の正社員求人

このように銀行の後方事務であっても支店にかかってくる電話への応対もするし、窓口業務ために早く正確な事務処理は必要です。また窓口ほどではありませんが、預金やカードローンなどの獲得ノルマもあります。

このため店舗の後方事務でも、ちょっと忙しくなっただけでパニックになるような障害者は務まりません。発達障害者や精神障害者に多い大雑把な性格や、複数の事務処理を同時にこなすことができない障害者はやめた方がいいです。障害者の中でも、精神面は人並みに安定していることが必要です。

ただ銀行の障害者向け事務職求人には、忙しい店舗の事務と比べて心身への負担の少ない部署はあります。それは本部や事務センターなどで事務処理に特化した部署の求人です。

例えば以下は、東日本最大手の信用金庫の障害者向け事務職求人です。

この求人は、端末操作や伝票精査などの支店事務の補助業務です。支店の端末ではできない仕事や、顧客企業の給与振り込みなど支店では処理が難しい多数のデータ入力が必要な事務を支援しています。

また来客対応は必ずしも必要なく、障害への配慮がなされていることがわかります。このため本店や支店などの店舗事務で、正確で速い事務処理やノルマのプレッシャーがある店舗の事務職よりも無理なく働くことができます。

銀行の正社員求人のうち、このような事務職に限定した求人は一般枠にはありません。障害者雇用だけのメリットです。このため社会人経験が浅く、最初から店舗などの最前線で事務仕事をすることに不安な障害者には適しています。

銀行の障害者雇用の専門職求人

これまで「銀行の正社員求人は大半が後方事務である」ことをみてきました。ただ一般枠の銀行の正社員求人のように、総合職で銀行員として勤務する障害者雇用の求人はありません。

一方でスキル不要の障害者向けの事務職よりも、自分の能力を生かして一般の銀行員と同じように総合職で昇進や昇給して働きたいと願う障害者もいます。

このとき銀行の障害者雇用にも、総合職で健常者と区別なく働ける銀行求人は存在します。以下は、三菱UFJ銀行の障害者向け求人です。

この求人は、各部署のプロの人材を育成するための障害者向け求人です。専門性の高い融資審査部門や債権回収部門、国際部門などに配属され、そこでキャリアアップしていくことになります。

応募用件として資格や経験、学歴は不問ですが、専門職なので高い学力と意欲が必要です。

このため自己研鑽を面倒くさがらず、専門性を磨いて行内で必要とされる人材を目指す意欲ある障害者に適した求人です。

銀行内のシステムエンジニア

一方で銀行には、これまで解説してきた職種とは全く違う分野の障害者向けの求人があります。それは銀行内のシステムを保守管理するエンジニアです。

銀行は早くからATMのネットワークや情報システムの整備が進んでいるため、システムエンジニアの求人は多いです。システムは外注による構築のほかにも、自行のシステムエンジニアによる開発や保守、点検が行われています。

銀行はシステムが命です。優良銀行ほど他行に先駆けて最先端のシステムを導入します。そのため銀行は多くの優秀なシステムエンジニアを抱えており、新たなエンジニアを自行で育てています。

エンジニアやプログラマーの仕事は一般の銀行業務とは異なり、心身の障害の有無は業務に関係ありません。このため障害者採用のシステムエンジニアの求人は多いです。

例えば以下は、大手地方銀行の北國銀行の正社員求人です。

この求人は、社内のシステム開発のエンジニアの求人です。以下は、この求人の応募資格欄です。

この求人は、経験や資格がなくても応募可能であることがわかります。

このため未経験でもプログラミングの知識があり「金融機関のシステムに関わりたい」と考えている障害者に適しています。

銀行求人の注意点

銀行の障害者向け求人は未経験や無資格でも応募できますが、事務職がほとんどです。また本店や支店の事務の場合、一般企業では考えられないほど小さいミスに厳しいです。

例えば支店の端末入力ミスは数値化されているので、ミス発生率は本部に逐一把握されます。事務ミスが多い店舗はやがて大きな事務トラブルを起こす傾向にあるため、ミスが多い支店は支店長が管理責任を問われます。時には本部へ招致されることがあります。

このため本店や支店の後方事務の場合、前述の通りADHDの発達障害者や精神障害者にありがちな大雑把な性格には適していません。またうつ病など情緒が安定していない障害者もやめた方がいいです。

一方で冷静で慎重な性格の身体障害者や自閉スペクトラム症の発達障害者のように、作業を丁寧にこなしたり細かいミスを素早く見抜いたりできる特性を持つ人は重宝されます。

このため社会人経験が少なく、高いスキルが求められる銀行事務に不安のある障害者は、本部の事務統括や事務センターなどの店舗事務の支援部署の求人を選んだほうがいいです。

事務職求人のため昇任昇給が難しい

銀行の障害者採用の正社員求人は負担の少ない後方事務職が中心のため、どのくらい給料がもらえるのか気になります。

障害を理由に不当に給料を安く抑えられることはありませんが、各部署の後方事務のままでは昇任や昇給できません。銀行員は一般の会社と比べて給料が高いほうですが、負担が少ない事務職は役職も収入も相応に低いです。

このため入行当初は一般枠の同僚と給与は同じですが、昇進のスピードが遅く昇給幅も小さいため、年がたつにつれて大きく差がでることを理解しておく必要があります。

まとめ

障害者でも障害者雇用の求人で銀行に転職することは可能です。ただし専門職や総合職の求人は少なく、ほとんどが事務職になります。

銀行事務の求人の中でも後方事務の求人は、負担が少ないため障害者にとって適しています。ただしその分給与が少なく昇進が遅くなります。

せっかく長く安定して銀行で働くのであれば、たとえ障害者枠の採用であっても資格やスキル習得を惜しまないことが大切です。そうしなければいつまでも周囲に認められず、満足のいく役職や給与を得ることができません。

これらを踏まえて障害者枠の銀行求人を探せば、どのような銀行求人を選んで就職転職をすればいいのかみえてくるようになります。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。