デザインの制作から版下の制作まで行うDTP(Desktop Publishing:デスクトップ パブリッシング)は、デザイナーの指示を受けてパソコンを使って仕事をするデスクワークです。このため、障害者でもDTPオペレーターとして健常者と同じように仕事ができます。

また、どのような会社でも広告や販売物に印刷物は欠かせないためDTPオペレーターの需要があり、DTPオペレーターの実務経験があれば就職や転職に有利です。

ただ、正社員であっても給与が低いです。そのためDTPオペレーターで仕事を続けるのを途中で諦め、営業職や事務職などまったく別の職種に転職する人は多いです。

そこで、DTPオペレーターの障害者が就職や転職をしようとするとき、DTPオペレーターままでいるよりも将来はデザイナーを目指すなどのキャリアプランを考えておくことが大切です。以下では、DTPオペレーターの障害者が正社員で就職や転職するときに理解しておくべきことやコツを紹介します。

DTPオペレーターの障害者正社員求人の特徴

DTPオペレーターの障害者雇用求人には、以下のような特徴があります。

  • 正社員求人が少ない
  • デザイナーからの指示どおりにデザインする単純作業
  • ミスが許されず集中力と根気を要する

DTPオペレーターは一般枠に限らず、障害者雇用枠でも正社員求人が少ないです。DTPのソフトは年々扱いやすくなっていて、簡単な案件であればアルバイトや派遣社員で済ませてしまうからです。

また、DTPオペレーターはデザインをデータ化していく作業です。決められた作業を決められた指示通り黙々とこなすため、独創性や感性が不要です。このため、飽きっぽい障害者には適していません。

一方で印刷後にミスが発覚したら、大変なコストです。このため周りに気を取られず集中し、ミスなく効率よく仕事できることが重要です。このような特徴から、ひとつのことに集中力を発揮して没頭できる障害者に適しています。

以下では、DTPオペレーターの障害者求人にはどのような特徴があるのかを確認します。

illustratorなどのデザインソフトの経験は必須

DTPオペレーターの正社員求人は、障害者雇用でもデザインソフトの実務経験が必須です。DTPオペレーターの正社員は仕事量が多く、効率的に作業ができる即戦力が必要だからです。

このため、未経験の障害者でも応募可能なDTPオペレーターの正社員求人はないことを知っておく必要があります。

例えば以下は、不動産コンサルタント会社の障害者採用のDTPオペレーター正社員求人です。

この求人では、illustratorやPhotoshopの実務経験が応募の条件になっています。DTPオペレーターの仕事は、おおむね2~3年あればどのような案件でも素早く正確にできるようになると言われているからです。

このため、障害者がDTPオペレーターで就職や転職するときは、デザインソフトの実務経験が重視されることを理解しておきましょう。

事務職でもDTPに携わる正社員の求人がある

一方で、DTPの障害者求人では、DTPの仕事だけの正社員求人は少ないです。

デザインソフトは年々高性能化によって効率化しており、作業単価は年々下がっています。単価の低い広告案件を多く請け負いながら回している会社は多く「サービス残業が多い」「体力的にも精神的にもしんどい」と嘆くDTPオペレーターは多いです。

また、簡単な制作なら短期間で習得できるので、正社員でも給与は低いです。

そのため、広告物や販促物の制作をDTPのスキルを持つ事務職員が担っていることがあります。このとき、事務職員が書類作成や備品管理などの事務仕事をしながら、広告物などのデザインから印刷まで行います。

例えば以下は、IT企業の事務職の障害者採用正社員求人です。

この求人は総務課員の求人ですが、DTPのスキルを求める部署があります。株式事務の部署は、株主総会などで会社の業況を広報します。また会社の社会貢献活動を担う部署は、その会社の社会貢献活動を積極的に広報します。このとき印刷物による広報には、DTPのスキルを持つ職員が必要です。

このようにDTPオペレーターの正社員の求人は少なくても、DTPのスキルについては需要が高いです。このためDTPを担う障害者雇用の求人は、事務職のようにデザインの職種でなくても存在します。

DTPオペレーターからデザイナーを目指す求人

前述のとおり、DTPオペレーターは簡単なものであれば習得に時間がかかりません。デザインソフトの使用に慣れて早く正確にできるようになればそれがゴールなので、それ以上のスキルは求められません。

一方で、デザイナーの指示に従って作業するだけの仕事を続けたとしても、給与や待遇は向上しません。DTPオペレーターはクリエイティブ職にあたるデザイナーと違って、デザインをデータ化する作業員に過ぎないからです。

このため、若いころのまま同じような立場で同じような仕事を続けていては、そのうち会社で居場所がなくなります。

このとき、社内で印刷の工程をディレクションするまとめ役のポストに就くことができればいいのですが、すべてのDTPオペレーターがそうなるとは限りません。

そのため、障害者のDTPオペレーターが必要なキャリアデザインは、就職や転職を通じてグラフィックデザイナーやWebデザイナーを目指すことです。

そこでDTPオペレーターとして、これまでのスキルや経験を活かしてどのような求人を選ぶべきか解説します。

グラフィックデザインを担うDTPオペレーター求人

DTPオペレーターは実務経験が2~3年であれば、効率よく正確に仕事がこなせるようになるのが普通です。そのためDTPオペレーターとして実務経験が2~3年あれば、デザイナーを目指すための就職や転職を始めた方がいいです。

このとき、DTPオペレーターの仕事をしながら、デザインにも携わる求人があります。なお、DTPオペレーターがデザインを兼務する場合、DTPデザイナーと呼ぶことがあります。

例えば以下は、社会福祉法人の障害者雇用のDPTオペレーター正社員求人です。

印刷物のレイアウト以外に、DTPオペレーター兼グラフィックデザイナーとして印刷物のデザインも担う求人です。ただ、3年以上のDTPオペレーターの経験を求めているため、即戦力の求人です。

DTPオペレーターを経験せずにデザイナーになる人もいますが、このような人のデザインデータはひどいものです。そのためDTPを経験したデザイナーは、そうでないデザイナーに比べて有利です。

このようにDPTオペレーターがデザイナーを目指すとき、デザイナーも兼務するDTPオペレーターやDTPデザイナーの障害者求人を選ぶといいです。

バナー制作を含むDTPオペレーター求人

デザインソフトのillustratorは、DTPではレイアウトするときに使います。一方でWeb制作では広告バナーを作成するときに使います。illustratorはDTPとWeb制作双方で使う共通のツールなので、DPTオペレーターの障害者求人には、印刷物の制作以外にWeb制作で広告バナーのデザインを担う求人が多いです。

例えば以下の求人は、障害者雇用のDTPオペレーター正社員求人です。

このDTPオペレーターの求人は、カタログやチラシなどの印刷物以外にWebサイトのバナーの制作も担います。

バナー制作では、UIやUXなどのユーザーの使い勝手に関するデザインや仕組みを理解できます。このためDTPオペレーターとして働きつつ、Webデザインの基本を習得できます。

このように、DTPオペレーターがWebデザイナーとして将来を見据えた場合、バナー制作があるDTPオペレーターの求人も視野に入れましょう。

サイトデザインを手掛けるDTPオペレーター求人

DTPオペレーターの求人に、Webサイトのデザイン制作に携わる求人もあります。Webデザイナーは、DTPオペレーターとillustratorなどのデザインツールを使うので、DTPオペレーターの求人ではWebデザインとグラフィックデザインの両方を内容とする求人は多いです。

例えば以下は、Web制作会社の障害者向けDTPデザイナー正社員求人です。

このDTPオペレーターの求人では、Webサイトのデザイン制作などデザイン関連全般の業務を担います。

デザイン制作の経験があるDTPオペレーターの中には、Webデザインについて「基本は紙と一緒だろう」「いつでもできるだろう」と簡単に考えている人は多いです。ただ、Webデザインを作成してブラウザで表示する大きさの感覚と、紙にデザインしたときの大きさの感覚はだいぶ違います。

このように、DTPオペレーターの障害者がWebデザイナーを目指すとき、DTPだけでなくWeb制作にも関わる求人で、Web制作の実務に慣れることができます。

まとめ

DTPオペレーターの仕事は、簡単な印刷物であれば短期間で習得可能なため、人件費がかかる正社員求人は少ないです。そのため複雑な作業でも即戦力の求人が多く、障害者雇用でもDTPの実務経験やillustratorなどのデザインソフトの使用経験は必須です。

また、DTPオペレーターはデザイン関連でも専門職やクリエイティブ職ではないため、2~3年の実務経験があれば素早く正確に仕事できるようになります。

このため若い頃のままDTPオペレーターとして続けていても、給料や待遇の向上は見込めません。このとき、DTPだけでなく、デザイナーとしてWeb制作やWebデザイン仕事の幅を広げていく必要があります。

障害者が、DPTオペレーターのデザイン関連で長く安定して働きたいと考えるのであれば、将来を見据えたキャリアプランを考えることです。また、スキルや経験をどのように活かして就職や転職をしていけばいいかを考えて求人を選びましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。