精神障害者や知的障害者などの障害者は、複雑な仕事や同僚と細かくやり取りしながら仕事を進めていくことが苦手な人が多いです。このため考えながら進めていく仕事よりも、仕事の進め方の手順が明確な仕事が向いています。

このような障害者に適した仕事の一つが、工場求人です。工場求人の中でも特にラインで製品を製造する作業員は、ひとり黙々と行う仕事だからです。ベルトコンベアーで流れてきた製品を決められたとおりに組立てていくだけなので、資格や専門知識が不要です。このため、誰でも求人に応募できます。

ただ具体的な業務内容などを知らないままだと、就職や転職後に仕事をうまく進めていけなかったり、職場になじめなかったりする可能性があります。また、工場の仕事の仕方や求人内容は企業によって違います。そのためよく検討せずに求人を選ぶと、入社後に思わぬ苦労を味わうことになります。

ここでは工場の障害者雇用の求人について「どのような仕事があるのか」「どのような点に注意すればいいのか」を解説していきます。

工場の障害者求人の働き方

工場の仕事は多種多様なので、役割に応じて様々な求人があります。具体的には以下のとおりです。

  • 工場事務職
  • 研究開発職、エンジニア
  • ライン作業員、検品、品質管理
  • 梱包、倉庫、輸送

このうちライン作業などの製造部門は、ひとりひとりがマニュアルなどで決められた手順どおりに進めていく仕事です。多くのライン作業は「私語禁止」です。このため黙々と仕事をしたい障害者に向いています。

また接客や客からのクレームなど、精神障害者がもっとも苦手とする仕事とは無縁です。そのため営業職や事務職などまったく畑違いの分野から就職や転職する障害者は多いです。

未経験からライン作業に就職した障害者は「同僚とほどよい距離感がとれていい」「自分と似たタイプの同僚が多いので気が楽」といいます。このような障害者は休憩時間は自分の車に戻って、車内で弁当を食べたりのんびり昼寝したりしています。

ただ工場の働き方は企業や仕事の内容によって様々なので、障害者ひとりひとりが自分の希望する働き方や生活に合った求人を選ぶ必要があります。

資格や専門知識不要の簡単作業

工場勤務のうちライン作業や検品は、特別な技能や専門的な知識が必要ないため、工場勤務未経験や社会経験のない障害者でも、正社員の求人で就職転職できます。

例えば以下は、レンガ製造ライン作業の正社員の障害者枠の求人です。

この求人は、レンガ製造工程の簡単な軽作業であり、未経験の障害者でも正社員で応募できます。工場求人の多くはライン作業であり、この求人のようにほとんどが知識や経験、学歴一切不問です。

このためこれから社会経験を積もうとしたり、ライン作業を経験したい障害者に適しています。

週休2日や固定時間制勤務が可能

工場のうち工業製品を生産する工場であれば、鮮度や納期が食品工場ほど厳しくない工場が多いです。そのため日勤固定だったり土日の週休2日だったりします。また休日が充実していることが多く、ゆとりある休日と規則正しい生活リズムで働くことができます。

例えば以下は、大手電子機器メーカーキャノンの障害者採用の正社員求人です。

この求人は、工場で組み立てなどの生産ラインの正社員求人です。この求人の勤務に関する項目は以下のとおりです。

勤務時間が固定の午前8時から午後5時であり、週休は土日二日制です。また年間休日実績は124日となっており、年間休日が多いことがわかります。

このため精神障害者やうつ病の人など、睡眠や規則正しい生活が必要な障害者に向いています。また生活でプライベートを充実させながら、無理なく仕事したいと思う障害者にも適しています。

工場の障害者雇用求人のデメリット

ここまで工場求人には、資格の有無や学歴不問で簡単にできる仕事が多いメリットを紹介しました。

工場求人は「無心で作業できるから、自分に合っている」という障害者がいます。一方誰でもできる簡単な仕事なので「同じ作業の繰り返しでつまらない」「退屈で時間が経つのが遅い」という障害者も多いです。

このとき「将来は生産管理を目指す」「製造現場の経験者として、将来は自動車工場などの高収入を狙える工場に転職する」などの目標を持つといいのですが、そうでない場合はあまり「やりがい」を求めすぎない方がいいです。

また工場勤務で人との関りが少なくて済むといっても、最初からひとりでなんでもできるはずがありません。このため「古株やお局(おつぼね)にいじめられる」「新人教育担当者とうまくいかない」といった悩みを持つ障害者もいます。

このとき配置転換をしてもらうなどがいいのですが、申し出がしづらい職場は会社の管理の問題もあるので転職する方がいいです。

人間関係のトラブルについては、職場の数だけ存在するので就職転職活動でいくら求人を調べても避けられません。

このため工場求人で就職転職するにあたり、可能な限り自分にとってのデメリットをできるだけ排除して優れた求人を選び出す必要があります。

シフト制の変則勤務の求人は生活規則を崩しがち

また製造業で最も注意すべきは勤務時間です。工場のライン作業の求人には、24時間稼働のシフト制の変則勤務もあります。

このとき夜勤や早朝勤務を1週間した後、次の週は日中の勤務になることが多いです。このような不規則な生活は健康によくないので体調管理には気を付けなければなりません。

例えば以下は、包装資材会社のライン作業員の障害者向け正社員求人です。

この求人は製品を包装するなどのライン作業のほか、品質管理です。月給が20万円からとなっており、単純労働の割には高いです。一方勤務時間については以下のとおりです。

土日休みの週休2日で、年間休日125日となっており休日は充実していますが、早朝、昼間、夜間が勤務開始の3交代シフト制となっています。

このような勤務時間は、シフト制の工場求人では一般的ですが、心身の安定のために生活リズムの改善が必要な精神障害者やうつ病の人はやめた方がいいです。睡眠不足や生活習慣の乱れで、症状を悪化させやすいからです。

24時間稼働のシフト制の不規則な勤務の工場の求人は多いです。夜勤手当があるからといっていくら給料が高くても、生活習慣を崩しやすい障害者は避けた方がいいです。

障害者雇用の工場求人の選び方

ここまで工場勤務は簡単で未経験でも問題なくできる単純な作業が多いというメリットがある一方、変則勤務で体調を崩しやすいデメリットがあることを確認してきました。

ただ障害者によってそれぞれ働き方に対する考え方や将来の希望も違うので、何がメリットで何がデメリットなのかも障害者によって様々です。

ここではそれぞれの考え方に応じて、どのような障害者がどのような求人に向いているのかを解説します。

障害者雇用実績の豊富な企業で配慮を受けて働く

障害者にとって「職場で求められるスキルにうまく対応できるか」「職場の人間関係はどうか」は重要です。たとえ工場求人はライン作業が多く、ひとりで黙々と仕事できることが多いといっても上司の管理だったり、同僚と連携したりして仕事することがあります。

このとき言い方のきつい上司や、作業に手間取ってラインを止めてしまったりして同僚から冷たく当たられると精神的につらいです。工場求人は比較的豊富なので、理不尽な状況ならすぐに辞めて転職すればいいだけですが、だれでも求人選びで最初から失敗したくはありません。

そこで工場求人で失敗しない秘訣は、求人で障害者の雇用実績や配慮をよく確認することです。

障害者雇用で入社しても、実際に配慮が受けられずいたたまれない気持ちになって退職するケースは多いです。特に精神障害者や発達障害者は、身体障害者と違って見た目は健常者と変わりません。

そのため障害が原因でやりがちな仕事での失敗や人間関係のトラブルも、健常者から見れば「やる気がない」「気が利かない」と思われて理解が得られないのが普通です。

このため障害者への配慮があり、障害者の雇用実績がある求人を選ぶといいです。つまり、障害者の扱いになれた会社の求人を見つけることが重要です。

例えば以下は、飲料メーカーの障害者向け正社員の工場でのライン作業の求人です。

この求人には身体障害者や精神障害者の雇用実績があり、業務のスピードなど多くの配慮があることがわかります。

このような求人であれば、職場の先輩に自分と同じ障害を持った障害者がいるので、障害者の雇用実績のない求人よりもずっと安心して応募することができます。

特に工場求人のように簡単で単純な作業の同僚や上司となる人たちは、性別、学歴、国籍、年齢、雇用形態など様々です。障害者がこのような多様な同僚や上司と仕事をしていくためには、会社側の配慮や理解が不可欠です。

キャリアアップを目指して働く

工場求人で長く安定して働きたいと考え、ひとり黙々と行う単純なライン作業の繰り返しから、将来は生産管理のリーダーへキャリアアップしたいと願う障害者もいます。

このときチームリーダーなどのキャリアプランを明示した求人を選ぶといいです。工場は従業員が多いことから職種やポストが他の業種に比べて豊富なので、資格やスキルがない未経験からのキャリアアップに適しています。

例えば以下は、電子部品製造会社の未経験の障害者も応募可能な工場の正社員求人です。

障害者でも応募可能であることや休日が年間137日であり充実している以外にも、リーダーとなりうる人材を求めていることがわかります。以下は同じ求人のキャリア欄です。

現場リーダーなどのマネジメント、つまり生産現場の管理業務が目指せることがわかります。

当初黙々と仕事したいと思って製造業で勤務を始める障害者でも、次第にリーダーになる希望や素質を持つようになる人は多いです。

このように現場作業で経験を積むことで、ライン作業員から希望すれば部署のチームリーダーとしてキャリアアップを推奨している求人もたくさんあります。

まとめ

これまで障害者が工場勤務の求人で「どのようなメリットがあるのか」「どのようにして求人を選べばいいのか」を解説しました。

精神障害者やうつ病の人を中心に、障害者にとって最も不安なのは人間関係のトラブルです。また知的障害者や発達障害者には、複数の仕事を同時にこなしていかなければならない事務職などのマルチタスクは適していません。

このとき単純作業なのでひとりで作業ができ、やるべき仕事が決まっている製造業の工場のライン作業は多くの障害者に適しています。

しかし誰でもできるような簡単な作業が多いため、同じ時間仕事をしてもそれに見合う給料は低く、工場によっては不規則な勤務を強いられる場合があることを理解しておくことが必要です。

障害者ひとりひとりが自分の特性を理解し、どのような障害者雇用の工場求人を選ぶべきかよく考えて応募しましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。