ゲーム会社の仕事は肉体労働ではないため、健常者と同様に仕事が可能です。そのため、他の業界と比べて障害者採用枠の求人は少ないです。多くの障害者は一般枠でゲーム会社に働いていることから、障害に対して特段の配慮はありません。また、外見上障害者と分からない場合は、障害を隠して勤務していることもあります。一方、自分の経験やスキルをゲーム会社で活かしたいと考えている障害者の中には「仕事は大好きだけど、人間関係が最悪」「給料少なすぎる」「伸びているスマホゲーム会社に転職したい」などの理由で、転職を考えている人は多いです。

ただ、障害者がゲーム会社に就職や転職するときに注意すべきことや選ぶべき求人があります。ここでは、障害者がゲーム会社に就職や転職を成功させるためのコツを紹介します。

障害者枠は大手求人ばかりでハードルが高い

ゲーム会社はどこでも慢性的に人手不足で忙しいです。一方で障害者雇用枠のある求人は、大手ゲーム会社だけです。大手は誰でも聞いたことがあるような有名な作品を多く手がけているため人気が高く、待遇や職場環境が安定しているので競争率は高いです。

ゲーム業界は、人柄や学歴よりも「何を制作してきたか」が重要な実力主義・成果主義です。このため大手でも応募資格に「大学卒」などの学歴がある求人は皆無であり、誰でも応募可能です。

ただ、大手の中には結果的に「新卒の四分の一が東大卒だった」という会社があるほど人気の業界です。そのため、競争倍率は一般枠ほどではありませんが、障害者枠でも倍率は高いです。

障害者枠が大手ゲーム会社ばかりの理由は、会社の規模が大きい場合、法律で一定割合の障害者を雇用しなければならない義務があるからです。このため大手には、障害者雇用のための子会社である特例子会社や障害者を雇用するのが目的の求人があります。ただし、求人数はそれほど多くありません。

大手では身体障害者から発達障害者まであらゆる配慮がある

このときゲーム会社は中小企業が大半なので、身体障害者に必要な施設面での配慮が行き届いていないことが多いです。また、ゲーム制作はチームのコミュニケーションが大切なので、対人関係に問題があるとみなされやすい精神障害者や発達障害者は、ゲーム会社への転職は難しいです。

一方、ゲーム会社でも障害者採用枠がある大手であれば、様々な障害への配慮があります。また、大手は若い会社ばかりのゲーム業界の中でも会社の歴史が古く、長年障害者の雇用実績が豊富な会社が多いです。

例えば以下は、アーケードゲームやパチンコ台の大手ゲーム会社のプログラマーに関する障害者正社員求人です。

この求人は、長年障害者雇用を続けていて実績があることがわかります。施設面で車いす利用者の対応ができていないことを明示していますが、障害者への配慮について、たとえできないことがあっても具体的に明示してくれている求人であれば安心です。

また、上司や同僚が長年障害者と一緒に働いているので、障害への理解があり働きやすいです。

このため、会社から障害への配慮や理解がないと働くことに不安だと感じている障害者に適しています。

在宅勤務可能の求人がある

ゲーム制作の現場はチームで綿密に話し合いながら制作を進めていく場合が多いので、通勤して出社することが大半です。ただ、ゲーム会社へ就職や転職をしようとしている障害者の中には、障害が理由で出社や通勤ができない人もいます。

このとき数は少ないですが、大手ゲーム会社の中には障害に対する配慮の一環として、正社員でも勤務時間を短縮したり在宅でも勤務可能だったりする求人があります。

例えば以下は、大手ゲーム会社のゲームディレクターの障害者向け正社員求人です。

この求人は、ゲームディレクターとしてテレワークが可能であることがわかります。ゲーム制作の経験が豊富で、ゲーム製作過程を広く理解している障害者ならば、ゲーム制作のプランニングや仕様書の作成を在宅行うことも可能です。

ただ、ゲーム制作はチームワークが重要なので、最初からずっと出社せずに在宅勤務というのは難しいことは理解しておく必要があります。

このような在宅勤務可能の求人は、身体的にも精神的にも通勤や長時間の勤務が困難な障害者に適しています。

大手は特例子会社などで募集職種が幅広い

ゲーム会社は分野ごとのクリエイター達がチームを組み、複数のゲームを同時並行で制作していきます。中小のゲーム会社は、様々な役割を兼務しなければなりませんが、大手ゲーム会社の場合は分業しています。また超大手のゲーム会社は、障害者雇用を目的とした子会社である特例子会社を設立して分業している場合もあります。

例えば以下は、大手ゲーム会社の障害者向け正社員求人です。

ゲーム開発のエンジニアとゲームや広告デザイン分野の求人です。以下は、求人分野の続きです。

企画や仕様書の作成を担うゲームプランナーや、ゲームの動作確認を行うデバッガーの求人も行っています。デバッガーの仕事は外注する会社が多いですが、大手の求人なので職種として募集しています。このように大手では、各分野ごとの人で、専門のクリエーターを広く募集しています。

精神障害者やADHDなどの発達障害者は、特定分野にハマって仕事をするのが得意ですが、人や作業のまとめ役の仕事も兼務することが苦手なことが多いです。そのためこのような分野ごとの求人は、特定分野で自分の才能を発揮したいと考える障害者に適しています。

転職に不利な点がある場合どのような求人を選べばいいか

なおゲーム会社の障害者向け求人は少なく大手に限られているため、就職や転職に不利な点がある場合、高い採用倍率を突破することはできません。

それで自分が経験やスキルのあるプログラマーやデザイナーなどの職種だけにこだわらず、管理の仕事(プランナー)を加えてプランナーなど他の分野も検討し、求人の選択肢を増やす必要があります。

以下で、障害者が不利な点をどのように考えて就職や転職すべきか具体的に確認していきます。

管理に興味あるならゲームプランナーや運営の求人

一般的に求人は、合理的な理由がなければ年齢条件を設けてはいけないので実情は見えにくいです。ただ、ゲーム会社の制作現場のプログラマーやデザイナーなどは、実働しているのが20代の若手が中心です。このためゲーム会社の場合、年齢制限がない求人でも若い人でなければ採用されにくいです。

また経験が豊富でも、特定の分野で同じ仕事を続けていてはスキルや給与が上がりません。待遇や給与に不満で転職を考える障害者は多いですが、年齢に応じた役割を意識して就職や転職をする必要があります。

このとき、これまでプログラマーなど特定の分野で活躍していた障害者であれば、就職や転職にあたり、職種やスキルの幅を広げるためにこれまでの経験を活かしつつ、年齢にとらわれない別の分野の職種で応募することです。代表的な分野は、これまでの経験を活かせる企画や人や制作工程を管理する運営の分野です。

例えば以下は、大手ゲーム会社の障害者向け正社員求人です。

この求人は企画のほかにも、開発や仕様書、進行管理や運営も担うプランナーの仕事です。プランナーは制作の現場で人をまとめるため、エンジニアなどと意思疎通が図れる人でないと務まりません。このため、知識と経験が必須となる職種です。

一方でゲーム業界のうち携帯ゲーム業界は、作品の出来よりも「作品をどのように売るか」というマーケティングを踏まえた企画ができるかどうかが勝負です。このため、知識や実績がなければ務まりません。

このような理由から、プランナーの求人は大半が経験者の中途採用です。そして面接では、これまでかかわった作品や具体的にどの部分で制作に携わったのかが必ず問われます。

また、プランナーは対人関係に強くないと務まらないので、精神障害者など神経症的傾向の強い人には不向きな場合が多いです。

このように、経験と人並みのコミュニケーション力があり、今後も長くゲーム業界に携わりたいと考えている障害者には、企画や運営の仕事が適しています。

スキルに自信がないなら研修の充実した求人

ゲーム会社の正社員の中途採用は、ほとんどが即戦力となる経験者採用です。一方で、ゲーム製作の経験者でも、まだ経験が浅く即戦力になる自信がないため、転職をためらっている障害者は多いです。

ただ、まだ若いからといって専門学校などで学び直すのは得策ではありません。20歳代が実働の中心であるゲーム業界では、学校で学ぶ時間がもったいないからです。実務に勝る勉強はありません。

このとき、大手には人材育成の環境が整っています。求人の数は少ないですがスキルに自信のない障害者は、大手で研修の充実した正社員の求人を選ぶといいです。

例えば以下は、大手IT企業のゲームなどのエンジニア障害者向け正社員求人です。

未経験者でも応募可能な求人であることがわかります。未経験者のための研修ついては、以下の通りです。

3~6か月もの間、長期にわたって指導が行われていることがわかります。最初はHTMLなどの簡単な言語からスタートし、デザインやシステムに携わります。さらに研修後、幅広い分野のキャリアも明示されています。

アプリ開発やWeb系のゲーム会社は求められるスキルが高く、競争も激しいので未経験で正社員の就職はできないのが普通です。一方この会社では、障害者枠であれば未経験者でも応募可能です。

このように未経験者でも応募可能で研修が充実している会社は、制作現場が安定しています。一方、退職者が多くて中途採用ばかりしている会社であれば、人材育成をする余裕がありません。

そこで経験やスキルを誇れない障害者は、研修の充実した大手の求人を選び、熱意をアピールするといいです。

他業界からの転職ならばデザイナー求人が多い

ゲーム会社は前述の通り、ゲーム業界の中での就職や転職が中途採用が大半です。同じクリエイティブ職のプログラマーやエンジニアでも、使用言語や必要なスキルが他の業界と違うため、ゲーム制作の経験者でないと就職や転職ができません。

ただ、デザイナーであればWeb制作や広告制作業界からでもゲーム会社への転職が可能です。デザインに関してはゲーム制作でも求められるスキルが同じだからです。

例えば以下は、大手ゲーム会社のデザイナー障害者採用正社員求人です。

ゲーム会社では業界内の中途採用が大半ですが、この求人はデザイン経験だけで応募できることがわかります。なお、デザインなのでPhotoshopやillustratorのスキルは必要です。

このように広告業界など別の業界で勤務している障害者のうち、ゲーム会社へ就職や転職したいと考えいているのであれば、求められるスキルが同じデザイナーならゲーム会社のデザイナーの正社員求人を選ぶことができます。

まとめ

ゲーム会社の求人は即戦力と中小規模の会社が中心の業界なので、障害者雇用求人は障害者雇用率の達成や維持が必要な大手ゲーム会社に限られます。そのため採用の競争倍率が高く、障害者枠の就職や転職は簡単ではありません。

ただ、大手のため障害者雇用の実績は豊富で配慮が厚く、激務薄給が普通のゲーム会社の中では職場環境は恵まれています。

そのような大手ゲーム会社への転職を成功させるには、ゲームプログラマーなど現在携わっている分野からプランナーなど制作管理に職種の幅を広げることが必要です。またデザイナーであれば、求められるスキルは同じなので現在ゲーム業界に携わっていなくてもゲーム会社への転職が可能です。

このように障害者雇用でも採用のハードルが高いゲーム会社ですが、業界の就職や転職の実情をよく理解し、自分の経験とスキルにあった求人を見極めて選びましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。