障害者が転職を考えたとき、求人が見つかるのかという不安以外にも、馴染みの場所を離れて暮らすときにどのようにして住まいを見つければいいのか悩む人がいます。

特に一人暮らし、社会人経験がない障害者の場合、不動産探しでつまずきがちですが、障害者雇用にも寮付きや住み込み可能の求人があります。

ただ住み込みや寮は職場に近接した地域に住むことになり、同僚も近くに住んでいます。このため、「仕事とプライベートのメリハリが付かなくて嫌だ」と思う人もいますが、相部屋の寮はほとんどありません。

ここでは、実際に掲載されている住み込みOKや寮完備の求人の特徴や注意点を踏まえながら紹介します。

寮付きや住み込みの障害者雇用求人のメリット

寮付きや住み込みのできる障害者雇用の求人でもっとも大きいメリットは不動産探しをしなくて済むことです。せっかく新しい転職先が決まっても新居探しで手間取り、新しい仕事の準備ができずに苦労する人は多いです。

会社によっては新居を探して提案してくれる場合もありますが、最終的に決めるのは自分です。家賃の妥当性や通勤の利便性を考えながら不動産屋めぐりをして、物件の候補をしぼることや内覧して回ることは時間と労力がかかり負担です。

このとき寮付きや住み込みの求人であれば、このような手間を省くことができます。以下で実際の求人をみながらメリットを確認していきます。

慣れない土地で生活を始めやすい

寮付きや住み込みで働こうとする障害者の転職先は、馴染みのない場所が多いです。こういった求人は地方の郊外や観光地が多く、生活用品を取り揃えられるような店が少ない求人がほとんどだからです。

このような場所では買い物や食事など気軽にできる店がありません。新居探しばかりでは、仕事する前に生活基盤を整える段階で疲れてしまいます。

このため寮や住み込みに求人で、最初から指定された場所で暮らし始めた方がいい場合が多いです。

例えば以下はリゾートホテルの障害者雇用・正社員求人です。

ホテルの寮付きの求人であり、引っ越し費用の補助があります。職種は調理、施設保全、事務、清掃など様々なホテル業務全般です。この求人は沖縄の離島のリゾートホテルの障害者求人であり、応募するのは本土から南国で働きたいと希望する障害者が大半です。このため土地に不慣れな障害者は多く、寮や住み込みで働く場合がほとんどです。

例えば以下は和歌山県の海辺のリゾートホテルです。

寮付きや住み込みの障害者雇用求人の多くは、このような周りに海と山しかない環境のホテルが勤務先になります。このような寮付きや住み込みの求人は、転職が決まったらすぐに引っ越しの準備に取り掛かることができます。そして、すぐに生活の基盤の準備ができ、勤務開始までゆとりをもつことができます。

うつ病や精神障害者がリゾート地の寮付きや住み込みの求人で転職して、症状をいやしながら働くこともできます。ただ、山間や海辺の何もない勤務地への求人を選ぶときは、寮や住み込みの求人でゆとりをもって転職できるようにしましょう。

職場が近いので出勤がしやすい

転職が決まった後の新居選びでは、通勤の利便性や手段を踏まえながら迷うことが多いです。また山間や海辺の観光地が勤務先であれば、マイカーの準備が必要になることがあります。

このとき寮や住み込みの求人であれば、住居は会社のすぐそばや敷地内になります。このため転職後の新居について通勤手段を迷いながら選ぶという無駄な労力を省くことができます。

例えば以下は、スキーリゾートホテルの予約代行会社の障害者雇用・正社員求人です。

会社を運営している母体のホテルに住み込む求人です。データ入力の単純作業の仕事ですが、職場内で住み込みの仕事なので出勤時間がありません。また、ホテル客室は身体障害者の利用客にも対応しているため、施設面での配慮は充実しています。このように寮付きや住み込みの求人では、職場敷地内の建物に住むケースも多いです。

このように新居選びでは通勤方法まで悩まなければいけないのが普通ですが、こうした寮付きや住み込みの求人であれば、その必要がなくなります。このため一人暮らしや転居に慣れていない障害者は、寮や住み込みができる求人を優先して求人選びをしましょう。

格安の家賃で住むことができる

一方で都会から離れ、地方や郊外の落ち着いた場所で働いてしっかりお金を貯めたいと考えている人は多いです。このとき、もっともネックになるのが家賃です。

会社から家賃補助が出ることもありますが、住む場所にこだわりがなければ寮付きや住み込みの求人の方が住居費は安く済み、貯蓄を積み上げる目標を早く達成できます。これは寮や住み込みの家賃が周囲の相場に比べて格段に安いことがからです。

例えば以下は、理容院の障害者雇用・正社員求人です。

住み込みの求人ですが家賃が3万円となっています。付近の相場から考えると半額以下です。また、この求人では3食付きで4万5,000円となっているため、1食あたり500円で済みます。まかない付きの求人は経済的であり、食事の買い出しや自炊の手間が省けるためメリットが大きいです。

このように寮や住み込みは家賃の負担が少なく、生活にゆとりが生まれます。引っ越しから仕事の開始まであわただしく、食事など生活基盤を整えることでバタバタしがちです。しかしこの求人のように食事まで付いていれば、焦ることなく落ち着いて仕事に臨めます。

また浮いたお金は貯蓄に回すことも可能なので、しっかりお金を貯めたい障害者は寮付きや住み込みの求人を選びましょう。

寮付き・住み込みの障害者雇用求人の特徴

障害者枠で寮付きや住み込みの求人は、そうでない求人に比べていくつか特徴があります。主な特徴は以下の通りです。

  • 福利厚生が充実している大企業求人が多い
  • 大規模工場の作業員求人が多いため、工業団地がある地方都市の郊外の求人が多い
  • 寮付きや住み込みは山間や海辺のリゾートホテルなどの求人が多い

これらの特徴は、転職する目的によってメリットにもデメリットにもなります。自分がどの求人に適しているのかは、個別の求人をじっくりみていくしかありません。そこで以下で、これらの求人の特徴を実際の求人でみていきます。

寮付きは地方都市郊外にある工場の求人が多い

障害者雇用で寮付きの求人は、大企業が多いです。大企業では福利厚生が充実していますが、寮の運営は福利厚生の一環なので首都圏や地方の大都市でも、前述の理容店のように格安で利用できる場合が多いです。

一方で大企業の営業所や支店は都心にありますが、事業所や工場は工業団地がある地方都市の郊外に立地していることが多いです。このため工場に配属されたとき、都市部から車で通勤することになり不便な場合があります。

例えば以下は、九州の農村地帯にある工業団地の工場の様子です。

日本を代表する一流メーカーや台湾や韓国の優良メーカーが多数進出している工業団地ですが、立地は農村地帯です。ただ、こうした工場の寮は、大半が工場の直近にあります。

例えば以下は、大手工業製品部材メーカーの工場作業員の障害者雇用・正社員求人です。

工場作業員の求人です。富山市郊外の臨海工業地帯に立地しています。この会社の場合、工場の隣に独身寮があります。

こうした寮付きの求人は障害者枠であり、大企業の工場作業員の求人が多いです。工業団地の工場に勤務するとき、朝夕の通勤・退社時間帯は工場付近で出勤や退社・帰宅する車の渋滞がひどいです。一方、工場に近接した寮であれば渋滞に巻き込まれることはなく短時間で歩いて帰宅できるため、快適に過ごせるメリットがあります。

ただ、買い出しの際は街に出なければならず、車の所有が必須となります。このため寮付きの障害者雇用の工場求人には、多くのメリットとデメリットがあることを踏まえて求人選びをしましょう。

住み込みや寮付きは観光・リゾート地のホテル・旅館求人が多い

こうした住み込みや寮付きの求人は、工観光地の旅館やホテルも多いです。観光地やリゾート地が勤務地なので、前述した工場求人と同様か、それ以上に買い物に便利な生活圏から遠く離れた場所で暮らすことになります。

例えば以下は旅館の障害者雇用・正社員求人です。

スキー場に隣接する温泉旅館の求人です。なお、こうしたリゾート地の求人は、この求人のように料理人の募集が多いです。この求人の寮に関する記載は以下の通りです。

寮を建設中であることが記載されています。こうした観光地の旅館やホテルは、賃貸アパートが付近にないため新居を見つけ出すことは難しいです。このため転職で暮らす場所は、寮や住み込みの求人が普通となります。

こうした観光地の周辺は、パチンコやスナックなどの遊興娯楽施設が周囲に少ないため、お金を無駄遣いせずに済むメリットがあります。

また都市部から離れており、無駄な人づきあいに振り回されることもありません。食事は旅館・ホテルのまかないが提供されるため、食に困らない充実した働き方ができます。

このように旅館・ホテルの寮付き・住み込みの求人には大きな特徴がいくつかあります。自然に囲まれた環境で仕事をしたい障害者や、遊びをやめて貯金を貯めたい障害者にはメリットが多いです。このため障害者雇用では、観光地の寮付き・住み込みの求人を選択肢に入れましょう。

寮の施設には障害への配慮がないことがある

こうしたメリットの多い寮付きや住み込みの求人ですが、注意点があります。それは、寮の施設に障害者への配慮がなされていないことです。寮付きの求人は大企業が中心なので、勤務先の施設には配慮が十分あります。

ただ寮付きの求人のある施設には、配慮を記載した求人がありません。このため身体障害者が寮付きの求人を選ぶときは、求人だけでは配慮の有無がわからないことがほとんどです。

しかし求人選びで求人先の候補をあがるたびに、いちいち採用側に寮の施設のことを確認するわけにはいきません。このため最初から寮の居住をあきらめて求人探しをしなければならない場合があります。

ただ住み込みの求人では、住む場所が職場の中にある場合があります。このとき職場の施設が充実している場合は、身体障害者でも問題なく暮らせます。

例えば以下は介護施設の障害者雇用・正社員求人です。

介護補助の求人です。こうした補助的な仕事であれば知的障害者でも担えます。また勤務先や住み込みの場所が介護施設なので、エレベーターや手すり、スロープなどの施設が充実しています。

このように職場自体が高齢者など身体の動作に不自由な人を対象とした施設であれば、どのような障害者でも問題なく生活できます。

こうした求人は数少ないですが、身体障害者にとっては福祉施設関連の寮付きや住み込みの求人が適しているため介護福祉系で住み込み可能の求人を探してみましょう。

旅館・ホテルの求人には不規則な勤務が多い

寮付きや住み込みの求人で注意すべき点は、勤務が不規則なことです。これは旅館やホテルなど24時間営業の求人が多いためです。

宿泊施設の求人に多い調理であれば朝食・夕食の準備・片付けなどがあります。また調理職以外では、施設保安のための当直勤務もあります。こうした宿泊施設では、定時勤務以外の仕事が多いのが普通です。例えば以下は、前述の旅館の障害者雇用・正社員求人です。

勤務時間が定時のほか早朝~昼間、夕方~夜間となっています。宿泊施設の調理職では、こうした早朝や夜間などの勤務が普通です。

なお、以下は旅館の調理場の様子を撮影したものです。

旅館の求人では、このような調理場で勤務することになります。

こうした寮付きや住み込みの求人が多い観光地の旅館やホテルの宿泊施設では、勤務体制によっては生活のリズムが整えにくい場合があります。生活規律の保持が必要な精神障害者は避けたほうがいいです。

このように観光地で寮付きや住み込みの宿泊施設の転職を考えている障害者は、生活が不規則になる場合があることを踏まえて求人選びをしましょう。

まとめ

ひとり暮らしや転居に慣れていない障害者や、観光地などの宿泊施設の求人で転職をしたいと考えている障害者は、寮付きや住み込みの求人でメリットが多いです。 慣れない土地の生活で面倒な不動産選びの必要がないからです。また寮や住み込みであれば住居から職場が近いので出勤がしやすいです。

寮は従業員の福利厚生のひとつとして運営されているため、周辺の相場と比べて格安の家賃で住むことができるメリットがあります。

ただ寮付きや住み込みの求人には、デメリットもあります。例えば寮付きの求人には都市郊外の工場作業員の求人や観光・リゾート地のホテル・旅館求人が多く、買い物などに便利な生活圏から離れた場所で暮らすことになることです。

障害者雇用の寮付きや住み込みの求人には求人ごとに様々特徴があるため、障害者によって向き不向きが大きく違ってきます。このため求人選びでは自分の障害や希望と求人内容や条件をよく見極めて絞り込み、転職を成功させましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。