障害者の中には障害が原因で一般的なデスクワークでさえも心身に負担がかかり、働くことが困難な場合があります。また、スキル不足や資格がなく、社会人としての経験が浅いため転職に不安を持つ障害者は多いです。

このときデータ入力やメール室の求人であれば、身体障害者や知的障害者、精神障害者でも簡単に仕事ができます。メール室の仕事は身体障害者でも車いす以外であれば可能です。

またデータ入力は重度の知的障害者以外であれば、どのような障害者でもできます。このような求人は事務職の補助として大手の会社の求人に存在します。

それでは障害者向けのデータ入力やメール室の仕事では、具体的にどのような求人があるのでしょうか。以下で、詳しい求人の内容を見ていきます。

メール室・データ入力の求人はスキル不要

メール室の仕事は、大手の会社で郵便物の取り扱いに特化した事務補助職のひとつです。このため簡単な作業が中心となります。メール室では、うつや精神疾患で仕事ができなくなった従業員や、心身を病んで一線の職場とは距離を置くために在籍している従業員が多いです。

このような部署では障害者が多く、大手の会社では障害者専用のメール室の求人があります。例えば以下は大手リース会社の障害者雇用・正社員求人です。

社内を回って郵便物を回収して発送したり、郵便物や宅配物を受け取って社内に配ったりする庶務です。また、この求人のようにメール室の仕事では、多少重い荷物を取り扱う場合があります。

ただメール室の仕事はスキルや経験が不要であり一般企業の就職が難しい知的障害者でも仕事できます。

このためメール室の求人は障害者や病気で長いブランクの後、転職で社会復帰を目指して仕事に慣れたい障害者や社会経験の乏しい障害者が実務経験を積みたいときに適した求人です。

データ入力の求人はパソコンの文字入力ができれば応募可能

障害者でもできる簡単な仕事には、こうしたメール室のほかにもデータ入力の求人があります。データ入力の求人では売上や経費、顧客情報、従業員の身上情報など会社が持つデータをパソコンで入力します。

データ入力求人はExcelやWordの文字入力さえできれば、障害者でも簡単にできる仕事です。ただパソコンを扱うことに抵抗がある障害者には適していません。

このように事務職の中でもパソコンを使った簡単な作業に特化した事務補助の求人であれば、大半の障害者が勤務できます。例えば以下は大手パソコン教室の障害者雇用・正社員求人です。

パソコンでデータ入力やメール作成が主な仕事です。データ入力以外は書類のファイル綴じなど雑用の仕事なので、パソコンの扱いに問題がない障害者であれば誰でも応募可能な求人です。

また精神障害や身体障害、知的障害のほか、これらの障害の症状が重いのか軽いのかにかかわらず、ほとんどの障害者でも担うことができます。

採用側がこうした負担の軽い仕事で済む障害者雇用の求人をする目的は、従業員のうち一定数の障害者を確保するためです。一定の規模以上の大手の会社では、一定割合の障害者を雇用する義務のあるからです。

つまりデータ入力などの事務補助は、障害者従業員の能力ではなく数を目的とした求人です。高い生産性や事務処理能力を期待されません。

このため精神疾患などで対人不安が強い障害者や、プレッシャーを感じやすく仕事が進まない障害者にとっては適した求人です。

メール室・データ入力は庶務・事務補助職の名称の求人が多い

こうしたメール室やデータ入力の仕事は、総務や経理などの事務職の一部です。このため求人を探すとき「メール室」や「データ入力」で検索しても障害者雇用の求人数は少ないです。

それは、これらの求人が「事務補助」や「庶務」の名目である場合が多いからです。例えば以下は、イベント人材派遣会社の障害者雇用・正社員求人です。

事務補助の求人ですが、データ入力のほかには、郵便物の授受・発出などメール室と同じ内容です。このように障害者採用ではメール室やデータ入力の仕事が「事務補助」の名目の求人となっていることが多いです。

障害者が社会人経験や事務スキルをこれから積みたいとき、有利に求人選びをするためには多くの選択肢を持っておいた方がいいです。そのため求人を探すときは「データ入力」や「メール室」で探すだけではなく、「事務補助」「庶務」で求人を探して選択幅を広げましょう。

メール室・データ入力は障害への配慮がある求人が多い

このようにメール室やデータ入力などの事務補助職の求人では、障害者でも安心して働けるように負担の少ない内容になっています。このため事務補助職求人はメリットが多いです。

以下で、メール室やデータ入力の事務補助職求人の具体的なメリットをみていきます。

学歴不問・実務経験なしで働くことができる

一般的に大手会社の障害者雇用の事務職は応募資格が大卒です。また事務職経験が必要な求人が多いです。一方、同じ事務職でもデータ入力やメール室のような簡単な仕事に特化した事務補助職であれば、学歴不問や社会人の経験がなくても応募できる求人が多いです。

例えば以下は大手タクシー会社の障害者雇用・正社員求人です。

パソコンで定型フォームに文字や数字をデータ入力するのが主な仕事です。普通自動車の運転免許を持っていれば「なお、良い」というだけで必要な資格は特にありません。また応募資格に学歴条件は記載されていません。

このように障害者雇用の事務補助職求人は、データ入力などの簡単な仕事だけでれば大手であっても学歴や経験不問の求人が多いです。このためスキルや実務経験がない障害者は、メール室やデータ入力が中心の事務補助職を優先して探しましょう。

土日祝日休み・定時勤務など障害者でも働きやすい

このようなデータ入力などの事務補助求人のメリットは、勤務時間への配慮や休日が充実していることです。

障害者の場合、障害や通院で残業ができない場合や生活リズムを崩すことによって体調や症状が悪化するおそれがあります。このとき事務補助の仕事であれば正社員であっても残業がなく、土日祝日休の週休2日が普通です。

定型の仕事なので突発的な仕事はありません。このため規則正しい生活が障害や症状緩和に必要な障害者に適しています。例えば以下は大手損害保険会社の障害者雇用・正社員求人です。

郵便物の仕分がメインのメール室の求人です。この求人の休日や勤務時間は以下の通りです。

土日祝日は休みの週休2日制であり、年末年始休暇もあります。年間休日は121日となっていて充実しています。また午前8時半から午後5時半までの定時勤務となっています。

このため仕事内容だけでなく、生活リズムも維持しながら問題なく働くことができます。仕事と休日のメリハリをつけたい障害者や生活リズムが必要な障害者は、障害や病気の症状の負担にならないようにメール室など働き方が障害の負担とならない事務補助求人を選びましょう。

メール室・データ入力求人は低収入で職務技能を習得できない

ただ障害者雇用のメール室やデータ入力の求人にも注意点があります。それは給与が安くスキルアップができないことです。

これらの仕事は障害者のために設けられた求人が多いです。このため障害への配慮で時短勤務や通院のための急な休みへ対応をしてもらえることがあります。このような働き方は一般枠や健常者よりも生産性は低くなるため、障害者であっても特別扱いはなく、低い生産性に見合った給与にしかなりません。

例えば以下は医薬品開発会社の障害者雇用・正社員求人です。

メール室の仕事のように、郵便物の収受を取り扱うのが主な仕事の事務補助求人です。この求人は大手の会社の求人ですが年収は129~194万円であり、正社員求人であるにも関わらず少ないです。この給料だと大都市での一人暮らしは難しいです。

また、このような仕事を長年続けたとしてもスキルアップにはつながりません。そのため、いくら長年勤務したとしても昇給はわずかなので給料が上がりません。また中には最初から昇給がない求人も存在します。

このようにメール室やデータ入力は配慮に恵まれていますが、一方で給料は安く、簡単な作業のためスキルアップできません。障害者が障害者雇用で一般枠と同じように給料を得たいときや実務経験でスキルアップしたいとき、メール室やデータ入力の求人を選ばない方がいい場合もあります。

まとめ

メール室は会社の郵便収受の仕事なのでだれでもすぐに仕事ができます。またデータ入力はパソコンの入力作業ができれば応募できます。メール室やデータ入力の求人は別々の求人であることは少なく「庶務」や「事務補助」の名称の求人が多いです。このため求人探しでは、これらの用語を使って探す必要があります。

 メール室やデータ入力に求人は大手の会社の求人が多いため、障害への配慮が充実してます。また学歴不問や実務経験なしで応募可能の求人や週休2日、定時勤務の求人が多く障害者でも働きやすい環境です。

ただメール室やデータ入力求人は、だれでもできる仕事なのでその分収入が少なく、単純作業なのでスキルが身につきません。

このため障害者がメール室やデータ入力の求人を選ぶとき、これらの仕事は転職で新たな仕事にチャレンジするための基礎固めのためのものととらえましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。