訪問先の受付でさわやかな対応を受けたとき、こちらの気持もなごみます。こうした受付業務は、短いやり取りの中でも多くの人とのつながりを感じられるため、希望する障害者は多いです。

ただ、「障害者向けに受付求人って、実際にあるのだろうか」と疑問を感じる人も多いです。このとき様々な業界や業種で、障害者雇用の受付求人が存在ます。

受付は会社やお店の顔的な役割です。このため人間性や立ち居振る舞いなどで相応の素質が必要なことがあります。このため、就職や転職では受付求人の特徴を理解しておく必要があります。

そこで以下では、障害者雇用の受付求人の特徴を理解して、どのような求人を選べばよいのかを解説します。

障害書雇用の受付求人の特徴を理解して求人選びをする

受付というと「会社入口の広いホールのカウンターで、来訪者を迎える受付」「ホテルのフロントや遊園地などの施設の入場の受付」「携帯や保険ショップなどの窓口販売受付」などをイメージする人は多いと思います。

ただ受付の求人は、こうした業務だけではありません。障害者雇用の場合、受付求人の特徴は大きく分けて以下の通りです。

  • 事務職求人の業務の一部の場合が多い
  • 勤務時間や休日が、店舗営業日時に合わせたシフト制
  • 人並み以上の対人コミュニケーション力があれば有利

このように受付求人は、障害者雇用では様々な特徴があります。そこで以下では、実際の求人を確認していきます。

受付求人は営業時間に合わせてシフト制勤務や休日となっている

受付は店舗や会社で、最初に来訪者と接する「お店・会社の顔」です。欠くことのできない業務のため、勤務時間は業務時間に合わせて午前から日中の定時から夜間にかけての時間が普通です。

また休日は、来店客が多い週末以外に取得するシフト制となっていることが多いです。

例えば以下は、中古車販売店の障害者雇用・正社員求人です。

車の販売店のショールームで車のメンテナンスや、相談を受ける求人です。来店客の用件を聞いて整備担当者につないだり、車の購入の相談であれば営業担当者につないだりします。この求人の勤務時間や休日は、以下の通りです。

勤務時間は、店舗営業時間前後の時間帯です。午前8時半から午後7時15分までのうち8時間のシフト制です。

また休日は、週休2日制で月に8日間となっています。なお、障害者雇用のため勤務時間や休日については希望を聞いてもらえるなどの配慮があります。

例えば以下の写真は、週末のバイクショップの窓口の様子です。

多くの窓口担当スタッフが受付をしながら事務作業をこなし、必要なときはショールームに出て商品案内をおこなっていました。

このように受付はお店の求人が多いため、勤務日時は以下の特徴があげられます。

  • 営業時間に合わせた交代勤務制
  • 来店客の多い土曜日・日曜日は勤務日
  • 休日は、平日に交代で取得する

障害者は病院に平日の日中に通院することが多いため、週休日に通院しやすいです。こうした求人であれば障害者にとって、「仕事と通院のバランスがとりやすい」というメリットがあります。

接客・応接業務のため対人コミュニケーション力が高い方が有利

また受付業務は、前述の通りお店や会社の最初の窓口です。受付の印象が、会社やお店の売り上げを左右することもあります。

このとき、来訪者に悪い印象を与えることは致命的です。特にお店の場合、どんなにサービスが優れていても、来店客は一度でも受付に対して悪い印象をもったとき、今後利用しようと思わないのが普通だからです。

ライバル店に客を取られないようにするためには障害者であっても、少なくとも以下のような条件が必要です。

  • 社会人として基本的なあいさつや言葉遣いができる
  • 親しみのもてる笑顔や思いやりが感じられる言葉かけができる

こうした振る舞いが、自然にできる人が適しています。このように受付業務は人間性や素質を含め、相手に好印象を与える人並み以上の接客力や対人力があれば有利です。

・資格や学歴・専門知識は不問の求人が多い

ただ、資格や高い専門知識が求められることはありません。受付では来訪者の要件を聞き、それに応じて専門の担当を案内したり、サービスを案内したりすることが仕事だからです。

例えば以下は、フィットネスクラブの障害者雇用・正社員求人です。

フィットネスジムの利用者の受付です。受付に必要な事務や売上金の管理も行います。また、応募資格は高卒以上です。資格や経験、スキルは不問です。

このように受付求人に応募するためには、次のような特徴がわかります。

  • 相手に好印象を与える人並み以上のコミュニケーション力があれば有利
  • 専門職ではないため、資格や高い知識などは不要

こうした特徴から身体障害者だけでなくADHDの発達障害者のように、多動性があっても人と積極的に関わることができる障害者であれば適しています。

また身体障害者をはじめとする障害者の中には、人並み以上に対人力やコミュニケーション力を持っている場合が多いです。このため、対人力に強みを持つ障害者は受付求人を選び、面接で自分の強みをアピールして就職・転職を成功させましょう。

事務職の業務のひとつとしての受付求人

ただ障害者雇用の受付求人は、「受付専門」の求人が少ないです。事務職の業務のひとつであり、総務や会計などの事務全般の業務に含まれているケースがほとんどです。それは、受付と同時に会計やパソコンを使った入力作業など、受付に引き続いて事務処理がことが多いからです。

例えば以下は、薬局チェーンの障害者雇用・正社員求人です。

調剤薬局の受付求人ですが、「電話・来訪者対応」、「(診療報酬明細書である)レセプトの入力や請求」などの一般事務の業務が多いです。

多くの人にとって一般的な「受付」のイメージは、大きな会社の入口のフロア正面で、職員がカウンター越しにさわやかに応対して案内する様子ではないでしょうか。

ただ実際はこの求人のように、事務職員が通常の事務作業をこなしながら、来訪者の応接をしていることが多いです。

このため受付を専門業務とする求人は、個人客に対応するお店の求人が多いです。一方で、一般の会社では上場企業クラスの大きな会社や施設でなければ受付専門の求人は存在しません。

こうした理由から、障害者雇用の受付求人には、以下の特徴があることを理解しておきましょう。

  • 受付が専門の求人は少なく、事務職の業務一つであること
  • 受付求人であっても、受付をしながら電話応対、書類作成・パソコン入力などの事務仕事があること

このように受付求人では、来訪者がいない時は事務仕事を行います。

複数の作業を同時にこなすマルチタスクは発達障害者、知的障害者に苦手な人が多いです。このため、マルチタスクが負担に感じる障害者は、求人内容を注意深く確認しながら就職・転職活動をしましょう。

多様な業種の中から自分に適した受付求人を選ぶ

「受付」はあらゆる事業所に存在する業務ですが、業界や会社によって業務内容や重要度が違います。

このとき、受付の求人は大きく分けて以下のように区別されます。

  • 「受付専門」の求人と「事務業務との兼務」の求人
  • 「受付」「事務」だけでなく「接客販売」まで行う求人

受付求人にはこれらのふたつの区分があることを踏まえて、以下で実際の求人をみながら解説します。

事務職を兼務するショールームの受付求人

障害者雇用で受付の求人を検索した場合、ショールームの受付がたくさんあります。

ショールームは来店客の受付や展示商品の説明や案内をする業務です。来店客にとってお店の第一印象となる重要な業務です。

例えば以下は、中古車販売店の障害者雇用・正社員求人です。

ショールームで来店客の受付窓口業務・電話対応を行う求人です。来店客がいないときは、文書作成や物品管理などの事務業務も行います。

ショールームの受付に資格や専門知識は不要ですが、来店客からの質問に答える商品説明が必要です。このため自社製品の知識は日ごろから学んでおく必要があります。

またショールームの受付は来店客の質問に答えたり、受付求人よりも長く来店客と接することがあります。

このためショールーム受付求人の中には、受付だけでなく自社製品のセールスをする求人も存在します。この場合、販売目標が設定されることが普通です。

こうしたことから、ショールームの受付求人には、以下のような特徴があります。

  • 受付・接客に加えて書類作成などの事務を兼務することが多い
  • 来店客に商品説明だけでなく、接客販売をする場合がある

このようにショールームの受付求人では事務スキルと、人並み以上の対人力、コミュニケーション力が必要です。

デスクワークばかりの仕事が苦手な障害者は、多くの人と関わりを持つことができるショールームの求人を選びましょう。

高い接客販売力が必要なショップの受付求人

店舗型の受付求人では、個人来店客の多くの要望に対応します。このため、販売目標が設定される求人もあります。

ただ、こうしたノルマがある業務に抵抗を感じる障害者は多いです。一方で、販売目標があれば頑張りが結果として数字や給与に反映されるため、やりがいを感じることができます。

例えば以下は、携帯ショップの障害者雇用・正社員求人です。

来店客の利用状況に応じて携帯電話契約内容を提案、契約受付・書類作成、端末や関連グッズの販売など多様な業務を担います。

来店客の要望は様々なので、型にはまった業務ではありません。コミュニケーションを取りながら、一人ひとりの要望を正確に把握して、早く丁寧に処理していくきます。

こうした求人のように、受付窓口は営業・販売の最前線です。このためショップの受付求人の中には販売目標が設定されていることがあります。スタッフ一人ひとりが売上げ実績を意識して業務を進めるため、受付事務と同時に接客販売も行います。

販売目標のある求人は対人力だけでなく、事務処理スキルと販売スキルが必要です。このため、こうした職場で結果を出すために努力することが、今後のキャリアアップに役立ちます。

こうしたことから、ショップの受付求人には以下のような特徴があることがわかります。

  • 来店客の多様な用件に合わせて、受付と同時に事務処理を行う
  • 受付・事務だけでなく接客販売も行う
  • 対人力、事務処理や交渉・販売スキルが身に付く

こうしたショップの受付は、接客販売の重要度が高めです。このためデスクワークが苦手でも、対人力や接客力が高い障害者は有利です。

電話の業務が苦にならない障害者はコールセンター求人が適している

受付求人には、電話受付業務であるコールセンターの求人があります。

コールセンターというと、「電話セールスや、顧客からの苦情受付で大変そうだ」というイメージを持つ人は多いです。確かに苦情受付や電話セールスも仕事の一部ですが、コールセンターだからといって苦情受付やセールスばかりを担っているわけではありません。

コールセンターの業務には型があります。

私の知り合いにアルバイトでコールセンターの経験者がいますが、彼女によれば「顧客の問い合わせにはパターンがある」「マニュアル通りに仕事を進められて楽だった」とのことでした。

なお、コールセンターには電話で顧客にセールスする「アウトバウンド」と顧客からの問い合わせに対応する「インバウンド」があります。このうち障害者雇用のコールセンター受付の求人であれば「インバウンド」が多いです。

例えば以下は、人材派遣会社の障害者雇用・正社員給仕です。

コールセンターの受付業務です。顧客からの問い合わせに対応し、通話内容はシステム入力します。

人と会話するとき、電話が苦手だという人は多いですが、一方で私のような障害者を含めて「顔を合わせて会話するよりも、電話の会話であれば苦にならない」という人もいます。
一般的に対面のコミュニケーションは会話だけでなく、表情や仕草まで読み取ることが大切なマルチタスクといわれています。一方で電話であれば、声のトーンや言葉遣いなど、話し方だけに注意を払うだけでいいからです。

障害者の中で電話での会話であれば苦にならない人は、コールセンターの受付求人に挑戦してみましょう。

受付専門の求人で負担なく働く

これまでみてきた受付求人は、店舗受付の求人が大半です。こうした求人は前述の通り、事務を兼務したり接客販売が必要な求人が多いです。

一方で、障害者雇用の中には受付を専門とする求人が存在します。それはショッピングモールなどの施設や大手の会社や官公庁など、来訪者の多い事業所の総合案内の受付求人です。

こうした受付では、ひっきりなしに訪れる来訪者の様々な質問や用件に応えるため、案内受付業務に特化されています。

例えば以下は、官庁などの事務系業務を受託している会社の障害者雇用・正社員求人です。

来庁者の他、代表電話に電話してきた市民に対する総合案内の業務です。受付専任の業務であるため取次だけが仕事であり、事務業務の必要がありません。

こうした受付専門の求人のメリットは以下の通りです。

  • 事務業務や高い知識・専門性、接客力不要
  • 官公庁や大手の会社の本社受付であれば、定時勤務・土日週休2日制が多い
  • 業務に対する責任がなく、苦情対応不要

こうした特徴から、あらゆる種別の障害者でも担当できることが多いです。

このため、これから社会人経験を積みたい障害者や、心身の負担の仕事で長く安定して働きたい障害者は、こうした規模の大きな事業所の受付専門の求人で就職・転職を成功させましょう。

まとめ

障害者雇用の受付求人は店舗の求人が多く、営業時間に合わせて日中や夜間の勤務となっています。このため休日は平日になることが多いです。

また接客応接が主体なので、相手に好印象を与える対人コミュニケーション力があれば有利です。また受付の求人は事務職求人の業務の一つであることが多く、受付と同時に事務を兼務することが多いです。

受付求人の中で多いものが、ショールームや携帯ショップなどのような店舗型求人です。このとき、受付や事務、商品説明だけでなく、接客販売も行います。

また、電話だけで受付業務を行うコールセンターの求人であれば、対面のコミュニケーションが苦手な障害者に適しています。

他にも、受付業務は対人力が必要ですが市役所や規模の大きな会社・施設などのように、受付が専門の求人であれば負担は少なくて済みます。

このように受付求人には様々な特徴があります。このため、自分の障害や特性、将来の希望などを整理して面接に臨み、自分に最も適した求人で就職転職を成功させましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。