障害者の求人は軽作業や事務補助が多いですが、デスクワークが苦手な障害者がいます。また給料が低く、同じ作業の繰り返しが嫌だと考える障害者も多いです。

このとき障害者の求人にも自分の裁量で仕事を進めることができたり、健常者と同様の待遇と仕事内容で働けたりするのが営業職です。

営業職は新規開拓がありノルマに追われて精神的にも肉体的にもつらいイメージが強く、できれば避けたいと考える障害者は多いです。ただし頑張りがすぐに数値で見えるため、やりがいがあります。

そのため障害者が就職や転職を成功させたいのであれば「営業はたいへんそうだからやめておこう」と考えて最初から敬遠せず、営業職も選択肢に増やすといいです。

そこで営業職が「どのような障害者に適しているか」「どのような求人があるのか」について解説します。

障害者雇用の営業職の特徴

営業職は会社の売上げに貢献するのが仕事なので、多くのお客さんを訪問して自社の商品やサービスを売込みます。そのため考えるより行動する性格の障害者に適しています。

実際に営業職の障害者向けの求人には、行動力がある人材を求めることが多いです。例えば以下は障害者でも応募可能な正社員求人です。

料理の宅配サービスの加盟店を増やすための新規開拓営業の求人です。以下は同じ求人の特徴欄です。

成長企業なので、未経験の障害者でも応募可能となっています。

なお通常、営業では会社が目標とする売上に基づいて一人一人にノルマが課せられます。

例えば私が営業職として働いていた銀行では、支店で身体障害者もいっしょに働いていました。その銀行では支店ごとにの預金量、法人融資量、各種個人ローン量、投資信託契約額のほか、クレジットカード件数やがん保険件数、年金・給与口座の獲得件数など十数種類のノルマがあり、通期で支店同士の成績を競い合っていました。そのため営業職員は当期や月、1日の達成目標を上司に提出させられます。

過去の顧客データを見直して見込み先を掘り起こすだけではノルマ達成はとても無理なので、顧客回りの合間に企業や官公庁へ飛び込みでお願いして回り、新たな契約を増やすしかありませんでした。

ノルマ達成度合いは、毎日上司に報告させられます。1日ひとつは何か契約の成果がなければ許されなかったので、朝は見込み先を聞かれ、夕方は結果を厳しく問いただされる毎日でした。

見込み先がないときは上司の叱責がすさまじいので、出まかせで適当な見込み先を答えた日の夕方は、契約のあてがなくて支店に戻れず、上司の叱責が怖くて支店の周りを夜遅くまでウロウロしたこともあります。

一方で営業職の醍醐味は、苦労して契約にこぎつけたときの喜びです。またノルマ達成の進捗が順調ならば、何をしても自由なので楽です。

私の勤務していた会社は倒産寸前だったせいでノルマにシビアだったため、少し厳しい例かもしれませんが、営業職は障害者でも毎日全力を出し切らないと、後ですぐに実績が足りず苦労することになります。そのため部活や仕事など、全力で目標達成に取組んだ経験がないと挫折しやすいです。

あきらめない気持ちや行動力が必要な営業職に、そのような経験がある体育会系が好まれるのは、こういった理由からです。こうした営業職の特徴から、熟考するより行動することを好むADHDなどの発達障害者が最も適しています。

一方、会話スキルも人並みに必要なので、うつ病や精神障害者は適していません。営業職は意識を対面している相手に向けることが大切であるものの、こうした障害者は意識を自分ばかりに集中して疲れてしまうことが多いからです。

また感情をすぐに表に出してしまいがちな自閉スペクトラム症の発達障害者や知的障害者もやめたほうがいいです。営業職は相手の表情から感情がくみ取ることが必要ですが、それができないからです。

これら障害者の特性を踏まえて、以下では具体的な障害者雇用の営業職求人の特徴をみていきます。

学歴・経験不問が多い

営業職は、顧客に親しまれる人柄や決めた目標に全力で取り組む気持ちが必要です。一方でどんなに知識が豊富で高学歴でも、顧客から嫌われたり実績が上げられたりしなければ意味がありません。

そのため営業職の求人は障害者であっても、人柄や目標に熱心に取り組む意欲の方が重要なので、学歴や経験の有無を問わない求人が多いです。例えば以下は、障害者採用の住宅営業職の正社員求人です。

応募用件は学歴や経験は一切不要となっています。営業職は障害者でも成果主義が普通だからです。

なお住宅営業など個人に対する営業は、社用車を使うことがほとんどです。このため資格については、運転免許証が必要な場合が多いです。

このように営業職は経験や学歴が不問のため、高校を中退していたり社会人経験がなかったりする障害者でも意欲があれば問題なく仕事することができます。

高収入求人がある

障害者の場合、簡単な事務職の求人が多く負担の少ない仕事のため給与が少ないです。仕事に対する意欲は高いのに、障害者だからといって低い収入のままで働くのはもったいないです。

一方で営業職は成果主義が普通なので、自分のがんばりが給与に反映されることが多いです。そのため営業職は事務職に比べて、障害者でも高収入が狙える求人が多いのが特徴です。

例えば以下は、障害者でも応募可能なカーディーラーの営業職の正社員求人です。

年収が最初から400万円以上狙えることがわかります。求める人材は「しっかり稼ぎたい人」となっているので、成果次第で給与がたくさんもらえます。また来店客に対する営業であり、新規開拓の必要がなく仕事の負担が少ないです。

このように営業職は事務職と違って、頑張れば障害者でも収入や昇格に結びつきやすいのがメリットです。そのため「障害に負けず営業をしてみたい」「同僚よりも成果を上げて、たくさん給料をもらいたい」と考える意欲の高い障害者に適しています。

障害者採用の営業職の種類

それでは、これまで解説した営業職のメリットを踏まえて、実際にどのような営業職の求人があるのか具体的にみていきます。

営業職の求人は、売り込む相手が法人か個人か、電話セールスか訪問セールスかなど会社によって様々です。その中で、障害者雇用の営業職の主な内容は以下のとおりです。

  • 新規開拓営業
  • ルート営業
  • 来店型営業
  • 内勤営業

同じ営業職でも障害者の障害の内容に応じて、適している求人とそうでない求人は大きく異なります。以下で、障害者に適した営業職にはどのような求人があるのか確認していきます。

意欲と行動力が必要な新規開拓営業

会社は販路拡大するとき、営業職を増員して新規の顧客を開拓していくのが普通です。ただ新規開拓は、営業の中で最も難易度が高い仕事です。

新規開拓は、市場調査を入念に行う方法もあり会社によってやり方は様々ですが、昔ながらの戸別訪問のように片っ端からセールスして回る方法が多いです。

例えば以下は、食品会社の障害者採用の営業職正社員求人です。

料理麺のスーパーやコンビニ、外食産業への売り込む新規開拓営業です。こうした飛び込み営業は事前準備に時間をかけすぎるよりも、1軒でも多く訪問して数多くセールスをしていくことが重要です。

このため1軒断られたからといって挫折するようでは、営業を続けていくのは厳しいです。

一方で苦労の積み重ねは、必ず結果に出るものです。苦労の末に契約に結びついたときの喜びは、他の職種では味わえない達成感があります。営業職は、この達成感を求める地道に仕事です。

このため新規開拓営業は、目標に向かって夢中で取り組める、バイタリティ溢れる障害者が適しています。

既存顧客との繋がりを維持・発展させるルート営業

営業といえば、前述の通り1軒1軒頭を下げてお願いして回る飛び込み営業のイメージが強いですが、既存顧客を回って御用伺いしながら、新たな商品やサービスを売り込んでいくのがルート営業です。

障害者に限らず、誰でも新規開拓を続けるのは精神的な負担が大きいものです。一方ルート営業は、基本的に自分が担当するなじみの顧客への売り込みなので、新規開拓のような緊張感や心理的負担はありません。

例えば以下は、営業職の正社員求人です。

既存の顧客を回ってリサイクルトナーの交換する中で、パソコンや文房具などの自社の他の商品を売り込むルート営業です。この求人の特徴欄は以下の通りです。

障害者を積極採用しており、障害者でも応募可能な求人であることがわかります。ルート営業は自社につなぎ止め、既存顧客が他社へ流出しないようにすることが最も重要です。そのため、この求人に記してある通り、厳しいノルマは課せられないことが多いです。

営業職でも馴染みの客の紹介に頼ってばかりで、新規開拓を嫌がる人は意外と多いです。一方でルート営業に特化した求人であれば、新規開拓の心理的負担が抑えられます。

このためルート営業は、外回りの営業職を初めて経験しようとする障害者に適した求人です。

購買意欲が高い客が対象の来店型営業

営業職には、来店してくれた人にセールスするやり方もあります。それが、来店型営業です。

来店型営業は自分でリサーチして見込み客を掘り起こすことも必要ないことや、掘り起こした見込み客のもとへ出向く必要がないことから多少対人不安がある障害者でも営業しやすいです。

このため来店客に対する営業は、他の新規開拓などの求人に比べて障害者枠の求人は多いです。例えば以下は中古車店の営業職の障害者向け正社員求人です。

知名度の高い販売店では来店客が多いため、来店型営業が中心です。この場合、来店した客をリスト化して売り込みを行うことになります。

もともと商品の検討のために来店してくれる相手なので、新規開拓のように相手から無下にされることはありません。またルート営業のように、既存顧客から嫌われないよう日ごろの面倒な気遣いも不要です。

このため来店型営業は、営業職に心理的抵抗を感じて踏み出せない障害者向きの求人です。

既存客から掘り起こす内勤営業

既存の顧客に対して新たな課題の解決策を提示して、商品やサービスを購入してもらう営業活動があります。それは、前もって売り込むサービスを企画した後に顧客に提案する内勤営業です。

内勤営業は既存顧客が主なターゲットなので、顧客データから顧客の興味や悩みを分析し、電話やメールなどでセールスします。例えば以下は、人材派遣会社の障害者雇用の内勤営業の正社員求人です。

顧客を他社に奪われないために顧客動向を収集したり、顧客にさらに高いサービスを売り込んだりする営業職の求人です。このため従来のような対面営業は行わないので身体的な負担がなく、外回りができない身体障害者に適しています。

また内勤営業であれば営業はメールやチャットでも可能であり、対人不安が強いうつ病や精神障害者にもできる求人です。

障害者雇用の営業職求人の注意点

ここまで障害者雇用の営業職は意外と多く、どのような障害者がどのような形態の営業職に適しているかを確認しました。

営業職は自社の売り上げを伸ばすことが目的なので、数字の実績が勤務評価に関わることが普通です。障害者でも当然ノルマがありますが、与えられるノルマの難易度や達成する過程は業種や会社によってだいぶ違います。

そのため営業職で最も気になるのがノルマですが、障害者向けの求人では具体的にどうなっているのでしょうか。また営業職は、休日をきちんと取れるのか気になります。

そこで以下では、これらの気になる点について解説します。

ノルマのない営業職は存在するのか

障害者向けの営業職の求人には、ノルマがないことを強調するものが多いです。営業職といえばノルマや新規開拓の飛び込み営業のイメージが強く、敬遠されがちだからです。

採用側は広く営業職員を募集しようとする場合、応募者の営業職への不安を払しょくする必要があります。そのためノルマがないことやノルマを目標と言い換えてアピールする場合があります。

ただし営業職が顧客の維持ばかりをしていては、会社の売り上げは伸ばせません。既存の顧客を失うこともあるので、その穴埋めにノルマは必要なはずですが、実際はどうなのでしょうか。

例えば以下は、ルート営業の障害者向け正社員求人です。

この求人では「ノルマがない」ことを断言していますが、注意しなければならないのは「個人ノルマはないが、営業所の目標がある」と記していることです。営業職の求人なのにノルマがないことを記しているので、実際にノルマは相当ゆるいかもしれません。

ただし営業職はチームプレイなので、毎期本社から支社に課せられるノルマを達成するために、各営業職員が手分けして顧客に売り込んでいきます。

このとき支社のノルマ達成のために努力する意識の高い営業職員がいるのに、一方で障害者であることや個人に達成目標がないことを理由に顧客の用件を伺って回るだけの仕事をしていては、そのような営業職員はすぐに職場に居られなくなります。

このため障害者採用だからといって「ノルマがない」という記載を鵜呑みにして、期待しすぎない方がいいです。事務職でも期日と目標のない仕事がないのと同様、障害者でも「ノルマのない営業職は存在しない」こと理解しておきましょう。

土日が休日の求人は少ない

営業職の中でも法人営業であれば顧客企業も土日休みが多いので、それに合わせて休日になることが多いです。ただ営業職の求人は、障害者枠でも個人客相手の求人が多いです。

そのため顧客が仕事以外の時間に訪問しなければならず、休日が不定期な求人が多いです。例えば以下は、営業職の障害者採用の正社員求人です。

住宅販売の営業職や事務職の障害者採用求人です。営業職として個人客へ注文住宅や中古物件の売り込みを行います。以下は、この求人の休日・休暇欄です。

休日は年休110日や週休二日制であり充実していますが、休日について水曜日以外は他の職員と交代で休みをとっていくことになっています。住宅営業は個人が相手なので、土日の休みはありません。

なお個人相手の営業は、個人の都合に合わせた仕事なので時間も不規則になります。相手の帰宅に合わせて契約を交わしたりする場合もあるため、夜遅くまでの勤務になりがちです。

このため営業職の障害者向けの求人は、法人営業以外は土日に休めることが少ないと理解しておく必要があります。

まとめ

営業職は成果主義なので、障害に負けず健常者と同じように仕事したいと考える障害者に適しています。

ただし一人一人が持つ行動力、会話力などのスキルをフル活用しながら進めていく仕事です。健常者と同じ土俵で成果を競うので、意欲があっても行動面や情緒面で障害のために不利な面もあります。障害者は、不利な面をカバーすることを考えなければいけません。

このとき営業職には飛び込み営業から内勤営業まで様々な形態があります。そのため障害者が就職や転職で成功するには、自分の障害と特性をよく見極めることが必要です。

そして自分の特性をどの求人で活かせるのかを知れば、どのような営業職の求人を選ぶべきかがわかるようになります。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。