就職・転職のアドバイスで「資格取得なんて時間の無駄だ」という人は多いです。ただ履歴書の資格欄に「なし」では寂しいですよね。資格はスキルや知識だけでなく、本人の意識の高さなど様々な判断材料となるため就職や転職を有利に進めることができます。
このとき「どのような資格を取ればいいのかわからない」「かんたんに取れて有利な資格はないのか」と考える障害者は多いです。
そこで以下では、就職や転職を目指す障害者に最適な資格を解説します。
もくじ
資格があればライバルに差をつけることができる
資格を取ることでもっとも大きなメリットは、実力の証拠となることです。いくらスキルをアピールしても、採用側はあなたにどこまでの実力を期待していいかわからないからです。
例えば「パソコンができます」とアピールしても、Wordで文字入力ができる程度なのか、それともExcelを使って関数やマクロを使いこなせるのかがわかりません。
このとき資格が役に立ちます。「MOSを持っています」とアピールできれば、採用側は「基本的な書類作成は、任せても問題ないな」と判断出ます。資格があれば採用側の求めるスキルと、本人のスキルにミスマッチはありません。このように資格を取ることは、本人と採用側の思惑を一致させることができます。
書類選考から面接へ進める可能性が高まる
ほかにも資格を取得する事のメリットはあります。それは、普通の人がやっていない資格取得をあなたはやりとげたという意識の高さをアピールできることです。
例えば全く資格を持たない障害者と、資格を持っている障害者を比べた場合、資格は大きな判断材料になります。求人に応募すると、書類選考から始まりますが、「書類選考ではねられ、なかなか面接に進めない」と嘆く障害者は多いです。
このとき、資格によって書類選考を突破できる可能性は確実に高まります。採用側は障害者雇用では、資格そのものよりも資格を取得したという意欲と堅実性を重要視しているからです。
障害者雇用の場合、離職率が高いことが普通です。このため採用側は障害者を採用するとき「この人は、安定して出勤してくれるだろうか」という不安を抱えています。
このとき資格を持っているのであれば、実務能力以上に就職や転職に向けた意識の高さがわかるため、採用側の心を動かします。資格取得には自分で目標を定める意識の高さと達成に向けたあらゆる準備、決めた目標に対する勉強という堅実・誠実は性格が反映されます。
このように資格を取得する事のメリットは、資格に伴って身につけているスキルそのものだけでなく、資格取得を目指してそれを実現したという意識の高さも有利にみられることを理解しておきましょう。
障害者雇用から一般枠と同じ仕事をさせてもらえる場合がある
障害者雇用で入社した場合、一般枠の入社とは別のキャリアを歩むことが多いです。同期入社組であっても一般枠で入社した同僚の方が責任ある仕事が任されたり昇進が早かったりするのが普通です。
このとき、一般枠で入社した健常者であっても取得していない資格を持っていると強い武器になります。例えば事務職の場合、障害者であってもMOSやVBAのようなやさしい資格であっても効率的な事務スキルがあれば、一般枠の社員よりも重宝されます。
障害者であっても健常者と対等に仕事をやっていけるアピールのひとつとして資格が有効になることがあります。
障害者が資格取得して転職を成功させた実例
このように資格取得というのは、多くのハードルをクリアしてはじめて達成できるものです。ライバルが何もしないでいるとき、あなたが資格取得に向けて取り組んだ努力は無駄になることはありません。採用側は取得した資格の裏に隠れたあなたの堅実性や惜しまない努力の姿勢をきちんとわかってくれているからです。
例えば以下は、私の前職のADHDと自閉症スペクトラムの同僚が転職を成功させた話です。
将来食いっぱぐれがないように宅建を取りました。そしてその3年後、30歳になるのを前に転職を決意しました。集団面接のとき、他のライバルたちは大手会社からの転職希望者が多かったです。ただ、宅建を持っていたのは私だけでした。資格のおかげで物おじせず、自己PRと志望動機をうまくアピールして内定を勝ち取ることができました。
私のような発達障害者は皆が当たり前にやってることもできなくて、いっぱい怒られたりして自尊心傷つきまくってる人は多いです。ただ資格で何も満足にできない自分から逆転できます。資格は努力の証明です。特に国家資格であれば、国が強力な肩書を与えてくれます。 |
宅建は障害者にとっては難関資格ですが、このように資格取得をすることで成長につながっていくことは間違いありません。その成長がライバルに差をつけ、採用側の心を動かし、あなたを就職・転職で成功に導くのです。
【難易度2以下】障害者が取得しやすい資格・向いている資格
視覚障害者など一部に取得できない資格はありますが、多くの場合、障害が取得の制限になっている資格は少ないです。つまり身体障害者はもちろん精神障害者、知的障害者であっても大半の資格を取ることができます。
ただ障害者が、資格取得の勉強をしながら就職・転職活動をすることは難しいです。とくに精神障害者やうつ、知的障害者の場合、精神的なストレスや脳機能の問題で、知識を吸収する余力がないケースが多いです。
このため、これから資格を目指そうとするとき、心身に負担の少なかったり難易度が低かったりする資格から検討していく方がいいです。
以下で、障害者に適した資格をみていきます。
【難易度1】普通自動車運転免許
あらゆる資格の中で最もポピュラーな資格が自動車運転免許証です。障害者におすすめの理由は、最も取得しやすい資格の一つだからです。自動車運転免許証を取ることで、求人選択の幅が広がります。
例えば以下は、ビル管理会社の障害者雇用・正社員求人です。
この求人の応募条件は以下の通りです。
事務職求人ですが、普通自動車運転免許証が必須となっています。業務の中で職場の仕事以外に外出して同僚のサポートをしたり、郵便物や銀行、官公署などへ雑務をすることもあるからです。
自動車運転免許証の学科試験合格率60~70%です。1回落ちても2から3回受験すればだれでも合格できます。
免許証の取得は一般的に自動車学校に入校して取得しますが、取得に必要な費用は全国平均で約30万円です。運転のときに面倒なギア操作不要のオートマティック(AT車)限定免許だと1~2万円安くなります。
取得に必要な期間は、学科教習と技能教習合計で約2か月です。なお自動車学校の敷地内や近隣施設に泊まり込んで通学する合宿免許だと約20日間程度で取得できます。
運転免許証は全人口の16歳以上の約75%が所持しています。あまりにもポピュラーすぎて、面接でアピールの材料にはなりません。
ただ障害者雇用の求人数は、一般枠の数百分の一しかありません。このため、少ない求人の中から選択幅を増やす有力な手段となります。
なお言うまでもありませんが、てんかんや意識障害など一部の障害については運転免許を取れない場合があります。
自動車運転免許は、交通の不便な地方であれば仕事だけでなくプライベートで役立つ資格です。取得が簡単といっても、仕事をしながら取得するには時間の確保や、心身の負担があります。社会復帰のリハビリとして取得を目指したり、若いうちに時間を活用したりして取得しておくことをおすすめします。
【難易度2】MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
MOSは、国際資格です。マイクロソフト社の事務ソフトであるWord、Excel、PowerPoint、access、Outlookの利用スキルを証明します。国内で認定者十数万人以上を有する、パソコンスキル関連では最もメジャーな資格です。
障害者におすすめの理由は、一般枠の職員に引けを取らない書類作成業務ができるからです。
例えば障害者雇用の場合、一般職の事務職の補助求人が多いです。つまり書類作成よりも雑用の方が主体となり、仕事が忙しくないときは最悪の場合、放置されることがあります。このときMOSの資格があれば、一般枠の職員であってもMOSのような資格を取得していない職員にかわって初めから書類作成に携わり、業務のメインを担うことができます。
例えば以下は、大手住宅メーカーの障害者雇用・正社員求人です。
地方支店の事務職求人です。事務職求人では、この求人のように必ずといっていいほどPCスキルが求められます。このとき、MOSをアピールすれば、他のライバルに必ず差をつけることができます。
MOSは全国で約10万人くらいの認定者がおり、年々増加しています。MOSの取得には勉強時間が1日2~3時間だと、期間は1カ月程度が目安です。
MOSの検定は月に1~2回くらいの割合で、全国各地の指定されたパソコン教室などで行われています。一般レベル(「アソシエイト」「スペシャリスト」)の合格率は約80%なので難易度は高くありません。
なお、上級レベルの「エキスパート」では合格率は約60%です。難易度は一般レベルに比べて少し上がるくらいです。
MOSは事務職では実務に直結するため、間違いなく役立つ資格です。取得が簡単なので、就職・転職活動の合間の時間が活かせるのであれば、ぜひ取っておきたい資格です。
【難易度2】ファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定3級
ファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定は、資格創設当初は民間資格でしたが、今は人気の国家資格です。3級レベルだと取得しやすいです。
障害者におすすめの理由は、資格取得の難易度が低いにもかかわらず、専門性が高い財務部門で強みを発揮できることです。特に障害者雇用は事務職求人ばかりなので、有利です。このため金融機関だけでなく、大手会社の財務・経理で就職・転職を目指すときに有利になります。
例えば以下は、大手スーパー子会社の保険代理店の障害者雇用・正社員求人です。
この求人で求められるスキルは、金融知識や実務経験です。保険代理店は保険を中心に金融商品全般を取り扱うため、セールスのためには保険だけでなく税金を含めたあらゆる知識が必要だからです。
FP検定の合格率は3級だと約70%であり、難易度は高くありません。2級では約40%、難易度3くらいです。ただ1級では合格率は約10%となり、難易度は4くらいなので難関です。
受検費用は3級は6,000円、2級は8,700円、1級は8,900円であり高くありません。
勉強に費やす時間は、3級であれば約50時間くらいです。私は在職中にFP3級を取得しました。学生時代に日商簿記3級を取得していましたが、簿記3級と比べてFP3級は市販の参考書1冊で済ませられたので簡単でした。
FP検定は簿記のように帳簿に特化した知識ではありません。年金、生命保険、相続、税金、投資の知識が体系的に学びます。このため就職・転職だけでなく日常生活においても役立つ知識が多いです。
このようにFP検定は取得しやすい資格です。経理・財務部門や金融業界などの求人でアピールをねらうのであれば取得しておくと有利です。
【難易度2】事務職求人に有利な資格
障害者雇用の求人に多いのが、事務職求人です。事務職の仕事は総務、会計、情報管理など様々です。ただ、これらの職種に共通して有利になる資格はあります。仕事内容に違いあっても、求められるスキルは共通している場合が多いからです。
情報処理系の資格としては以下の2つです。
- P検3級
- 日商PC検定3級
WordやExcelなどの事務系ソフトのスキルだけでなく、情報通信システムを活かした業務の効率化などの問題を解決する知識を証明します。
またパソコン関連資格とは別に、ビジネス系の代表的な資格は、以下の5つです。
- ビジネス文書検定3級
- ビジネス会計検定3級
- FASS(経理・財務スキル)検定
- 給与計算実務能力検定3級
- ビジネス・キャリア検定3級
総務部門で必要な文書作成や財務、会計のほか、労務・会計、生産工程など管理知識を証明する資格です。こうした資格を取得しておけば、ライバルが多い障害者雇用の事務職でも有利になります。
【難易度2】Web制作・流通小売り・労務管理などの資格
障害者が取りやすい資格には、Web制作関連の求人で有利になる資格があります。それは画像編集やWebサイトのデザインスキルです。
例えば以下の資格です。
- Photoshopクリエイター能力認定試験(スタンダード)
- ウェブデザイン技能検定3級
- Webデザイナー検定3級
障害者雇用ではWeb制作会社からの求人以外に大手の会社の事務職求人で、Web制作や広告が業務のひとつの場合は特に有利です。
例えば以下は、Photoshopの作業画面です。
こうしたソフトウェアを自在に操作できるようなスキルがあれば、Web制作や広告、印刷関連の求人で有利になります。
ほかにも流通・小売業であれば、販売士検定があります。業界唯一の資格として、知名度や実用性が高いです。資格に裏打ちされた実務能力は、採用側に即戦力として重宝されます。
また人事・労務管理部門の実務経験者がスキルをアピールするときは、メンタルヘルス・マネジメント検定があります。ワークライフバランスや職場のパワハラ問題など、多くの会社が重視しています。このとき労働者の精神衛生管理でスキルを証明できます。
こうした資格で、経験だけでなく実際の知識に基づいた実務の能力を証明することで、就職や転職を有利にすることができます。
【難易度3】障害者であっても取得できる求人に有利な資格
就職・転職活動にある程度時間が確保できるのであれば、資格取得で有利に求人選びができます。資格取得まで考えて就職・転職活動をする障害者は少ないからです。
これまで難易度は解説した資格よりも難易度が上がりますが、腰を据えて勉強すれば障害者であっても取得可能な有利な資格は以下の通りです。
【難易度3】ITパスポート
ITパスポートは、初心者や実務経験の浅いIT業界の求人を目指す障害者におすすめの資格です。数多くのIT系資格の中で最も知名度がありながら取得しやすい国家資格だからです。
ITパスポートの受験者は実務未経験や初心者ばかりですが、合格率が約50%と高いです。また試験が月1~3回、頻繁に開催されており、一度試験に失敗しても、すぐに次の試験にチャレンジできます。このため、一度の失敗ですぐにあきらめなければ取得できます。
障害者雇用は一般的に地方の求人は少ないですが、IT系の求人に限っては地方であっても多いです。このときITパスポートは武器になります。
例えば以下は、九州のカーディーラーの障害者雇用・正社員求人です。
熊本県の大手のカーディーラーです。情報通信技術全般を担当する求人です。学歴や実務経験は不問ですが、有利な資格としてITパスポートがあります。
このようにIT系の求人ではなく、社内の情報管理部門の求人であっても地方に求人があります。
ITパスポートは平成21年4月の創設以来、受験者数は累計100万人を超えるメジャーな資格です。
ITパスポートの試験内容は、ITの基礎知識です。
- 会社の業務運営で情報システムに関係がある法律や経営、システム戦略など、幅広く知識を問うストラテジ系
- システム管理全般を問うマネジメント系
- セキュリティ、ネットワーク、データベース、アルゴリズムの他、コンピュータの構成など幅広く知識を問うテクノロジ系
試験時間は120分、100問4者択一です。回答形式はコンピュータで表示された問題に回答していくCBT形式です。
合格に必要な勉強時間は約50時間くらいです。1日2時間の勉強をすれば、1~2カ月程度で合格できる計算です。勉強の仕方は市販の参考書を使って独学で合格することも十分できます。また、取得のためのパソコン講座やパソコン教室、通信講座も豊富です。
障害者のうちIT系の求人で転職したい障害者は、ITパスポートを取得して有利に就職・転職をすすめましょう。
【難易度3】VBAエキスパート(ベーシック)
VBA(ビジュアルベーシック・フォー・アプリケーションズ)とは、Microsoft Officeで使われるマクロ(自動処理)向けのプログラミング言語です。VBAを習得することで、素早くデータ管理ができるようになります。Excelなどに元々組み込まれているプログラムを、さらにカスタマイズできるようになるからです。
VBAが活かされる業務の主な例は、在庫管理や営業成績などのデータ管理です。これまで、VBAを活用するスキルがなかったばかりにデータをコピペしたり移動したり、並び替えやファイルの選別など手作業で延々とやっている会社は多いです。このような非効率を、VBA
のスキルを活用すれば、一気に自動化することができます。
例えば以下は、大手広告代理店の子会社の障害者雇用正社員求人です。
事務職の求人ですが、必須の資格はありません。ただ「尚可」つまりあれば有利な資格として、VBAがあります。
特にこの求人のような大手の会社では、取り扱うデータが膨大です。このため高度な事務処理能力が求められます。このときVBAエキスパートをはじめとする資格は強い武器になります。
なおVBAエキスパートの資格は『Excel』と『Access』といったソフトウェア別にそれぞれ分かれています。また、それぞれのソフトウェアには難易度別に「ベーシック」「スタンダード」があります。難易度はベーシックだと3、スタンダードだと4です。
勉強時間はベーシックで50時間くらい、スタンダードで80時間くらいです。このような時間が確保できる障害者だったり、事務職求人でライバルに差をつけたいと考える障害だったりするときは「VBAエキスパート」の取得を目指しましょう。
【難易度3】日商簿記検定3級
日商簿記3級は、会計の初歩として取得する資格です。財務のかなめである簿記のスキルは、大小さまざまな会社で必要です。また金融機関の求人では財務分析などの関連資格を次々と取得しなければならないことから、簿記3級はその最初のステップとなる資格です。
日商簿記の場合、初歩レベルの3級であっても実務に直結する会計業務全般の幅広い知識とスキルを証明します。仕分け、貸借対照表と損益計算書の作成などひととおりマスターできからです。このため金融だけでなく経理や財務部門の求人を目指すときは、ぜひ取っておきたい資格です。
このとき障害者であっても、求人では簿記3級レベルであっても有利になる求人が多いです。例えば以下は、大手商社の関連会社の障害者雇用・正社員求人です。
ビル管理会社の事務職求人です。応募資格は事務職の実務経験が必要ですが、簿記3級の資格があれば有利になります。
大手の会社の場合、事務職であっても企画や人事や、会計など分業が進んでいることが多いです。このため事務職で採用されたとき、経理や財務を専門とする部署に配属となる可能性があります。このとき簿記の資格が大いにアピール材料となります。
簿記3級の勉強時間は100時間くらいといわれています。合格率は50%くらいです。一度失敗してもあきらめなければ2~3回の受験で多くの人が資格取得できます。
私は学生の時に簿記3級を取得しました。最初の受験では「なんとなく取得しておけば有利かな」くらいだったのでモチベーションが低かったため不合格でした。ただ1回目の受験で雰囲気を体感できたことがモチベーションのアップにつながり2回目で合格しました。
難易度は簿記3級で、レベル3です。ただ原価計算・工業簿記が加わる簿記2級だと難易度4、さらに専門的な1級だと難易度は5になり難関です。
このように銀行などの金融機関だけでなく、事務職で就職や転職を目指すとき、会計、経理希望などでアピールしたいときは難易度が低い簿記3級から取得しておくことをおすすめします。
【難易度3】事務系の求人に有利な秘書検定、衛生管理者
障害者雇用の事務職求人で業務全般のスキルを証明するときに有利な資格は秘書検定です。障害者を採用するときに、最も重視している業務スキルが一通り網羅されているからです。
秘書検定は社会人としてのマナーだけでなく、書類作成や業務のあり方などのスキルを証明します。安定して就業するためには、ぜひとも身に着けておきたいスキルです。
このため事務職向きの多くの資格の中で、最も障害者におすすめの資格の一つです。
ほかにも障害者求人に有利な資格は衛生管理者です。従業員50人以上の規模の事業所には、資格取得者を必ず配置しなければならないいまりがあるからです。
例えば採用時に自社で衛生管理者が不足している場合、障害者が衛生管理者の資格取得者であれば、障害者雇用率の維持向上だけでなく衛生管理者の不足にも貢献できます。
このため衛生管理者の資格は、採用側にとって重宝する資格といえます。
【難易度3】求人で必要な資格、警備業務検定・登録販売者
資格があれば有利なだけではなく、資格がなければ業務に携われない職種は多いです。このうち取得しやすい資格は以下の通りです。
- 警備業務検定2級
- 登録販売者
警備業務検定は資格を持っていなくても、採用後に会社が資格取得を補助してくれることが多いです。ただ費用や期間がかかるため、前もって資格を持っておくと就職や転職で有利です。
例えば以下は、交通誘導する警備員です。
こうした業務には、警備員の資格が必要となります。
なお心身の障害で警備業務を行えない可能性がある場合は「欠格事由」となります。このとき警備員の資格が取れない場合があるため、医師の診断が必要です。
一方で登録販売者は、市販の医薬品を販売できる資格です。資格取得には試験だけでなく一定期間の実務経験が必要です。
ただ試験は実務経験がなくても合格できます。このため資格を持っていても実務経験が必要期間に達していなければ「研修中」として働くことは可能です。こうして実務経験期間を満たすことができれば、正式な登録販売者として勤務できます。
以下はドラッグストアの売場です。
こうした売り場で、市販医薬品の販売に携わります。専門資格のため、月に1万円くらいの資格手当もあります。
警備員や登録販売者の資格の難易度は高くありません。ただ登録販売者に必要な勉強時間は、これまで解説してきた資格に比べてかなり長いです。必要な知識は難しくないのですが、習得しなければならない量が多いからです。
ただ一度取得してしまえば有利な資格なので、勉強時間を長期間確保できる障害者はチャレンジしてみるといいです。
【難関度4以上】障害者が強力な武器となる資格
最後に難関資格をみていきます。健常者であったも難関といわれる資格です。ただ障害者求人であっても必須のときがある専門性の高い求人が多いです。以下で詳しくみていきます。
【難易度4】基本情報技術者(FE)
障害者がIT業界で就職・転職を目指すときに取っておきたい資格が基本情報技術者(FE)です。ITエンジニアが最初に受験するメジャーな国家資格です。
IT業界で必要となる情報通信技術の知識だけでなく、論理的思考やアルゴリズム、マネージメントの知識やスキルを試されるため、ITパスポートよりも難易度が高くなります。
例えば以下は大手広告代理店の子会社の障害者雇用・正社員求人です。
社内情報システムのエンジニアの実務経験者採用です。応募条件の資格には基本情報技術者であれば有利です。
IT業界や社内の情報管理部門でキャリアアップを目指す障害者は必ず必要となる資格です。IT業界に絞った就職・転職活動では有利になる資格であるため、早めに取得しておくといいです。
【難易度5】宅地建物取引主任者
次に不動産業界で最もメジャーな国家資格は宅地建物取引主任者です。不動産取引では必ず宅建の資格者が必要です。難関ですが宅建の資格者がいなければ仕事にならないため、多くの不動産業界関係者が当然取得しています。不動産取引を担う独占資格の士業なので、将来予期せぬ退職・転職に直面しても困りません。
また、難関資格ですが障害者雇用であっても宅建が必須の求人も多いです。
例えば以下は大手リース会社の障害者雇用事務職求人です。
総務部門の求人ですが、応募に必要な資格に宅建があります。このように障害者雇用であっても宅建がなければスタートラインに立てない求人があります。
宅建は不動産業界ではだれもが目指す資格です。就職・転職であらかじめ取得しておけば間違いなく求人の選択幅が広がり有利になります。時間と負担を考えた上で、無理のない勉強時間を確保できればチャレンジするといいです。
【難易度5】TOEIC700点以上
英語力がアピールできる目安はTOEIC700点以上のスキルといわれています。難関ですがビジネス英語のスキルを求められる外資系や海外部門の求人を目指すのであれば必要となります。
例えば以下は外資系コンサルタント会社の障害者雇用正社員求人です。
実務経験者の事務職求人ですが、この求人のように障害者採用であってもTOEICを採用の目安としていることが多いです。本社との連絡やビジネス文書作成で英語の高いスキルが求められるからです。
英語を活かしたキャリアアップを目指す障害者は、TOEIC700点を目安に就職・転職を有利にすすめましょう。
障害者の就労・資格取得を支援・補助してくれる機関
障害者の就労に向けた訓練や支援の過程で、資格取得を補助してくれる機関があります。多くの機関が公的な施設や行政から委託された福祉事業所です。このため無料で利用できることが多いです。
ただ自力での就労が難しく、支援が必要な障害者向けの機関であることから、高い難易度の資格取得ではありません。どのような機関で就労に向けた資格が取得できるのか、以下で詳しくみていきます。
障害者職業能力開発校
障害者職業能力開発校は国が全国18か所に設置してあります。運営は各都道府県が行っています。利用者の希望に応じて事務・パソコン業務や建築関係、Web制作などに必要なスキルを習得するためのカリキュラムが用意されています。
例えば東京では全12科目のカリキュラムがあります。主にビジネス文書作成やプログラミング、アプリ開発などさまざまです。
スキルの習得の中で、関係する資格取得にも力を入れています。
障がい者職業能力開発校の対象者には、主に以下の条件があります。
- ハローワークに求職者登録をすること
- 訓練後に就職を見込めること
- 就労支援機関・事業所などで就労のための支援サービスを受けること
また定員制なので、入試試験があります。内容は学科(国語、数学)及び面接試験、適性検査などです。就労意欲や訓練に耐えうる学力、適性をみられます。
なお障がい者職業能力開発校では受講中、日給約4,000円の訓練手当が受けられます。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害者の就労を支援する機関です。各都道府県に設置してあります。訓練だけでなくハローワークと連携しているため求人を紹介してもらえます。
また就職後もジョブコーチ(就労支援員)が勤務先に来てアドバイスなどのサポートを受けることができます。さらにジョブコーチは雇用主に対して、障害者の従業員が働きやすいように業務上のアドバイスをしてくれます。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害者の就労を目指す訓練を支援する行政から委託された民間の事業所です。
訓練期間は最長で2年です。習得できるスキルはマナーや接客・応接などのビジネスの基本から、パソコン関連資格の取得を目指すものまで事業所によってさまざまです。
例えば以下は、九州の地方都市にある就労移行支援事業所です。
こうした事業所は全国に数千か所あります。規模は大小さまざまですが、1事業所あたりの利用者は平均で10数人くらいなので、大半が小規模です。このため支援員によるきめ細かな指導が受けられます。
訓練後は支援員から面接指導などさまざまなサポートを受けながら就職や転職活動を行います。このとき履歴書の書き方の指導や面接の練習、支援員といっしょに求人を探したり面接の同行をしてくれたりします。また就労後は就職した職場に定着するまでの約半年間、支援員から仕事上の悩みの相談に応じてもらえます。
このように資格取得に特化した就労移行支援事業所は多いです。また資格取得だけでなく、就職・転職やその後のサポートまで受けられることが就労移行支援事業所のメリットです。
資格を過信しないこと
これまで資格を取得することで就職や転職に有利になることを解説してきました。ただ資格があるからといっても、必ず採用されるとは限りません。
障害者雇用の場合、採用側は資格やスキル以上に「安定して長くはたらいてくれるのか」ということをみているからです。
例えば英検や簿記、パソコン検定など幅広く数多くの資格を持っている人はいます。このような人は、必ず知識欲が旺盛で習得スキルが高いという高い評価を受けるため有利です。
ただ採用側は、資格の数よりも「長く安定して働いてくれる人物であるかどうかを重視しています。採用側が求めている人材に見合っていることをわかってもらえなければ、いくら資格を持っていても就職や転職はできません。
つまり多くの資格を取得していても方向性・一貫性のない資格では武器になりにくいです。結局何を目指して資格を取得しているのかがわからないからです。
資格があるからといって過信してはいけません。障害者の場合、採用側が資格以上に重視しているのは「職場の人間関係や取引先とトラブルを起こさない、安定した人物」であることを理解しておきましょう。
まとめ
資格があれば、知識やスキルを証明する強い武器になるため必ずライバルに差をつけることができます。また書類選考から面接へ進める可能性が大きく高まります。
障害者雇用は事務補助など裏方の仕事が多いです。このとき資格があれば、最初から一般枠の採用者と同じ業務を任せてもらえることもあります。また学歴や前職のステイタスでライバルに見劣りしていても、それを跳ね返して転職を成功させることもあります。
障害者雇用は事務職求人が多いため、難易度の高くないMOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)などがおすすめです。また事務職には会計、財務分野が多いため簿記やファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定などが有利になる求人が多いです。
他にも実務経験者であれば、衛生管理者などの人事・労務管理の関連資格でスキルを証明できます。
そして専門的でありながら取得しやすい登録販売者などの資格であれば、ドラッグストアや小売業の求人で有利になります。
資格の種類や難易度は様々ですが、難易度が高くない資格であれば公共機関や就労移行支援事業所などの福祉サービスで支援を受けながら取得することもできます。
資格を取得するデメリットは何もありません。ただ、資格はあくまで手段です。資格を過信せず意欲や謙虚さなど、堅実に就労できる持ち味をアピールして就職・転職を成功させましょう。
障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。