工業系の大学・学部や高校を卒業していたり、技術を身につけてものづくりの仕事に携わりたいと考えたりしている障害者は多いです。
ただ現在の仕事ではスキルが活かせなかったり、単純作業ばかりの仕事でスキルアップできず不満に思っていたりする障害者がいます。
また障害に対する理解や配慮がない職場で働きづらい思いをしている障害者も多いです。このようなときは障害者雇用の技術職求人で転職した方がいい場合が多いです。
技術職は大企業を中心に障害者雇用求人が多いです。また障害者雇用では高い技術を必要とするものから、未経験だったり知識に乏しかったりしても応募可能の求人まで幅広いです。
以下では障害者が技術職で転職するとき、どのような求人内容があり、どのような求人を選べばよいのかを解説します。
もくじ
専門的な工学知識や経験を活かす技術職求人
技術職には機械工学や電子・電気工学の専門的な知識が必要な求人と、これらの高い知識が不要だったり基本的な知識で十分な仕事だったりする求人があります。このうち高い専門性を必要とする技術職は、主に以下の通りです。
生産技術 | 製造業で生産性を上げるために生産ラインの設計・改善したり管理したりする |
設計・開発 | 商品の設計図を作成し、商品を形にする |
品質保証 | 製品が設計どおりに出来上がっているか検査したり、生産工程を管理したりする |
技術営業 | 技術的な専門知識を活かして製品を企画・提案して売り込む |
これらの職種に明確な定義はないので、実際の求人内容をもとにおおまかに分けるとこのようになります。これらの技術職はものづくりの根幹となる技術です。以下で、これらの具体的な求人内容をみていきます。
高い知識と多様な職務能力を必要とする生産技術求人
技術者の求人のうち、もっとも多いものが生産技術です。生産技術は生産ラインの現場で生産性向上のために生産工程を設計して管理したり、問題点があれば改善したりする仕事です。
ただ生産工程を技術的な側面で管理することから、担当者への指示や商品開発部門へのフィードバックなど、知識と経験だけではなく説得や説明などの高い対人力も必要となります。こうした対人力が必要な仕事はメンタルに負担がかかるため、情緒の不安定な障害者には適していません。
一方で高い技術力以外にも他部署との交渉など多岐にわたるため、親しまれやすい人柄や人とのつながりに仕事のやりがいを求める障害者には適しています。
それでは生産技術の求人にはどのようなものがあるのでしょうか。例えば以下は、大手自動車部品メーカーの障害者雇用・正社員求人です。
技術職の中で生産技術に限った障害者採用求人です。障害者採用を強化していることが記載されています。これは一定規模以上の企業では法律で障害者の雇用義務があるからです。
法定の障害者雇用数に達していない場合、国に納付金を払う必要があります。このため一般枠よりも採用基準が緩くして採用を急ぐことがあります。このため障害枠の求人は一般枠に比べて有利なことが多いです。
なお、この求人の具体的な仕事内容は以下の通りです。
生産工程の設計の仕事です。この求人ではプレスのラインの生産性の向上のための設計を担います。
また仕事で使うツールとしてAutoFormなどの成形専門の設計ソフトがあります。技術者は、こうしたソフトウェアを扱うことができるスキルが必要となります。なお生産技術では、こうした設計ソフトのスキルが必須の求人もあります。
このように大学などで工学を学んだ障害者や製造現場で実務経験がある障害者は、知識や経験を活かしたりスキルアップをしたりしようとする場合は生産技術求人を選びましょう。
商品化のベースとなる設計・開発求人
このような生産技術求人は、工場などの生産現場で生産性の向上のために技術職ですが、そのほかにも製品そのものの設計を担う技術職があります。それは設計・開発です。
設計・開発では企画された商品を実際の形にするために、設計図を描いたり試作したりします。生産が開始されたときの工場設備やコスト、効率性にも影響を及ぼすため、ち密さと根気強さを持つ障害者が適しています。
それでは設計・開発職は、どのような求人があるのでしょうか。例えば以下は、大手電子機器メーカーの障害者採用・正社員求人です。
技術職のオープンポジション求人です。具体的な職種は以下の通りです。
技術職のオープンポジション求人なので、採用後に配属決まります。その中でもこの求人は、ハードウェアとソフトウェア両面の商品開発部門です。また応募条件は以下の通りです。
ハードウェアやソフトウェアの実務経験が必須の求人です。工業製品の場合、大半で電子機器が組み込まれているため、ハード・ソフト両面の設計・開発技術者が必要となります。
なお、この求人では新商品の開発・設計にとどまらず、商品企画や新規事業の立ち上げを視野に入れています。つまり企画段階から商品化までのすべての工程に関わります。
ヒット商品を生み出すための商品開発には、従来にない独創的は発想が必要です。このため、この求人では部署の縦割りによる弊害をなくし、企画・開発から事業の立ち上げまで設計・開発職が一貫して担うことで、柔軟な開発を促しています。
このように商品開発・設計の技術職は企画された商品を正確に設計し、形にすることができる高いスキルと発想力の両方が必要であることを踏まえて求人選びをしましょう。
製品と生産工程を管理する品質保証求人
こうして企画・開発を経て生産される製品は、異常がないかチェックされます。この検証作業を担うのが品質保証の技術者です。
メーカーの価値は製品を通じて決まります。このため会社の社会的価値を良い方向にも悪い方向にも決定づける品質保証の仕事は重要です。
妥協が許されない仕事のため、技術的な見地に裏付けされた厳しい目線でチェックが必要です。必要があれば、ほかの部署に対して細かい改善を求める場合があります。
このため特に生産技術などの部署からは煙たがられることもあります。こうした特徴から毅然とした態度で仕事に臨むことができる障害者でなければ務まらない職種です。
それでは品質保証の仕事は、どのような求人があるのでしょうか。例えば以下は、精密機器メーカーの障害者雇用・正社員求人です。
障害者専用の技術職求人であり、職種は品質保証に限定しています。品質保証はこの求人のように完成品の品質を検証するだけではありません。それ以外に企画や生産前の段階で品質基準を決定し、品質向上のために生産工程の検証も担っています。
また商品に対する顧客からのクレームも受付けて、担当する部署に対して原因究明や再発防止措置をとらせます。
このように品質保証の仕事は、生産工程全体を見渡して技術的な観点から問題点を見極めます。このため日ごろから専門分野の技術的な知識の習得が重要です。
こうした品質評価の仕事は結果や効率ばかりを重視しがちな障害者よりも、小さな問題点に素早く気づき物おじせずはっきりと意見が言える障害者に適しています。
技術職は高機能なものづくりや生産性ばかりを追求する仕事ではありません。品質評価の仕事のように交渉力や社内コミュニケーション能力が必要な職種があることを理解しておきましょう。
顧客のニーズに合わせて企画提案する技術営業求人
技術職の採用を行う会社が生産する製品は一般消費者向けのものもあれば、法人対象のものもあります。食品や家電製品など一般消費者向けの商品であれば、一般的な営業マンが個人や大小さまざまの小売店にセールスします。
一方で精密機械や製造装置など高い専門性と技術力を駆使した製品の売込みには、顧客も高い専門知識を持っていることがあり、商談で細かい技術的な説明をする必要があります。
このとき一般的な営業マンでは務まらない場合が多いため、高い専門知識を持った技術者が売り込むことになります。このような技術系セールスマンが、技術営業です。なお、技術営業職はセールスエンジニアと呼ばれています。
技術営業では顧客の抱えている課題やニーズを聞き取ります。そして製品を企画開発し、製品を通して顧客のニーズを満たしたり問題解決を図ったりします。このため高い技術力のほかに企画・提案力が必要になります。
技術営業の求人とは具体的にどのようなものでしょうか。例えば以下は、産業用ロボットメーカーの障害者雇用・正社員求人です。
技術職のオープンポジション求人であり、採用後に配属部署が決まります。このうち技術営業職については、この求人では法人営業となっています。法人営業の求人内容は以下の通りです。
顧客からの要望を受けて設計担当と製品企画・開発をします。また生産工程の管理やアフターサービス全般を担当します。
技術営業は前述の通り、高い技術で生み出される製品を売り込む仕事です。技術営業は一般的な技術者と同様に技術と専門知識が必要ですが、それ以外にも一般的な営業マンと同じように提案力や対人力が必要となります。
一方で自分が持つ専門知識を駆使して形する仕事ではなく、専門技術をわかりやすく正確に顧客に説明する能力の方が重要です。このため技術力に関しては、一般的な技術者と同じくらいの高いレベルや専門性は求められません。
このように会話・説明力や対人力がある技術者や、一般的な営業職のように同僚と競争して成果を上げることにやりがいを感じる技術者は、技術営業の求人が適しています。
高い技術力が不要の製造技術求人
このようにメーカーの成長は、高い企画・開発力と生産性、高品質・高性能の商品を生みだす力によって決まります。技術者の高い技術力こそが会社のカギであるため、障害者枠でも即戦力となる優秀な人材の求人が主流です。
一方で同じ障害者雇用の技術職でも、高い技術力を必要としない求人が存在します。それは製造技術系の求人です。製造技術系の求人は生産ラインの作業や機械・設備を操縦するオペレーターの仕事です。
例えば以下は、大手メーカーの技術職の障害者雇用・正社員求人です。
この技術職求人は、技術系職種と技能系職種のふたつに分かれています。技術系は前述した開発設計や生産技術などです。一方で技能系求人は、ライン組み立てや機械・設備の操縦となっています。
勤務時間について、技術系は8時半から午後5時15分までの日勤です。一方で技能系は24時間・三交代制です。これは工場が24時間操業だからです。このため生活のリズムが不規則となり、障害者にとっては体に負担となるおそれがあります。
このような生産ラインの求人は前述の通り現場作業員です。同じ技術職でも開発設計や生産技術のような高い技術を必要としません。このため体を動かすことに不自由がない障害者であれば、誰でも応募できる求人です。
このように製造技術者の求人では、体力的には問題がない障害者で不規則な生活に耐性があったり、工学系の知識が乏しかったりする障害者や事務仕事が苦手な障害者には適しています。
技術補助求人で技術者を目指してスキルアップする
こうした製造技術の求人のように、技術力がなくても応募可能の技術職求人は障害者雇用だとほかにも存在します。それは技術補助職です。
技術補助職は、設計・開発や生産技術などの技術者の仕事を補助する求人です。補助が役割なので、高い技術は必要とされず、技術者の見習いとして同じ職場で働くことになります。
それでは技術補助にはどのような求人があるのでしょうか。例えば以下は、大手メーカーの障害者雇用・技術職求人です。
生産技術者の生産管理や設計部門の業務を補助します。この求人は障害者専用となっており、補助職として無理なく働けるように一般枠とは別の求人となっています。
障害者雇用はこの求人のように補助職が多いです。それは、こうした求人は採用側が障害者の働き方に対する配慮のひとつだからです。このため一般枠とは別の雇用枠を設けて補助的な仕事をさせている場合が多いです。
このような求人は障害者にとって大きなメリットです。それは技術者と仕事をすることで、実務を通じて技術系の仕事のノウハウとスキルを学べるからです。
このような求人であれば、技術者としてスキルアップを図ることができます。今は技術者としての経験や知識がなくても将来技術者として働きたい障害者は、技術補助の求人を選びましょう。
障害者雇用の技術職求人は障害への理解や配慮が充実している
それでは技術職の障害者雇用求人は、どのような配慮を受けて働くことができるのでしょうか。
大手の会社では前述の通り、法律で一定割合の障害者を雇用する義務があります。一方で中小や零細企業ではそのような義務ありません。このため中小零細企業では、障害者雇用として求人を行うことはありません。
大手会社の場合、人員体制や資金面でゆとりがあります。このため働き方や施設が充実しています。
技術職の仕事は障害への配慮があれば、健常者と同じように働くことができることが多いです。このため大手の会社では技術職の障害者雇用の実績が豊富な会社が多いです。また、会社全体に障害者への理解や配慮が行き届いています。
それでは技術職の障害者雇用には、どのような配慮がある求人があるのでしょうか。例えば以下は、大手総合家電メーカーの障害者雇用・正社員求人です。
技術業務全般を担当する求人です。この求人の障害者配慮は以下の通りです。
障害に対して施設面と働き方の両方に配慮があることがわかります。このため身体障害者であっても精神障害者であっても、あらゆる配慮を受けながら働くことができます。
精神障害者や発達障害者などの障害者の中には障害を伏せて働いていたり、配慮を申し出ることがしづらい職場環境で我慢しながら働いていたりする人は多いです。
このような障害者は、障害への理解は配慮の充実している大手の技術職求人で転職しましょう。
まとめ
障害者雇用の技術職求人は、企画・開発や生産技術、品質保証など様々な職種があります。これらの職種は技術者として機械工学や電子・電気工学など専門的な工学知識や経験を活かす求人が大半です。
一方で技術者に必要なこれらの専門知識が不要の技術職求人があります。それは生産ラインなどで作業する製造技術や機械オペレーター求人です。ただ、このような求人は3交代勤務制の工場勤務であることが多く生活リズムが乱れるため負担は大きいです。
障害者雇用の技術職はハイスキルの求人から専門性不要の求人まで様々ですが、技術職の求人は長期的なキャリアプランが重要です。このため明確な将来の目標を立て、その目標に向かってスキルアップできるような求人を選ぶようにしましょう。
障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。