うつ病を抱える人が職場に戻ったり、新しい仕事を見つけたりするのは、とても難しいことです。

この場合、自分を守るために、職場に戻るよりも新しい仕事を探す方が少しハードルが下がることがあります。

うつ病という不利な状況で、新しい仕事を見つけたり転職したりするのは難しいことですが、その人をサポートするためには、大きな支援が必要です。その中で、今一番効果的だと言われているのが「就労移行支援」です。

ここでは、うつ病の人がどのようにして就労移行支援を受けて、スムーズに新しい仕事を見つけたり転職したりできるのかを説明していきます。

うつ病で資格やスキルのない人は就労移行支援が最適

うつ病が起こる主な理由は、人間関係のトラブルだけでなく、仕事の能力不足などいろいろな要因が影響してきます。

  • 睡眠不足や不健康な食事などの悪い生活習慣
  • 社内外の人との接し方の問題

また、うつ病の症状が治まっても、すぐに仕事を始めることはリスクがあります。再びうつ病が戻ってしまい、仕事をやめざるを得ない可能性が高いです。

こうした状況のとき、基本的な仕事や社会での振る舞いを身につけるための支援を受けるのが就労移行支援です。特定の専門的な資格やスキルを持つ人には向かないかもしれませんが、社会で必要な知識や技能が足りないと感じる人には役立つ手段です。

うつ病の人が就労移行支援を利用した方がいい理由

では、うつ病の人がどうすれば能力を身につけることができるか、わかりやすく説明します。

就職や転職を考えているうつ病の人が利用できる場所には、就労訓練施設やハローワーク、民間の事業所などがあります。しかし、これらの場所では、授業の進み方が速すぎたり、大勢で訓練を受けることが難しかったりすることがあり、うつ病の人にとっては大変です。

一方で、就労移行支援は個々の人に合わせて、授業の進み方や訓練の期間を調整してくれます。また、1つの事業所には平均して5~10人程度の利用者がいるので、利用者同士が仲良くなりやすいです。さらに、毎日通う必要はなく、週に1回だけ通うことも可能です。

以下の写真は、就労移行支援事業所で行われている授業の様子です。ここでの授業は、うつ病の人が自分のペースで学べるように工夫されています。

少人数で、年齢が違う人たちが受けている授業があります。

うつ病の人は、人と関わることで仕事をやめてしまうことが多いです。だからこそ、支援員と一緒に学びながら、少人数の環境で進める就労移行支援が一番ふさわしいです。こうすることで、個別のサポートがしっかり受けられます。

採用側の就労移行支援のメリット

でも、就労移行支援は企業にとってもいいことがあります。うつ病の人でも、就労移行支援を受けた人は、他の人よりも職場でのルールや常識をしっかり学んでいます。

以下の写真は、うつ病や他の障害を持つ人たちのために、いろいろな仕事のサポートをしているNPO法人の事務所です。

就労移行支援事業所では、実際の仕事の練習をするために、1~2週間の職場実習が行われます。その後、提携している企業で働くことができる場合もあります。企業側がその人を評価し、実習後に正式な雇用となることがあります。

うつ病の人の場合、人との関わりが苦手でも、おだやかな性格やまじめな仕事ぶりが評価されることがよくあります。

また、企業が採用面接で印象を受けた通りに、実際の仕事で問題がないかを確認できるので、採用後のミスマッチを避けることができます。例えば、面接で「会話やパソコンのスキルに問題はない」と言われて採用されても、実際にはうまくいかない場合があります。

こうした問題を防ぐため、就労移行支援事業所は採用企業との信頼関係を大切にしています。事業所は利用者の特性をしっかり企業に伝え、採用された後もうまく適した仕事ができるようにサポートしています。

企業側が心配するのは、うつ病の人を採用しても、人間関係のトラブルやスキルの不足が問題になるかどうかです。だからこそ、就労移行支援を受けて訓練を受けているうつ病の人は、安心して採用することができるのです。

うつ病の人が就労移行支援で就職転職するまで

ここでは、うつ病の人が就労移行支援を利用して就職や転職する手順を見ていきます。

最初に就労移行支援を受けられるのは、うつ病や難病などの障害がある18歳以上で、65歳未満の人です。また、18歳以上なら、大学生や専門学校生など、学校に通っている途中の人も使うことができます。

つまり、うつ病がある人は障害のある人とみなされるため、どのような人であっても、医者の診断があれば就労移行支援を利用できます。

次に、就労移行支援を使うためのお金は、生活保護を受けている人や収入が少ない人はタダです。それ以外の人は、自分の収入に合わせて最大で37200円までかかります。

ただし、就労移行支援を受ける間は仕事に出ていないので、収入がないことが多いです。だからほとんどの人は実際には無料で使っています。

自分に合った就労移行支援事業所を選ぶ

全国には数千もの就労移行支援事業所がありますが、その中でうつ病の人に合った最適な場所を選ぶことが大切です。失敗しないためには、まず気になる事業所を見に行って、実際に通ってみることが大事です。

最初に興味のある事業所に行って、施設を見学しましょう。職員や支援員に疑問や心配ごとを聞いてみるのもいいですね。実際にその場所を見て回ることで、ウェブサイトに書いていない情報もたくさん知ることができます。

以下は、どのような質問をすると、その事業所の特徴が分かるかについてです。

質問内容 A事業所 B事業所
訓練 漢字計算、会話、メンタル学習、面接練習 終日パソコン習得授業
利用者数(定員) 8名(10名) 10名(8名)
平均訓練期間 9ヶ月 1~2年
経営年数 12年 5年
経営母体 社会福祉法人 民間企業

A事業所では、毎日違う曜日に、漢字や計算、社会で必要なスキルを学ぶ授業があります。一方、B事業所では毎日一日中、パソコンの使い方を習う授業が行われます。また、A事業所では毎週金曜日に面接の練習がありますが、B事業所では面接の前に放課後に行われます。

例えばうつ病の人の場合、話すスキルやメンタルのトレーニングが充実しているA事業所が適しているかもしれません。事業所を見学する際は、どのような支援が受けられるかを考えながら質問してみると、事業所の違いがわかるでしょう。

そして、体験通所も重要です。ほとんどの事業所で、無料で訓練を試すことができます。この機会に、訓練の内容だけでなく、支援員との相性も見ておくことが大切です。

全国にはたくさんの就労移行支援事業所があります。それぞれの事業所には違いがあるので、自分に合った場所を選ぶためにじっくり考えましょう。

就労移行支援の利用開始

就労移行支援事業所を選んだら、利用手続きを始めます。ここで注意が必要なのは、利用したいと思ってから実際に申し込むまでに1~2ヶ月ほどかかることです。なぜなら、就労移行支援のサービスを利用するためには、福祉サービス受給者証(受給者証と呼ばれるもの)が必要だからです。この手続きでは、個別支援計画を作成し、市役所や役場に受給者証の申請を行います。

そして1~2か月後に、受給者証が交付されると、それから就労移行支援を利用することができるようになります。

訓練の一環として、実際の仕事を体験する「職場実習」が行われます。職場実習では、実際の仕事を経験することで、どんな感じで働くのかをイメージすることができます。実習期間は通常1~2週間で、実習生として実際の職場で働くことになります。ただし、職場実習の内容は事業所によってかなり異なります。以下はその一例です。

A事業所 B事業所
職場実習内容 1回の実習は2週間

希望すれば何社でも行える

就職したい会社に体験入社する
職場実習先 海保、料理補助、バックヤード、農業、事務、清掃、小売業、工場 各企業の事務職

A事業所では、様々な種類の訓練の一環として職場実習が行われます。もし就労訓練中であれば、何回でも希望するだけ実習が受けられます。実際、たくさんの実習を行う人もいて、十数社以上の実習経験を持つ人もいます。うつ病で毎日の実習が大変な場合でも、1つの企業で1~2日の実習をすることも可能です。

一方でB事業所では、支援員と一緒に就職の見込みのある企業を検討し、その企業で職場実習を行います。もし実習先が合わない場合は、別の企業を検討して次の実習先を見つけることもあります。

どちらの方法でも、職場実習は、一人ひとりの希望や特性に合わせて行われます。だからこそ、うつ病の人でも無理なく実習をすることができますし、病状を悪化させることなく取り組むことができます。

就職移行支援するうつ病の人に向いている求人とは

それでは、うつ病の人が就労移行支援を使って仕事を見つける際のポイントをお話ししましょう。うつ病の人は、人と関わることが難しい場合があるから、人と接する機会が少ない仕事を選ぶことが大切です。

例えば以下は、システムキッチンメーカー最大手の工場のライン作業員の障害者向け求人です。

この求人は、工場のライン作業をする仕事で、人と関わることが少なく、コツコツとした作業が求められます。作業内容はシンプルで、身体的にも精神的にも負担が少ないので、うつ病の人にとって向いている仕事です。

同じくコツコツと頑張るうつ病の人に向いている仕事には、事務職もあります。事務職では、来訪者の受け入れや電話の応対などが含まれますが、うつ病の人にとって負担にならないような工夫をしている企業も多いです。

以下は、障害者向けの事務職の求人の一例です。

この求人は、うつ病の人がすでに雇用されており、電話や仕事の速さにも気配りがあることがわかります。また、この求人は仕事が複雑ではなく、わかりやすいものです。

この求人は、主に郵便物の仕分けや書類の廃棄、データ入力など、特別なスキルが不要な仕事内容です。そのため、うつ病の人にもあまり負担にならないでしょう。

実際に、就労移行支援を利用する人たちの多くは、このような軽作業や事務の補助をする仕事に就いています。うつ病の人も、就労移行支援を通じて社会でのスキルを身につけておくことで、うつ病に配慮された求人を見つけて就職や転職を成功させやすくなります。

うつ病の人が就労移行支援を利用するときに注意すべきこと

ここまで、うつ病の人が就労移行支援を利用すると得られる利点について説明しました。しかしながら、就労移行支援を活用して就職や転職をする際には気を付けるべきこともあります。

まず、うつ病の人がうまくいくために大切なのは、信頼できる就労移行支援事業所を選ぶことです。

就労移行支援事業所は、政府から委託されて助成金を受けて運営されている民間の施設です。経営元はさまざまで、民間企業や社会福祉法人、病院などがあります。ほとんどの事業所は利用者のことを大切にし、真剣に支援を提供していますが、中には助成金を目当てにした悪質な事業所も存在します。

こうした悪質な事業所には、いくつか特徴があります。

  • 訓練内容や設備が乏しく、清掃管理が行き届いていない
  • 支援員や職員の態度が悪く、利用者との関係がぎこちない
  • ホームページなどで就労実績や定着率などの情報開示が乏しい

こうした特徴が当てはまる場合は、その事業所を避けることが賢明です。特に対人関係がデリケートなうつ病の人は、支援員の態度や振る舞いをしっかり観察してください。

就労移行支援事業は、10年以上前から存在しており、景気の好転時には利用者が少なく、景気が悪い時には利用者が増えるという特徴があります。このため、悪質な事業所は利用者不足になることが多いですが、それでもなお悪質な事業所が存在することがあります。

悪質な事業所を回避するためには、必ず施設見学や体験通所を行うことが大切です。

就職転職活動の前提は担当医師との相談

うつ病の人の中には、早く社会に戻りたいと焦って、まだ完全に治っていない状態で就職や転職活動を始める人が多いです。うつ病の人が就職や転職をする前に、まず大切なのは自分の担当医師と相談することです。自分の健康状態で就職活動をしてもいいかを確認する必要があります。

就労移行支援を使って就職や転職をしても、無理をしてしまうと再びうつ病が再発してしまうことがあります。特に就労移行支援を受けている場合は、支援員の意見も大切に聞いて、自分だけの判断だけでなく周りの人のアドバイスも考えながら進めることが大切です。

まとめ

うつ病の人が一人で就職や転職をしようとすると、心の問題を抱えたままだと難しいことがあります。そこで、ここではうつ病の人が就労移行支援をうまく使って、スムーズに就職や転職を成功させる方法を説明してきました。

うつ病の人は、病気が治った後でも、以前のように日常生活を取り戻すことを目指す人が多いです。そのとき、就労移行支援を利用することで、大いに助けになることがあります。

就労移行支援では、仕事に必要なトレーニングや面接の指導などが受けられます。社会で必要な知識やスキルが身につくだけでなく、就職先の選び方から面接の練習、実際の面接同行までサポートしてもらえるので、成功のチャンスが広がります。

これらのことを理解して、就労移行支援を上手に利用して、就職や転職を成功させましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。