Webデザイナーは身体障害者や対人不安などの精神障害にあまり影響されずに働けるメリットがあります。またクリエイティブ職のため、自分のセンスやスキルが仕事に反映される楽しさもあります。センスやスキルに障害の有無は関係ありません。このためWebデザイナーは障害者にとって最も適した職業の一つといえます。

一方で、Webデザイナーとして働く障害者の中には、今の会社の待遇や職場環境に不満を持つ人がいます。またフリーランスのWebデザイナーで働く障害者の中には、不安定なフリーの仕事よりも会社に勤務して安定して働きたいと考える人も多いです。

なお、専門職のカテゴリーなので障害者でも即戦力が重視される求人ばかりです。未経験者歓迎の求人は、Webデザイナーではほぼ皆無です。

ここでは障害者がWebデザイナーとして就職や転職で成功させるためには、どのような求人を選べばよいかを解説します。

障害者のWebデザイナー求人で気を付けるべきこと

Webデザイナーの求人には、障害にとらわれずに働けるなど多くのメリットがある反面、いくつかデメリットがあります。

Webデザイナーの仕事はクラウドソーシングの発達によって、簡単な制作であれば学生や主婦も関わるようになったため競合が増え、案件の単価が少しずつ下がっています。そのため、中小規模のウェブ制作会社を中心に短期間に多くの案件をこなさなければいけない傾向にあり、残業が多いです。

またWebデザイナーの求人には、クライアントからのヒアリングや制作工程の決定などは健常者や身体障害者が担います。うつ病や精神障害者の場合、対人関係に問題があるとみられているため、ホームページの更新作業やHTMLコーダーだけのスキルアップの見込めない単純な求人が多いです。

このため、自分の障害と向き合い、現在の働き方や将来のキャリアプランをよく考えながら求人を選ぶ必要があります。

そこで以下では、障害者がWebデザイナーで就職や転職で成功するための注意点を確認していきます。

障害者採用でも残業が多い

Webデザイナーは他の職種に比べて納期に追われて忙しく「今日も持ち帰りの仕事になった」と嘆く人は多いです。クライアントの突然の変更や追加の要望などの割り込みの仕事が多いためです。

特に納期直前であっても、クライアントからの変更要望は頻繁です。障害者でも、徹夜を覚悟しなければならない場合があります。

原因は様々ですが、Webディレクターの調整不足でクライアントの要望を制作現場に丸投げする場合あります。また、クライアントが理解や知識が乏しいため「この変更の要望が、実際どれくらい制作側に負担になるのか」がわからず、無理な注文を投げかけてくる場合があります。

ただし、安定した受注を続けるためには、クライアントの無理な要望もある程度は飲まざるを得ないのが実情です。

このような理由から、たとえ障害者雇用でも「Webデザイナーの仕事に残業がつきもの」と考えていた方が無難です。

例えば以下は、障害者向けWebデザイナーの正社員求人です。

時間外勤務が1ヶ月に80時間の場合があることが分かります。しかも年に720時間にのぼる可能性もあり、法定時間外労働を大幅に上回っています。

ただ、この求人はWebデザイナーの時間外勤務の実態を包み隠さず明示しています。このように、Webデザイナーの求人はたとえ障害者でも残業が多いのが普通であることを理解しておく必要があります。

スキルアップの見込めない求人は避ける

Webデザイナーの仕事の問題点は、時間外勤務だけではありません。現在Webデザイナーとして仕事をしている障害者の中には、以下のような不満を持つ人は多いです。

  • Webデザイナーの求人を選んだのに、ホームページの更新作業ばかりでつまらない
  • 単純なコーディングばかりで、スキルアップできない
  • 電話応対や雑務ばかりさせられる

実際に障害者のWebデザイナーの求人は、サイトの管理や更新作業など高いスキルが不要のものが多いです。この場合、スキルアップが望めず、給与も低くなります。

例えば以下は、障害者向けWebデザイナーの正社員求人です。

求人の内容が、Web制作に関してはサイト管理だけになっています。また付随業務としてのパンフレットや電話応対など雑多です。これではWebデザイナーとして、Web制作専門の企画や制作の仕事に関われそうにありません。

このような求人はWeb制作の経験はあっても、スキルの低い障害者には適しています。一方で、Webデザイナーとして、将来を見据えてスキルアップをしたいと考える障害者は避けた方がいいです。

障害者のWebデザイナー求人に給与の差がある理由

それでは、障害者向けのWebデザイナーの求人で、給与の高い求人やスキルアップが狙える求人はあるのでしょうか。

Webデザイナーの仕事は様々なので、本人の経験やスキルの有無によって給与に大きな差があります。例えばWeb制作の一過程であるコーディングだけの仕事であれば、当然給与は少なくなります。

一方Webデザインの仕事だけでなく、工程管理などの経験があるWebデザイナーの場合、スキルに応じて給料も高くなります。

例えば以下は、障害者採用のWebデザイナーの求人です。

この求人の月給では、固定残業代62,866円(30時間分)を含みますが月35万円からです。障害者雇用のWebデザイナーの求人は、固定残業代を入れても20万円くらいからが相場なので、この求人はかなり高いです。その理由は、以下の仕事内容欄にあります。

サイトデザイン以外にも、企画やプランニング、アクセス分析やSEO対策などサイトシステムに精通していることが必要です。このような求人は、経験豊富でなければ務まりません。

そのためWebデザイナーの求人はデザインやコーディングだけでなく、企画や工程管理、SEO対策などの付加価値の高いスキルがあれば、障害者採用でも高い給与の求人が存在します。

障害者のWebデザイナーにはどのよう求人があるのか

Webデザイナーの求人は障害者雇用の場合、単純作業の求人が中心ですが、採用側は大手企業から零細企業までさまざまです。

また経験が豊富であれば、障害者でもWebの要件定義から納期まで全てに携わる求人もあります。さらに残業が多いものもあれば、土日完全週休2日や年間有給休暇の多い求人もあります。

このように、Webデザイナーの求人は障害者向け求人でも一般枠と同じくらい多様です。

障害者が多様な求人の中からWebデザイナーとして就職や転職をする場合、どのような求人を選ぶといいでしょうか。そこで、実際に障害者のウェブデザイナーが就職や転職を成功させるにはどのような求人を選ぶといいのか確認していきます

大企業の障害者採用求人で安定して働く

Webデザイナーはフリーランスでも働けますが、人脈に頼った受注ばかりで不安定な人もいます。このためWebデザイナーとして自分の経験を活かして大企業で安定して働きたいと考えている障害者は多いです。

Webデザイナーが大手企業で働くメリットは、受注する案件の規模が大きく、クライアントから求められる品質が高いことです。このため、安価な案件を短期間に数多くのこなしていくことが多い中小企業と比べて、長期間にわたって腰を据えて品質の高いものを制作することができます。

また、人材育成のための教育や研修のカリキュラムが充実しているため、時間に追われることなく仕事をしながら高いスキルを身につけることができます。

例えば以下は、ソフトバンクのWeb制作の障害者向け正社員求人です。

Webデザインの仕事内容は、バナーやウェブサイトの入り口にあたるランディングページ(LP)の作成となっています。

また大手企業の場合、応募者が多いので応募条件は厳しい印象がありますが、意外とそうではありません。この求人の場合、応募資格は以下の通りです。

PhotoshopやIllustratorの制作経験があれば、誰でも応募できることが分かります。なお、この求人の障害者雇用状況は以下のとおりです。

大手企業であり、多様な雇用実績と障害への配慮があることがわかります。

大企業には障害者雇用率を果たす義務があります。社会的責任や影響力が大きな大手企業は、中小企業に比べてこの障害者雇用率を維持しようとする姿勢が強いです。このため障害者枠の応募条件は、一般枠に比べて厳しくない傾向があります。

このように大手企業の障害者向け求人は、Webデザイナーとして配慮の行き届いた企業で安定して働きたい障害者やスキルアップしたい障害者に適しています。

将来のキャリアやポストがわかりやすい求人を選ぶ

Webデザイナーはクリエイティブな専門職であるため、職人気質の人が多いです。こだわりが強い傾向にある発達障害者は特にその傾向があります。ただし、会社に勤務しながらずっとデザインだけだったりコーディングだけの仕事だったりしてキャリアが固定化してしまいがちで、これでは給与や待遇は大きく改善しません。

このため、障害者でもWebデザイナーとしてさらに成長したいと考えるのであれば、例えば「Webデザイナーとしてチームを引っ張っていく立場になりたい」というように、将来のスキルやポストに目標を明確に持つことが大切です。

障害者向けのWebデザイナーの求人は前述のとおり、コーディングやデザインのみの求人ばかりでWeb制作の一過程のものが中心です。一方で、将来のポストとしてWeb制作の工程管理やクライアントからのヒアリングなどデザイン以外の仕事の求人も存在します。

例えば以下は障害者採用の社員向けWeb制作会社の求人です

将来はデザインやコーディングなどの実務だけでなく、ディレクションやサイト運営全般までWeb制作全般に関わるポストを任されることがわかります。

このように将来のポストが明確な求人であれば、Webデザイナーとして長く会社に勤めることができますし、目標に向かってモチベーションを維持しながらスキルアップできます。

このため「将来はWebディレクターになりたい」というように明確な目標がある障害者は、将来のポストを明示した求人を選ぶといいです。

土日休や残業なしの求人で生活にゆとりを持つ

Webデザイナーは多忙なのが普通です。実際にクライアントの要望やWebディレクターの無理な要求に振り回され、残業が多い傾向にあります。

また制作物の仕上がりにこだわりすぎれば、際限なく時間や労力を費やします。この点、自閉スペクトラム症の発達障害者などは注意した方がいいかもしれません。

Webデザイナー本人のこだわりならば自身で自由にやっても問題ありませんが、上司のこだわりが強すぎると、相次ぐ変更による業務負担や付き合い残業を強いられることになります。

特にWebデザイナーは職人肌が多く、仕上がりに対するこだわりが強い人が多いです。そのため「いいものを作るためだ」と言われ、多少のサービス残業なら容認する風土のある会社が多いです。

そのためWebデザイナーは多忙になりがちですが、すべての会社で休日が少ないわけではありません。Webデザイナーでも土日週休2日や豊富な年次有給休暇などの求人も多数存在します。

例えば以下は、障害者向けWeb制作会社の正社員求人です。

ディレクションからコーディングまで、Web制作すべてに携わる仕事内容です。この求人の休日などは以下の通りです。

残業がなく年休が120日であり、週休土日2日制であることから休みについては充実していることが分かります。

Web制作会社によって請け負う案件の内容はまったく違うので、当然それぞれの会社で働き方は違ってきます。このため障害者採用の場合、Webデザイナーの仕事でも休日や待遇に恵まれた求人を探し出すことも可能です。

このような求人は、生活のリズムやバランスよくプライベートを充実させながら、Webデザイナーとして活躍したいと考えている障害者に適しています。

在宅勤務OKの求人で障害の負担なく働く

一方で、身体障害者や対人不安などの精神的な障害で、どうしても通勤による出社ができない障害者は多いです。このとき、Webデザイナーはパソコンがあれば場所にしばられにくい仕事なので、障害者向けの場合は在宅勤務が可能の求人が多いです。

例えば以下は、就労継続支援事業所の障害者向けWebデザイナーの正社員求人です。

この求人は、在宅で就労継続支援サービスの利用者へWeb制作の指導のほか、事業所のウェブ制作に携わる求人です。

就労継続支援とは障害者が継続的に就労できるようになるために、事業所に通所して働きながら指導や訓練を受ける福祉サービスのことです。以下は実際の様子です。

この求人の場合、事業所がクライアントから受注したものを障害者である事業所の利用者に指導しながら、いっしょに制作する仕事です。福祉サービスの一環で行われる制作なので、クライアントも制作物の品質にあまり厳しくありません。

このようにWebデザイナーの求人は仕事する場所を選ばないため、障害者向け求人に在宅勤務の求人が多いです。このためWebデザイナーの在宅勤務求人は、通勤が困難な身体障害者などに適しています。

まとめ

Webデザイナーの仕事は一般的に激務といわれており、残業や不規則な勤務が多い傾向にあります。一方で、障害者向け求人の場合、障害に配慮した在宅勤務などが多いです。

また、給与が高くても残業が多かったり、同じ仕事の繰り返しでスキルアップが望めなかったりするので、すべての好条件を満たす求人はなかなか存在しません。そのため、自分にとって譲れない条件や妥協できる条件について、時間をかけて整理することが必要です。

このように障害者がWebデザイナーで就職や転職で成功するには、自分の障害の特性と向き合い、将来どのようにしてキャリア形成をしたいのか、そのためにはどのような経験が必要なのかをよく考えながら求人を選ぶようにしましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。