障害者が就職や転職を考える時、「パソコン作業よりも体を動かす仕事がしたい」「人と関わるのが苦手」という人は多いです。また、難しい仕事に最初から挑戦するよりも、簡単な仕事で徐々に慣れていきたいと思う人もいます。

そのような障害者には、倉庫内作業の仕事が向いています。荷物を運ぶ仕事なので、デスクワークのようにずっと座っている必要はありません。また、倉庫内が職場なので、接客や電話対応、同僚とのやりとりもあまり必要ありません。

しかし、単調な作業が続くので、飽きやすい人には向いていないかもしれません。

ここでは「障害者向けの倉庫内作業の求人」「注意すべき点」を解説します。

障害者が倉庫内作業に向いている理由

倉庫内作業は荷物を扱う仕事なので、ひとりで黙々と仕事をしたい障害者には向いています。また指示通りに荷物を確認したり運んだりすればいい仕事なので誰にでもできます。このような倉庫内作業に向いている障害者は多いです。

以下の障害者は物流倉庫の求人に最適です。

  • 無理なく社会復帰しようとしている回復途上のうつ病の人
  • コミュニケーションや行動コントロールの苦手な軽度の知的障害者

またこれらの障害者の中でも特に発達障害者は以下の特徴があるので、倉庫内作業員に向いています。

  • コミュニケーションが苦手だが、作業に没頭するのが得意
  • 飽きっぽい反面、健常者には苦痛な繰り返しの単調な作業が得意
  • あいまいな指示に戸惑う反面、言われたことは丁寧にこなす
  • 空気が読むのが苦手な反面、活発に動くことが得意

倉庫内作業では仕事を同時進行で進めるマルチタスクやスムーズな人間関係をことさら求められないため、これらの障害者が不利になりません。このため健常者と同じように働けることから、障害者向けの求人も多いです。

例えば以下は、物流会社の障害者向け正社員求人例です。

この求人の仕事内容は、倉庫内で指示通り荷物の確認、運搬すればいいことがわかります。やるべき仕事がはっきりしているため、決められたとおりのことを素早くこなすことが得意な障害者には向いています。

また、仕事内容も単純でスキルが不要なので、就職転職後も早く仕事になじめます。

障害者が物流倉庫の仕事を探すなら、なぜ障害者雇用の求人がおすすめ?

物流倉庫で働きたい障害者の方は、普通の求人よりも障害者雇用の求人を選ぶ方が良いです。その理由を説明します。

一番大きな理由は、会社が障害のことをよく理解してくれることです。障害者雇用の特徴は、会社の人たちが障害について勉強をしているので、「こういうことが苦手です」「こういう助けが必要です」と言いやすい環境という点です。

また、仕事の仕方を自分に合わせてもらいやすいです。例えば、調子が悪い時は休憩を多めに取ったり、仕事の量を調整してもらったりできます。車いすを使う方には、動きやすいように通路を広くしたり、必要な道具を用意してくれたりします。

それに、長く働き続けられる可能性が高いです。会社は法律で決められた数の障害者を雇わなければならないので、障害者雇用率維持のため、正社員で障害者を雇用したり、賃金・給与、福利厚生を手厚くして障害者に合理的配慮をして大切にします。一方で普通の求人で入社すると、障害への理解が得られにくく、続けづらくなることがあります。

さらに、多くの会社には障害者の相談員がいます。仕事で困ったことがあれば、この相談員に話を聞いてもらえます。一人で悩まなくてもいいので、安心して働くことができます。

このように、障害者雇用の求人なら、会社全体であなたのことを支えてくれる体制が整っているので、長く安心して働くことができるのです。

障害者向け物流倉庫求人のメリットと種類

倉庫内作業が障害者に向いている理由はたくさんありますが、倉庫内作業はいくつかの仕事に分担されています。以下の通りです。

  • 倉庫への荷物の搬入と倉庫からの搬出作業、入出荷作業
  • 倉庫内の荷物を仕分けて所定の場所へ運ぶピッキング作業
  • 入荷、在庫管理、出荷数等管理
  • 倉庫内作業員への作業指示、勤務シフト管理

倉庫内での仕事には、荷物を倉庫に出し入れする以外にも在庫管理や荷物のチェックがあります。

荷物を運ぶ作業では、荷物を指示通りに運べばいい場合や、フォークリフトなどの機械を使って運ぶ場合など様々です。

以下で、具体的な求人をみていきます。

倉庫内軽作業は会話が苦手な障害者向き

倉庫内作業の求人の中でもっとも多いのが、人が運べる程度の荷物を運んだり、検品や梱包を行う軽作業です。この場合倉庫の管理者からの指示に従って、仕事を進めていきます。

例えば以下は、障害者向け物流会社の倉庫内軽作業の正社員求人です。

この求人では倉庫内作業なので接客、電話対応は不要です。また荷物を仕分けるピッキングのほか、商品をたたんだり梱包したりするだけの軽い作業となっています。このため、コミュニケーションに不向きな障害者に適した求人です。

倉庫内ピッキング作業は指示を手際よくこなす障害者向き

倉庫内作業には、荷物を仕分けするピッキング作業があります。ピッキングは管理者からの指示で、倉庫内に運ばれた荷物を所定の場所に運ぶ作業です。倉庫内で手にした端末で指示を受け、指示通りに荷物を運んだり、チェックしたりします。

例えば以下は、物流会社の障害者向け、ピッキング作業員の正社員求人です。

この求人では商品ラベルを見て、所定の場所に運ぶだけの商品管理の単純作業です。「このときは、こうする」というように、行うべき作業がはっきりとしているので、あいまいな指示や言い方のきつい人からの指示に戸惑いがちな精神障害者に向いています。

倉庫内荷物の在庫管理は作業全般の業務を学びたい障害者向き

倉庫内作業は、倉庫の荷物を運ぶだけの軽作業やピッキングが中心になります。しかしこれらの簡単な作業以外に管理する仕事も必要になります。そのため荷物の出入りや従業員への業務指示などを行う管理者の求人もあります。

例えば以下は、大手衣料品会社の物流センターの障害者向け正社員求人です。

この求人は物流センターで荷物を運ぶのが主な仕事であり、ピッキングなどの作業とたいして変わりませんが、それ以外に在庫管理、作業員の業務の管理の仕事もあります。そのため、物流倉庫の作業全般を学びたい障害者に適しています。

フォークリフトの運転で仕事の幅を広げたち障害者向け

倉庫内作業に必要な資格というのは、あまりありません。そのため障害者でも取り組みやすい簡単な仕事が多いのですが、人の手による運搬作業以外にもフォークリフトを使って大きな荷物を運ぶ求人も多いです。

この場合フォークリフトを運転する資格が必要となりますが、資格がなくても応募可能な求人が多いです。例えば以下は、フォークリフトを運転する倉庫内作業の障害者向け正社員求人です。

この求人では、フォークリフトを運転する資格がなくても会社負担で取得可能であることがわかります。

そのためフォークリフトは未経験でも、フォークリフトの資格を取って倉庫内の作業を幅広く手掛けたい障害者に適しています。

倉庫内作業求人の注意点

このように倉庫内作業は障害者にメリットの多い仕事ですが、メリットばかりではないので注意が必要です。

まず、倉庫内は空調設備のないケースがあります。こうした倉庫内を一日中歩き回って仕事しなければならないので体力が求められます。そのため体力が人並みでないならば、たとえやる気があってもやめておいた方がいいです。

次に求められる能力や資格がないため、たとえ正社員で就職や転職したとしても給料が低いです。障害者の中でも体力があるので、いっぱい働いていっぱい稼ぎたいと思っている人には向いていません。

例えば以下は、物流業務の障害者向け正社員求人です。

このように正社員で入社しても月収は15万4100円であり、手取りだとわずか12万円になります。これでは独身でないと生活は苦しいです。倉庫作業内の仕事は、収入が低いことをわかっておく必要があります。

また倉庫内でひとり黙々と作業をする仕事のため、チームで仕事してやりがいを感じる人には不向きです。チームでひとつの目標に向かって仕事を進める仕事ではなく、与えられた指示どおりにこなすことの方が大切だからです。そのため仕事の成果が見えづらいので、人から感謝される実感に乏しいです。

なお簡単な作業の繰り返しのため、変化のある仕事にやりがいを求める人も避けるべきです。人は退屈な仕事をばかりだと、苦痛を感じるのが普通だからです。

このように倉庫内作業はだれでもできる仕事なので、仕事の特徴や収入にデメリットがあることをきちんと理解しておく必要があります。

障害者が物流倉庫の正社員求人に応募する際の履歴書と面接対策

物流倉庫の仕事は、チームで協力する作業や、正確性や効率が求められることが多い職場です。ここでは、障害をお持ちの方が履歴書を作成し、面接で効果的にアピールする方法を解説します。

履歴書作成のポイント

志望動機は「なぜその会社で働きたいか」を具体的に伝える部分です。「物流業務に興味がある」「正確な作業が得意で、自分の強みが活かせる」といった内容に加え、企業の特色に共感していることを示しましょう。

【例文】

貴社の求人情報を拝見し、地域密着型の物流サービスに共感いたしました。私は注意欠陥障害(ADHD)を持っていますが、繰り返しの作業を集中して行うことに自信があります。これまでのアルバイト経験では、商品ピッキングの作業で高い正確性とスピードを評価されました。貴社の物流業務に携わり、効率化やチーム貢献を通じてお役に立ちたいと考えています。

障害をポジティブに表現することが大切です。ADHDの特徴を「集中力が高い」として強みにつなげます。また企業理解を示すことも必要です。 その会社の特徴や理念に触れると、説得力が増します。

【自己PRの書き方】

自己PRでは、具体的なスキルや経験を挙げましょう。物流業務では、体力やチームワーク、効率的な作業への工夫が強みとして評価されます。

【例文】

私は視覚障害を持っていますが、ピッキングリストを音声ソフトで確認し、商品を正確に仕分ける工夫をしています。前職の倉庫作業では、職場の安全基準を守りながら、チームで効率的に作業を進める力を身につけました。この経験を活かし、貴社の物流業務に貢献したいと考えています。

このように具体的な工夫や経験を入れることで、実務能力を伝えます。チームワークや職場への適応力を強調しましょう。

面接対策のポイント

面接でよく聞かれる質問と回答例をあげ、ポイントを解説します。

「なぜこの会社を選びましたか?」

【回答例】

貴社が地域物流に貢献する姿勢に共感しました。私は繰り返し作業や正確なデータ管理が得意で、この仕事で自分の特性を活かせると思います。また、長期的に物流業務の効率化やシステム運用にも挑戦したいと考えています。

「仕事で困ったときはどうしますか?」

【回答例】

以前、荷物の数量が合わないトラブルがありました。その際、上司に相談し、過去の在庫記録を一緒に確認して原因を突き止めました。周囲と協力することが重要だと学び、今後も積極的に相談して解決策を見つけたいです。

障害についての質問への対応

正直に障害の特性を伝えつつ、配慮があれば仕事を問題なく進められることをアピールしましょう。

【回答例】

私は聴覚障害があり、周囲の声が聞き取りにくい場合があります。しかし、業務の指示はメモやチャットツールでいただけると確実に対応できます。また、確認が必要な際はすぐに上司に尋ねるなど、工夫して仕事を進めています。

その他の面接マナー

  • 姿勢を正し、はっきりと答えましょう。
  • 答える際に、企業の求めるスキルや強みを意識してください。

障害者雇用で大切なのは、「自分の特性を正直に伝え、仕事にどう活かせるかを明確にする」ことです。事前準備をしっかり行い、自信を持って面接に臨みましょう。

転職活動は転職エージェントを併用しよう

物流倉庫での就職・転職を考える際、障害者雇用枠での応募をお勧めしますが、物流倉庫での仕事には、商品の仕分け、梱包、検品、フォークリフト作業など、様々な業務があります。

障害者雇用枠では、あなたの障害特性に合わせて業務を選択できる可能性が高くなります。

応募方法として、ハローワークの利用は基本となります。ハローワークでは障害者向けの求人が豊富にあり、専門の窓口で相談できます。しかし、求人情報だけでは分からない、実際の職場環境や配慮の詳細を知るには限界があります。

そこで、障害者専門の転職エージェントの併用をお勧めします。転職エージェントでは、以下のようなメリットがあるからです。

・物流倉庫での具体的な業務内容や必要な体力の目安を詳しく説明してもらえます
・実際に障害者が働いている職場の様子を聞くことができます
・障害者採用実績のある企業を紹介してもらえます
面接対策など転職活動のサポートを受けられます

ハローワークと転職エージェントを併用することで、より多くの求人情報にアクセスでき、自分に合った職場を見つけやすくなります。ただし、転職エージェントのサービス内容は会社によって異なりますので、利用前に条件をよく確認し、複数のエージェントに登録することをお勧めします。

まとめ

これまで物流倉庫の求人は、障害者にとってどのような求人があるのかを解説しました。

物流倉庫の作業は障害者の場合、指示に従ってひとりでできる単純で簡単な作業の求人が多いです。そのため、周りへの気遣いに疲れがちな障害者の就職転職には適しています。

ただし誰でもできる簡単な仕事の分、給料が安いです。また体力が必要というデメリットもあります。

これらのメリット、デメリットをきちんと理解したうえで「自分にはどんな適性があるのか」「将来どのような働き方をしていきたいのか」をよく考えて物流倉庫へ就職転職しましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。