障害のある方が転職を考えるとき、多くの方が不安に思うのが「年齢」です。
「30代ならまだチャンスはあるのか?」
「40代だと厳しいのでは?」
「50代・中年になると正社員は無理なのでは?」
といった声をよく聞きます。
しかし、結論から言えば 年齢によって採用の難易度や戦略は変わりますが、正社員雇用のチャンスは十分にあります。
その背景には、次のような動きがあります。
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法定雇用率の引き上げ
民間企業の障害者雇用率は、年々引き上げられています。企業にはより多くの障害者を雇用する義務が課されており、人材ニーズは今後も続きます。 -
雇用者数の増加と企業の対応不足
障害者の雇用者数は 年々増加しています。しかし、法定雇用率を達成している企業は 半数程度 にとどまっています。つまり「採用したくても採用できていない企業」が半数以上あるのです。 -
実際の就職実績の伸び
ハローワークを通じた障害者の就職件数も年を追うごとに過去最高を更新しています。就職率は 半数程度、6か月定着率も8割強というデータが出ています。
このように、企業は「採用したい」側にあり、求職者側に追い風が吹いているのが現状です。
ただし、年代によって強みや課題が異なるため、採用されやすい職種やキャリアの描き方も変わってきます。
30代は「伸びしろ」と「スキル習得」、40代は「経験と安定感」、50代は「実務知と継続性」。それぞれの年代に合わせた戦略をとることで、正社員として安定した働き方を実現できます。
次章からは、30代・40代・50代それぞれの転職傾向と対策、成功事例を具体的に解説していきます。
30代障害者の転職傾向と戦略
30代になると、仕事にも人生にも「現実」が見えてくる。
「このままでいいのか」「もう少し安定したい」――そんな気持ちを抱く人は少なくありません。
採用担当者に話を聞いたとき、ある言葉が印象に残りました。30代は“勢い”より“積み重ね”を見ます。
若さよりも、これまで何を経験し、どう成長してきたかが問われるのです。
障害者雇用でも、企業は長く、安心して働ける人を求めています。
30代は、まだ成長できる柔軟さがありながら、信頼を得やすい年代。
そのバランスをどう生かすかが、転職成功の分かれ道になります。
30代障害者の強み・弱み
【強み】
・社会人としてのマナーや仕事の基本が身についている
・実務経験を通して「自分の得意・不得意」が分かっている
・若手よりも「任せても安心」と思われやすい
【弱み】
・未経験分野への挑戦はやや不利
・即戦力を求められる分、スキル不足が目立ちやすい
・障害への配慮が“制限”と見られることもある
障害者雇用で働く30代の同僚の多くが、「本当は新しいことに挑戦したいけど、自信がない」と話していました。
けれど転職に成功している人ほど、まずは「自分の経験をどう活かせるか」を丁寧に見つめ直していました。
30代におすすめのキャリア戦略
【前職の経験を活かす】
30代の転職は、ゼロからではなく“再構築”。
「やりたいこと」よりも「できることをどう広げるか」。
事務職や営業職など、同じ職種で環境を変えて成功した人が多いのはそのためです。
【配慮を具体的に伝える】
面接で「配慮があれば成果を出せる」と伝えることは、弱点ではありません。
たとえば、
「静かな環境なら集中できる」
「残業が少なければ安定して働ける」
こうした具体的な言葉は、企業に安心感を与えます。
例えば静かな職場の求人を望むのであれば障害者雇用であれば多数存在します。以下は、事務職の障害者雇用求人です。

電話対応のない事務職の求人です。精神障害者には電話対応が苦手な人は多いです。一方で、もくもくとした作業ならば得意だという人は少なくありません。
こうした求人であれば、働き方に対する配慮を遠慮せず申し出ることができます。
30代障害者の転職成功体験談(同僚と知人の例)
障害を抱えて転職を考えるとき、誰もが一度は不安になります。
「年齢的にもう遅いのでは…」「ブランクがあるから難しいかも」と。
でも、私の身近には、その壁を乗り越えた30代がいます。
【同僚の例(発達障害・30代前半)】
一般企業に新卒入社したものの、環境が合わず転職を決意。
障害者雇用専門のエージェントを利用する中で、彼は気づきました。
「自分は人と話すのが苦手だけど、数字を扱う仕事なら集中できる」。
前職で培ったデータ入力スキルを活かし、事務職で正社員として採用されました。
「30代でやり直すのは不安だったけど、自分の得意を認めてもらえた」と笑顔で話していました。
以下は私の職場の様子です。データ入力が主な仕事です。

こうした静かな環境で黙々と作業することが好きな障害者には、適した職場といえます。
【知人の例(精神障害・30代後半)】
医療系資格を持ちながら、ブランクが長く再就職に踏み出せずにいた知人。
面接では正直に、
「最初は短時間勤務から始めたい」
と伝えました。
その結果、柔軟に対応してくれる職場と出会い、今では安定して働き続けています。
「無理せず働ける環境こそ、長く続ける力になる」と語っていました。
事例から学んだこと
2人に共通していたのは、完璧を目指さないという姿勢でした。
年齢やブランクよりも大切なのは、
「自分の経験をどう生かすか」を見つめること。
障害があっても、キャリアは止まりません。
焦らず、比べず、自分のペースで進めばいい。
それを教えてくれたのが、彼ら30代の転職者たちでした。
40代障害者の転職傾向と戦略
40代の転職は、誰にとっても大きな決断です。
特に障害を抱えている場合、「年齢の壁」や「体力面の不安」を感じる人も少なくありません。私自身、障害者雇用で転職を経験したとき、40代の転職状況についても徹底的に調べました。
求人票を見ながら思ったのは、「経験がある人ほど、次のチャンスをつかめる」という現実でした。
40代は企業から即戦力としての中核人材を期待される年代です。
一方で、未経験の仕事に挑戦するのは30代よりも難しく、ブランクがあると慎重に見られる傾向もあります。
とはいえ、経理、医療事務、システム管理などの職種では、今もなお40代のニーズは高いです。
実際に求人を見ていると、「これまでの経験をどう活かすか」が採用の分かれ道になっていると強く感じます。
40代障害者の強みと弱み
■ 強み
・マネジメント経験やリーダーシップを活かせる
・専門性や資格を持っているケースが多い
・長期的に安定して働ける人材として期待されやすい
■ 弱み
・体力や柔軟性を若手と比較されることがある
・ブランクが長いと復帰が難しい
・未経験転職のハードルが高い
例えば以下は、建設会社の障害者雇用正社員求人です。

シニアやミドルでも応募可能な求人ですが、管理経験を重視した求人であることが分かります。
40歳代になれば、障害者雇用であってもこうした人事管理経験を持つ人が重宝される傾向にあるようです。
40代におすすめのキャリア戦略
① 専門性をアピールする
経理や医療事務、システム管理など、専門スキルを持つ人は強みを活かしやすいです。 資格や実務経験を整理して伝えることで、即戦力としての評価を受けやすくなります。
② 管理・指導経験を前面に出す
後輩指導やチーム運営の経験は、企業にとって大きな魅力です。
障害があっても、「チームを支える存在になれる」ことを伝えると印象が変わります。
③ 障害特性と働き方を明確にする
「どんな配慮があれば安定して働けるか」を具体的に話せる人は信頼されやすいです。
生活リズムが整っている40代だからこそ、安定した働き方の提案がしやすい年代です。
40代障害者の転職成功事例
◆ 経理経験を活かして正社員へ(身体障害・40代前半)
私の同僚で40代前半の方は、身体障害を抱えながらも前職の経理経験を武器に転職しました。 面接では「今までの経験を活かしたい」という姿勢をしっかり伝え、経理部門の正社員として採用されました。 本人も「経験がそのまま評価された」と話しており、長年の努力が報われた瞬間でした。
◆ 長いブランクからの再出発(精神障害・40代後半)
別の知人は40代後半で精神障害を抱え、長いブランクがありました。 転職エージェントの支援を受け、まずは短時間勤務から事務職に復帰。 少しずつ勤務時間を増やし、今ではフルタイムで安定して働いています。 彼は「焦らず、自分のペースで戻れたのがよかった」と振り返っていました。
40代はまだまだチャンスがある
40代の障害者転職では、経験・資格・マネジメント力が最大の強みです。 若手と比べると求人は少ないかもしれません。
しかし、経験がなくても「自分の持ち味を理解し、それを活かすこと」ができれば、十分にチャンスはあります。
例えば以下は、食品会社の障害者雇用正社員求人です。

未経験者歓迎、年齢不問の配送ドライバー求人です。普通免許があれば、だれでも応募できます。
経験の積み重ねに自信がなければ、こうした職場で様々な年代の人に交じって仕事をするのもいい選択です。
年齢や障害は、決してハンデではありません。
むしろ、積み重ねた経験を土台に新しい働き方を見つけられる年代だと思います。
転職は、誰かに評価されるための挑戦ではなく、自分らしく働ける場所を探す旅です。
その一歩を、恐れずに踏み出してほしいと思います。
50代障害者の転職傾向と戦略
50代の転職市場の特徴
50代になると求人は大幅に減り、正社員での採用は難易度が上がります。
私は実際に求人動向を調べていて、「50代=非正規が中心」という現実を何度も目にしました。
しかし一方で、経験や専門性を強みにすれば、正社員採用につながるケースもあります。
特に専門職や長年の実務スキルを必要とするポジションでは、50代の強みが評価されやすいです。
50代障害者の強み・弱み
- 強み
- 長年の経験から得た専門知識やスキル
- 人脈や業界内の信頼がある
- 業務に対する責任感と安定感がある
- 弱み
- 体力的な不安が採用側に懸念されやすい
- 新しい技術やシステムへの適応に時間がかかる場合がある
- 求人の数自体が少なく選択肢が限られる
私は50代で転職を経験した方の話を聞いたことがありますが。
「求人が少なく心が折れそうになった」と話す一方で、「今までの経験を評価してもらえたときの喜びは格別だった」とも語っていました。
つまり、弱みを受け止めつつ、強みを前に出すことが大切だと思います。
50代におすすめのキャリア戦略
- 経験を活かせる職種を狙う
経理、人事、営業、医療事務、福祉関連など、経験がそのまま活かせる分野は採用の可能性があります。
私が見た求人データでも「経験者歓迎」の文字が多いのは50代向けでした。 - スキルのアップデート
50代でもITスキルや資格を取得して成功する人はいます。
私は実際に「MOS資格を取って事務職に復帰した50代」の事例を見て、自分も学び続ける大切さを痛感しました。 - 嘱託・契約社員からスタート
ただ、経験や資格をこれから習得するのは難しいですよね。そこで正社員にこだわりすぎず、まずは契約社員やパートから入り、その後正社員登用を狙う方法もあります。
私は「最初から正社員」ではなく「段階的に正社員」を目指すのが現実的だと感じます。
例えば以下は、建設会社のシニア向け障害者雇用正社員求人です。

このように、慣れるまでは無理せず契約社員からスタートできる場合もあります。
50代だからといって焦らず、縛りの緩やかな働き方からはじめることも良いと思います。
50代障害者の転職成功事例
- Eさん(精神障害・50代後半)
長期療養を経て、障害者雇用枠の事務職に採用。
最初は週3日の短時間勤務から始め、徐々に勤務日数を増やし正社員登用に成功。
私は「無理せずステップアップする道もある」と学ばされました。 - Fさん(身体障害・50代前半)
製造業での長年の経験を評価され、同業他社に正社員採用。
「年齢的に厳しいと思ったが、経験を求める企業は必ずある」と話していました。
私はこの話を読んで「経験は財産だ」と強く思いました。
例えば以下は、私の自宅近くの障害者雇用をしている食品工場の様子です。

無理なく働くということを目撃とするのであれば、こうした機械化された清潔な職場で働くのもいいアイデアです。
50代障害者におすすめの転職エージェント
50代の転職は求人が少ないからこそ、エージェントのサポートが重要です。
50代の障害者転職は「経験を活かす」「段階的に正社員を目指す」「スキルを更新する」の3つが成功のカギです。
私は数多くの事例を見てきて、年齢が不利に見えても経験を武器にすればまだまだ活躍の場はあると実感しています。
ジョブコーチによる職場定着支援
無事に転職先が決まっても、心の中に残るのは「ここでちゃんと働き続けられるだろうか…」という不安です。
実際に私自身も、転職して数週間後には「仕事を覚えられるだろうか」「周りとうまくやっていけるだろうか」と悩んでいました。
そんな時に支えになったのが、ジョブコーチによる職場定着支援です。
ジョブコーチとは?
ジョブコーチは、就職した人が職場にスムーズに馴染めるよう、職場と本人の間に立って支援してくれる専門員です。
単なる相談役ではなく、職場での実際の困りごとを一緒に解決してくれる伴走者のような存在です。
私が受けたジョブコーチ支援
私は仕事でつまずいたとき、職場のジョブコーチに相談しました。
その結果、上司や同僚にうまく伝えられなかった悩みを整理してもらい、代わりに説明してもらえたことで、安心して仕事を続けられました。
一人で抱え込んでいたら辞めていたかもしれませんが、第三者のサポートがあったことで「続けられる自信」に変わりました。
知人の体験
私の知人も転職直後に人間関係で悩んでいましたが、ジョブコーチに相談することで職場内のコミュニケーションが改善し、今では障害者雇用担当のリーダー的な役割を担っています。
「支援を受けて職場に馴染めたから、長く働けている」と本人も話しています。
ジョブコーチ支援で受けられるサポート
ジョブコーチによる職場定着支援では、次のようなサポートを受けられます。
- 仕事の手順や進め方を一緒に確認してくれる
- 職場の人間関係を円滑にするために間に入ってくれる
- 不安やストレスを感じたときに相談できる
私自身、この支援のおかげで「自分もやっていける」という安心感を持てました。
転職成功のために本当に大事なこと
転職活動をしていると「条件の良さ」ばかりに目がいきがちです。
私も最初は給与や待遇だけで会社を選び、結果として職場の雰囲気やサポート体制を軽視してしまい、すぐに不安やストレスを抱えた経験があります。
そこから学んだのは、転職は「入ること」よりも「続けられること」が大事だということです。
安心して働ける環境かどうか、支えてくれる制度や人がいるかどうかを見極めることこそが、長く働き続けるための鍵になります。
転職活動で意識すべきこと
求人票の条件だけでなく、次の点も意識することをおすすめします。
- 自分の特性に合った職場環境かどうか
- ジョブコーチや職場定着支援などの制度が利用できるか
- 実際に働いている人の声や評判を確認できるか
ジョブコーチが働く障害者の支えとなる
私はジョブコーチや職場定着支援を利用することで、「ここなら頑張れる」と思えるようになりました。
一人で不安を抱え込むのではなく、制度や専門家をうまく活用することで、働くことがぐっと楽になります。
転職を成功させたいなら、「どうすれば自分は働き続けられるか」を軸に考えることが大切です。
条件に振り回されるのではなく、自分に合った環境を選ぶことで、安心して長く働ける未来につながります。
参考リンク
まとめ:年代別障害者転職のポイント
ここまで、30代・40代・50代の障害者の転職傾向と戦略について解説してきました。求人情報や実際の事例を見ても、年代ごとに転職のアプローチは大きく変わると感じます。
30代は経験よりもポテンシャルや適応力が重視され、未経験の分野にも挑戦できる姿勢が大切です。40代はこれまでの経験や資格を強みとしてどう伝えるかがカギになり、50代は求人が少ない中でも専門性や安定感が評価され、段階的な働き方とスキル更新が現実的な戦略になります。
正社員として働くメリットも見逃せません。安定した収入や保障だけでなく、キャリアを積みやすく、経験が評価されやすいのも大きな魅力です。私自身も正社員として働くことで安心感や自己肯定感が高まりました。障害者雇用では、条件だけでなく「長く働ける環境」を選ぶことが何より大切だと感じます。
支援制度や転職エージェントを活用すれば、不安やリスクを減らして安心して働ける環境を見つけやすくなります。年齢や障害の特性は弱みではなく、その人らしい強みにもなり得ます。
転職の成功とは、完璧な職場を探すことではなく、「自分が安心して働き続けられる場所」を見つけることです。転職は大きな挑戦ですが、一人で悩まず支援を頼りにしながら、自分のペースで一歩ずつ進んでみてください。あなたの経験や力を必要としている職場は、必ずどこかにあります。

障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。
