車の運転が好きで、一人で仕事をしたい障害者もたくさんいます。特に「コミュ障」と言われる人、ASDやADHDの発達障害の人、統合失調症やうつ病の精神障害の人、会話が苦手な人に向いています。また、難聴などの聴覚障害者にとっても、会話の負担が少ないことは重要です。長時間車を運転できる人には、物流や配送など運送業のドライバーの仕事がおすすめです。ドライバーの仕事は難しい知識がなくてもでき、運転席で一人で仕事ができるので気楽です。運転免許さえあれば、初心者でも健康な人と同じように働けます。
身体障害者でもできる運転の仕事として、ドライバーの仕事は有力な選択肢の一つです。知的障害者でも、知識習得の負担が少ない求人なら適しています。しかし、ドライバーの仕事には大変なこともあります。不規則な時間に働いたり、体を使う仕事なので疲れたりすることがあります。
これから、障害者手帳を持つ人がドライバーの障害者雇用で仕事を探すときに気をつけることを説明します。どんな人に向いているのか、どんな求人を選べば良いのかについて、わかりやすく解説します。
もくじ
障害者がドライバーに向いている理由
障害のある人の中には、自分の行動や言葉が他の人にどう思われるかを想像するのが苦手な人がいます。そのため、人との関係でトラブルを起こしやすい人もいます。
逆に、周りの人の言動に敏感すぎて、すぐに疲れてしまう人もいます。
これらの人たちは、事務の仕事や営業の仕事が苦手なことがあります。デスクワークや人への気遣いが多い仕事に疲れてしまうため精神安定剤が手放せないという人も多いです。
でも、人との関わりが少ない仕事はあまり多くありません。
そんな中で、ドライバーの仕事は違います。ほとんどの時間を運転席で過ごすので、職場での人間関係で疲れやすい障害のある人に向いています。
人との関わりが苦手な障害のある人にとって、ドライバーの仕事は良い選択肢かもしれません。
免許証さえあれば障害者でも応募可能な求人が多い
多くの障害のある人は、ドライバーや運転手の仕事というと、大きなトラック運転手のように、大型のトラックを運転する経験のある人だけがなれると思っています。そのため、経験のない人はドライバーの仕事を最初からあきらめてしまうことがよくあります。
確かに、大型トラックの免許を持っていると、もっと多くの仕事を選べます。特に、荷物を運ぶ仕事では役立ちます。
でも、普通の車の免許だけでも応募できるドライバーの仕事はたくさんあります。障害のある人向けの求人でも、普通免許だけで大丈夫な仕事がたくさんあるのです。
だから、ドライバーの仕事に興味がある障害のある人は、経験がなくても、普通免許さえあれば挑戦する価値があります。
例えば以下は、建材会社の配送ドライバーの障害者向け正社員求人です。
この求人では普通の車の運転免許があれば、応募できます。大きなトラックを運転する特別な免許は必要ありません。障害のある人でも、車の運転の仕事はたくさんあるんです。
「いままでニートや引きこもりで、社会経験が乏しい」と考えている人や「スキルが身につかず30代になってしまった」という人であっても、ゆっくり運転に慣れていきたい障害のある人には、荷物を配達する仕事から始めるのがおすすめです。この仕事なら、少しずつ運転の経験を積んでいけます。
力仕事が苦手ならタクシードライバー
障害のある人たちの中には、車の運転は好きだけど、重い荷物を運ぶのは苦手という人がたくさんいます。また、障害があっても、お客さんと話すことが得意な人や、むしろおしゃべりが大好きな人もいます。
こういう人たちにとっては、タクシーの運転手の仕事がぴったりかもしれません。今まで経験がなくても、チャレンジする価値がありそうですね。
タクシードライバーも健常者と同じように仕事できるので、障害者向け求人は多いです。タクシードライバーは「普通自動車二種免許」が必要ですが、未経験者でも応募できるように会社負担で二種免許を取らせてくれる求人が多いです。
例えば以下は、障がい者採用のタクシー会社のドライバーの正社員求人です。
この求人では二種免許取得まで研修を受けることができることがわかります。そのためタクシードライバーであれば、たとえ二種免許を持っていなくても、誰でも応募できます。
人との付き合いが苦手な障害者は多いですが、客とのとりとめもない話など最低限のコミュニケーションが取れれば問題ありません。
このためタクシードライバーは、体力に自信がなかったり大型車の運転が嫌だったりする障害者に適しています。
ドライバー求人は障害者向けでも高収入が多い
障害者向けの求人は、障害のせいで健常者と同じ仕事ができない分、収入は低くなるのが普通です。一方ドライバーであれば、未経験の障害者であっても健常者と同じように仕事できます。そのため体力が必要な仕事ですが、給料が高いというメリットがあります。
例えば以下は、運送・物流会社の集配ドライバーの障害者向け未経験者歓迎の正社員求人です。
この求人は、月給が24万3000円からとなっています。障害者で最初からこのような高収入の求人は、専門職や技術職でなければなかなかありません。
このようにドライバーの求人は一般枠だけでなく障害者向けでもたくさん存在しているので、収入の高い求人は多いです。
障害者向けドライバー求人の種類
障害者向けのドライバーの求人は、「人を乗せるのか荷物を載せるのかによって変わる」「体を使う仕事なのか」「運転すればいいだけの仕事か」によってかなりの違いがあります。
また女性でも簡単にできる送迎ドライバーもあれば、頻繁に体を使って重い荷物を配送して回ることもあります。そして長距離トラックのように、たくさんの荷物を何日もかけて運ぶドライバーもあります。
ここでは、おもなドライバーの違いを求人ごとに解説し、障害者にとってどのようなドライバー求人が適しているか解説します。
体力不要の送迎ドライバーとして安定して働く
ドライバーとして働こうと考えても、未経験で体力に自信のない障害者は多いです。このような場合は、送迎ドライバーの求人を選ぶといいです。
例えば以下は、大手調剤薬局の薬剤師送迎ドライバーの障害者向け正社員求人です。
この求人は、社内の送迎スタッフとして薬剤師の服薬指導のための送迎が仕事です。仕事内容が送迎に限定されているため、必要な資格も運転免許証以外ありません。
このような求人であれば、力仕事が苦手な障害者に適しています。
軽や普通トラックの配送ドライバーとして無理なく働く
ドライバー未経験の障害者の場合、大型トラックでハードに働くよりも、最初は小さな自動車で無理なく働きたいと考える障害者は多いです。そのような障害者は、普通トラックや軽トラックなどで、無理なく仕事できる求人を選ぶといいです。
例えば以下は、運送会社の障害者向け正社員求人です。
この求人では、配送に使う車が軽ワンボックスなので、トラックの運転が未経験の障害者に適しています。
このように「配送の仕事がしたい」と考えていても最初から大型車の運転に自信のある障害者は少ないため、こうした小型の車でドライバーとして慣れていくといいです。
集配の中型トラックドライバーで求人の幅を広げる
ただ軽や普通トラックでは多くの荷物を運べないため、障害者向けのドライバー求人は多くありません。一方準中型トラックを中型トラックによる集配ドライバーの求人は多いです。
ただ集配は荷物の積み下ろしが多いので体力を使うし、顧客の要望に合わせて荷物を運ぶので不規則な勤務が多いです。しかし一方で定時勤務開始、定時終了の固定勤務時間など条件のよい求人もあります。
中型自動車免許については、免許の条件欄が「中型8未満限定」になっている障害者は多いです。そのため以下のような運送会社の障害者向け中型貨物の正社員ドライバー求人に応募できます。
この求人では8トン未満の中型免許を所持する障害者が、固定時間制のドライバーとして応募できます。また月給が25万円からとなっており、高いです。
このような求人は体力が必要ですが、高収入を得たい障害者に適しています。
大型トラック運転手で高収入を得る
大型自動車の運転手の求人は収入が高いため、大型のトラックドライバーとして高収入を得たいと考える障害者は多いです。
一方経験者や大型免許がなければドライバー求人に応募できないと考え、あきらめる障害者がいます。しかし大型免許がなくても、未経験で求人募集している上、入社後に会社が大型免許取得の支援をしてくれる求人は多いです。
例えば以下は、運送会社の未経験の障害者でも応募可能なトラック運転手の求人です。
この求人では、経験がなくても、大型免許を持っていない障害者の方も、入社後に会社の制度を使って大型免許を取得できます。また、初めから月給32万円がもらえるため、障害者の方が応募できる求人としてはかなり高収入です。
そのため、高収入の大型トラックのドライバーにあこがれている障害者の方にはぴったりの求人です。
さらに、このように免許を取るのを助けてくれる求人は、バス運転手などのバス会社にも多くあります。障害者の方がドライバーとして転職や就職を考えるときには、このような条件の求人を探してみると良いでしょう。
高収入であるドライバー求人の注意点
このようにドライバーの求人は、未経験の障害者雇用にもかかわらず高収入が多いです。またひとりで段取りを決めて仕事ができるので気楽でやりがいがあります。しかし同僚と手分けできないため、高収入のドライバー求人には以下のようなデメリットもあります。
- 休みが不定期で残業が多い
- 体力が必要
- シフト制の不規則勤務
ドライバーは顧客の要望に合わせて動く仕事なので、仕事の時間が不定期になりがちです。そのため時間外勤務や早朝深夜の勤務などが他の業種と比べて多いです。
例えば以下は、運送会社の障害者でも応募可能なドライバーの正社員求人です。
この求人は月収が初めから24万3000円からとなっており、かなり高いことがわかります。ただ休日が日曜日以外は不規則であり、連休で取れないのでプライベートの予定が少し立てづらいです。以下は同じ求人の続きです。
勤務開始時間が午前4時であり、運行スケジュールによって勤務時間が変わる変則勤務であることがわかります。この場合、生活リズムが整いにくいので、心身に負担になる可能性があります。
特にパニック障害など心身にかかるストレスによって運転そのものが危険になる場合は、こうした求人は避けるべきでしょう。
このように高収入な求人にはそれなりの理由があるので、デメリットを踏まえたうえで注意して求人を選ぶべきです。
ドライバー面接対策:障害者向け自己PR・志望動機例
転職活動において、自己PRや志望動機は特に重要な要素です。障害のある方が応募する際には、自身の特性を前向きに捉え、強みとして活かすことがポイントになります。
自己PR
自己PRでは、次の3つの要素を含めることが大切です。
- 現在の状況を正直に伝える
- 仕事に対する意欲を示す
- 自分の強みと仕事の関連性を説明する
こうした要素を踏まえると、以下のような例文になります。
精神的な疾患の経験はありますが、現在は治療により安定しており、規則正しい生活を送っています。配送業務は、一人で責任を持って業務に取り組むことができ、自分のペースで仕事を進められる点が魅力です。過去の経験から、自己管理の重要性を深く理解しており、貴社の配送業務に貢献したいと考えています。 |
志望動機
志望動機では、以下の要素を含めると効果的です。
- 具体的な実績や経験
- 障害への対応方法
- 今後の意気込み
こうした要素を踏まえると、以下のような例文になります。
下肢に障害がありながらも、安全運転を心がけ、無事故・無違反で長年運転を続けてきました。身体特性を理解した上で、補助器具を有効活用し、荷物の取り扱いも効率的に行えます。障害があるからこそ、より安全で正確な業務遂行にこだわり、お客様の信頼に応えたいと考えています。 |
ドライバー未経験者の自己PRと志望動機
経験者の場合は、次の点を強調すると良いでしょう
- 学ぶ意欲
- 日常生活での関連する経験
- 障害を克服するために身につけた能力
こうした要素を踏まえ自己PRは、以下のような例文になります。
配送ドライバーの経験はありませんが、日々の運転を通して安全運転の意識を常に持ち、周囲への配慮を心がけています。障害があることで、計画性や慎重性を養い、物事を着実にこなすことを得意としています。これらの経験とスキルを活かし、貴社の配送業務に貢献したいと考えています。 |
また志望動機は、以下のような例文になります。
貴社が障害者雇用に力を入れていること、特にしっかりした研修があることに魅力を感じて応募しました。私は知的障害がありますが、一度覚えたことを忘れない強みがあります。配送のルートや荷物の積み方をしっかり覚え、安全運転を守りながら、お客様にも丁寧に対応したいと思っています。未経験ですが、貴社のサポートの中で少しずつ成長し、物流ドライバーとして頑張りたいです。 |
これらの例文は、あくまでも参考です。自分の状況や経験に合わせて、言葉を選び、アレンジすることが大切です。面接では、誠実さと前向きな姿勢を伝えることを心がけましょう。
障害者は障害者専門の転職エージェントを活用しよう
転職活動は簡単ではありませんが、専門の転職エージェントを利用することで、大きな助けになります。以下に、その理由をわかりやすく説明します。
- 専門的な理解と経験 エージェントは、あなたの障害についてよく理解しており、適切な職種や配慮をアドバイスしてくれます。
- カスタマイズされた求人紹介 あなたの障害に合った仕事を見つけ、あなたに合った合理的配慮がある職場を紹介してくれます。
- 雇用主との橋渡し エージェントは、あなたの能力を雇用主に伝え、職場環境の調整を交渉してくれます。
- 職場環境の確認 エージェントは、障害に配慮した職場環境が整っているか確認してくれます。
- 面接対策と自己アピールの支援 障害を説明し、自分の強みをアピールする方法を教えてくれます。
- 長期的キャリアサポート 就職後も職場での問題解決やキャリア相談をサポートしてくれます。
エージェントの利用方法
- オンラインで簡単に登録
- 障害や希望する仕事について面談
- 障害に配慮した求人の紹介
- 応募書類作成と面接対策
- 就職後のフォローアップ
タクシードライバーや運送配送ドライバーとして働きたい障害者の方は、専門のエージェントを利用すると、自分に合った仕事を見つけやすくなります。ハローワークと一緒に利用するのも良いでしょう。また、複数のエージェントに登録して、自分に合ったものを見つけることも大切です。そうすれば、転職がうまくいきやすくなります。
障害者の方でも、専門の支援を受けることで、安心して新しい仕事に挑戦できます。ぜひ、エージェントを利用してみてください。
まとめ
ここまで障害者が未経験でドライバーとして就職転職するにあたり、ドライバーにはどのような職種があり、どのような求人を選んでいくべきかを解説しました。
ドライバーは専門的な知識が必要なく、ひとり気ままに仕事が進められる仕事であり、高収入の求人が多いというメリットがあります。しかしその反面、体力的にハードだったり変則的な勤務だったりといったデメリットがあります。
ドライバーの職種は様々です。そのため障害者が未経験でドライバーを目指す場合「自分にはどのような特性があるのか」「どのような求人ならやっていけるのか」よく考えながら就職転職を成功させましょう。
障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。