就職や転職をしようとするとき「人間関係がわずらわしい」「通勤が困難」といって、なかなか就職や転職に踏み出せない障害者は多いです。このとき障害者に限らず多くの人が「自宅で仕事できたらどんなにいいだろう」と考え、在宅勤務の求人を探します。
ただし在宅勤務の就職や転職というのは、主婦が空いた時間にやっていた昔ながらの内職とはまったく違います。障害者だからといって、誰でもできる単純作業の在宅ワークはあまりありません。
しかし条件を満たせば、障害者であっても在宅にて働くことができます。
ここでは実際の在宅勤務の求人を確認し「どのような障害者がどのような求人に適しているか」「どのようにして在宅勤務で就職転職していけばいいのか」について解説していきます。
もくじ
障害者は在宅勤務に向いている
在宅勤務の求人は、自宅でネット環境とパソコンがあれば 誰でも簡単に仕事に取り組めます。
自宅で仕事ができるため対人関係に気を使わなくて済み、自由な時間が増えるため障害者にとって以下のような多くのメリットがあります。
- コピーや茶出しなど雑用が入らないので、自分の仕事に没頭できる
- 仕事の進め方を自分で決められる
- 業務指示や課題が明確
- 人間関係に惑わされない
特にプログラミングなどパソコンスキルが中心の仕事であれば 、毎日出社しなくてもメールやデータの送受信だけで仕事できます。
また在宅ワークに切り替えた後「不安があったけど、思い切って在宅にしてよかった」「意外と会社にいなくても仕事ってやっていけるんだということが分かった」「職場の同僚とほどよい距離が取れて快適」という障害者は多いです。
このように在宅就労には実際にやってみて気が付くメリットが多く、仕事の満足度が高いです。特に対人不安を克服できず、なかなか就職や転職に踏み出せない不安障害やうつ病の人には適しています。
障害者求人の在宅勤務にはどのようなものがあるのか
在宅勤務の障害者向け求人には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。特に社会人経験が未熟な障害者にとっては、経験や資格がどの程度必要なのかわからないのが普通です。
在宅勤務の求人の職種は様々ですが、おもなものは以下の通りです。
- プログラマーやシステムエンジニア
- データ入力やシステム入力などが中心の事務職
- ヘルプデスクや問い合わせ対応オペレーター
- リモートワークの基盤が整っているIT関連企業
障害者でもパソコンやネット環境さえあれば、十分やっていける仕事ばかりであることがわかります。また資格や経験がなくてもできそうな職種もあります。
ただし同じ在宅ワークでも、求人によって内容がかなり変わります。ここでは具体的な在宅勤務の内容について確認していきます。
在宅勤務でも週数回は出社が必要な場合が多い
在宅勤務を採用している会社の多くは、本来通勤型の勤務です。このような会社が在宅勤務を採用した経緯は、在宅で可能な業務を切り分けて少しずつ移行していったものです。
このため仕事を完全リモート化している会社は少なく、上司の決裁印が必要だったり、会社に常設のパソコンにしかつながっていないシステムのデータ入力作業がある場合などは出社するのが普通です。
在宅勤務の障害者向け求人でも、大半は週に数回は出社が必要となっています。例えば以下は、障害者向け在宅勤務の正社員求人です。
仕事内容は郵便発送や資料作り、データ入力などであることから在宅で仕事ができますが、週1回程度出勤が必要であることがわかります。
このように在宅勤務の求人といっても多くの会社は完全リモート化していないため、在宅勤務の求人でも通常は出社もしなければならないことを理解しておく必要があります。
完全在宅勤務の障害者求人などあるのか
それでは出社の必要がない、完全在宅勤務の障害者向け求人はないのでしょうか。
完全在宅勤務の障害者向け求人もありますが、ハローワークや求人サイトをみても少ないです。もともとリモートによる仕事が可能な業務は、コストの掛からない外注にまわされており、自社の従業員でなければならない業務は限られているからです。
完全在宅勤務は出社の必要がないため、仕事の成果物はもちろん勤務開始連絡、業務報告、勤務終了報告すべてをリモートで行います。全国どこにいても仕事はできますが、求人は限られます。そうした在宅勤務の中でも、完全在宅勤務の主な職種は以下の通りです。
- プログラミングやグラフィックデザイン
- データ入力作業
- 電話調査やセールス
- 電話やチャットによる製品の不具合や修理の問い合わせ対応
完全在宅勤務の場合、終日パソコンで作業に没頭する仕事か、自宅で問い合わせに電話やチャットで対応する仕事がほとんどです。
例えば以下は、障害者でも応募可能な問い合わせ対応の完全在宅勤務正社員求人です。
この求人はセットアップがうまくできない個人ユーザーからの問い合わせに対して、電話やパソコンのメールでやりとりするものです。いつ問い合わせが自分のところに回ってくるかわからないので、在宅勤務中は常に電話対応できる状態にしていなければなりません。
ただし未経験でも応募可能なため完全在宅勤務を経験したい障害者や、通勤が難しくても電話などでの会話が普通にできる身体障害者には適しています。
無資格未経験でも応募可能な在宅勤務障害者求人
一方在宅勤務をしたくても社会経験が浅く資格もないため、在宅勤務をあきらめる障害者は多いです。
このような未経験でも応募可能な求人は少ないですが、一般枠よりも障害者枠には存在します。これは障害者の働き方に対する配慮のひとつとして、在宅勤務を勤務形態のひとつとして採用しているからです。
例えば以下は、大手広告代理店子会社の障害者採用の求人です。
グラフィックデザインの制作が仕事であり、未経験でも応募可能であることがわかります。このため未経験からデザインを学ぶことができます。一方勤務形態については以下のとおりです。
部署によっては、希望すれば完全在宅勤務ができることがわかります。また障害者枠の求人なので、障害への理解をしたもらった上で、在宅勤務が可能なので安心です。
このため社会人としての経験が浅く、最初から在宅勤務をすることに不安で就職や転職をためらっている障害者に適しています。
スキルや経験が必要なIT業界の求人は在宅勤務求人が豊富
これまで未経験や資格がなくても応募可能な在宅勤務の求人をみてきました。一方で資格や経験があれば、在宅勤務でも求人は豊富です。特にプログラマーやエンジニアなど、パソコンスキルが仕事の専門職は、在宅勤務の求人は多いです。
例えば以下は、フィルタリングソフト開発会社のシステムエンジニアの障害者向け求人です。
完全在宅勤務のソフトウェア開発等の障害者求人です。在宅勤務率はほぼ100%なので、フルリモートで在宅勤務するのが基本であることがわかります。以下はこの求人の仕事内容です。
ソフトウェアの開発や検証などのエンジニア求人であり、ソフトウェア開発経験2年以上が必須となっています。
IT業界の在宅勤務の求人は障害者枠でも豊富なのでこの求人は一例ですが、専門スキルと経験のある障害者であればこのような好条件の求人があります。
そのため、専門職の在宅勤務でスキルアップしたい障害者に適しています。
在宅勤務のデメリット
これまで在宅勤務のメリットを中心にどのような求人があるのかを確認してきました。一方在宅勤務には、通勤型とは違ったデメリットがあります。
在宅勤務の求人では、専門知識がいらない事務職の仕事では未経験者の求人が少ないです。請求書や契約書などの書類作成の仕方や決裁方法など、どんな会社にも共通する基本的な事務仕事の流れがわかっていなければ、仕事ならないからです。
例えば以下は、障害者でも応募可能の在宅勤務の事務職正社員求人です。
書類の作成や郵便物の発送などの事務職正社員の在宅勤務の求人です。以下は、同じ求人の応募資格欄です。
応募資格は、事務職の経験が必須となっています。
事務職には組織に必要な報告や伺いが多く、報告要領は最低限心得ておかなければ仕事にならない場合があるからです。
また報告や相談は、在宅勤務だからこそコミュニケーション力が必要な場合があります。簡単な連絡程度なら問題ありませんが、ZoomやMicrosoft Teamなどを使ってリモートで報告するので画面越しとなり、細かなニュアンスが伝わりづらいからです。
そのため要領よく報告や相談ができる能力が必要になります。
事務未経験でも在宅勤務の求人はありますが、経験者に比べて求人が少ないことや会話能力などがある程度必要であることを理解しておく必要があります。
在宅勤務に慣れるまでは仕事がしにくい
一方で在宅勤務ばかりでは、会社や同僚との絆が深まらず会社への帰属意識が高まらないデメリットがあります。このため人とのつながりで仕事にやりがいを見出すタイプの障害者に在宅勤務は不向きです。
また入社後に在宅勤務で仕事を任されたとしても、リモートワークに慣れていなければ最初から自信をもって仕事できません。仕事の決裁ラインなど仕事の流れを理解しないままでは、何をどうすればいいのかわらかないからです。
そのため、仕事に慣れるまで指導してくれる求人があります。例えば以下は、未経験でも応募可能な事務職の障害者向け在宅勤務の正社員求人です。
在宅勤務に慣れるまで、業務を共有しやすくしい職場環境にしていることを明記しています。以下は同じ求人の仕事の特徴欄です。
事務職の在宅勤務の場合、事務経験を必須条件にすることが多いです。一方この障害者雇用求人は「未経験OK」「初心者OK」「主婦OK」であることがわかります。
このように在宅勤務の中で未経験者を歓迎している求人は、事務職や在宅勤務に不慣れな障害者の入社を想定しています。このため在宅勤務に慣れるまでの研修や環境整備には配慮がなされています。
テレワークや事務仕事に不安な障害者は、在宅勤務で事務職未経験者でも積極的な求人を選ぶといいです。
勤務の自己管理が難しい
在宅勤務の場合仕事する場所に仕事とプライベートの区別がついていないため「気持ちが仕事モードになりにくく集中できない」という障害者も多いです。
特に発達障害者は注意力散漫なので、在宅勤務に支障のある人は多いです。
業務内容が時間単位で細かく指定されていれば、たとえ在宅勤務でも集中力が保てるかもしれませんが、そのような在宅勤務はなかなかありません。そこでリモートを活用した従業員の勤怠状況を把握する仕組みを取り入れた求人があります。
例えば以下は障害者採用の事務職の在宅勤務の正社員求人です。
データ入力などの簡単な事務作業の求人であることがわかります。このような雑用は一般枠の在宅勤務求人にはほとんどないので、障害者雇用枠のメリットです。以下は、同じ求人の応募資格欄です。
勤務中は常時本社とリモート接続されているので、サボらず真面目に仕事をしていることがわかってもらえます。また仕事の状況を、逐一本社に把握してもらえるメリットがあります。
監視されているようで嫌かもしれませんが、職場では周囲の目が普通です。このため初めての在宅勤務が不安だったり、自己管理に自信がなかったりする障害者には適しています。
まとめ
ここまで障害者にとって、在宅勤務のメリットとデメリットを解説してきました。
在宅勤務は就職転職したいと強く願っている精神障害者やうつ病が対人不安を克服できずにいる障害者にとっては、人間関係に惑わされず仕事に没頭できます。また障害のために通勤が困難な身体障害者にとっては大きなメリットです。
一方、昔ながらの内職の延長で単純作業や自由な仕事ばかりと考えていては、たとえ障害者でも浅はかな姿勢はすぐに採用側に見破られるので、なかなか就職や転職はできません。
このため在宅勤務でもやる気やスキルを活かして問題なく仕事ができるように、障害者としての特性と強みをしっかり整理して求人に応募しましょう。
障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。