障害者が、障害のことを伏せて勤務している場合、障害に対する配慮や理解がなくて苦労している人は多いです。また勤務している会社の経営が不安定で、給与が頭打ちになっている中小や零細の会社で働いていることに、不安を感じている障害者もいます。
このとき大手会社の障害者雇用であれば、働き方に理解があったり施設面や同僚・上司からの配慮を受けたりすることができます。また、小規模の会社に比べて安定しているので、長く安心して働くことができます。
そこで以下では、障害者が大手の会社の障害者雇用求人で働くことのメリットや求人の選び方を解説します。
もくじ
大企業の障害者雇用のメリット
大手の会社の障害者採用でもっとも大きなメリットは、一般枠では採用されるのが困難な人気の大企業でも採用されやすいことです。これは一定以上の従業員を有する大企業には、障害者を雇用する義務が課せられているからです。
もしも法律で定められた障害者雇用率を下回った場合は罰金が科せられます。一方、特定の障害者を雇用した企業は、助成金を受け取ることができます。このため、一般枠とは別に障害者採用枠を設けている大手の会社は多いです。
また障害者雇用を企業の社会貢献の一環ととらえて積極的に行っている大手の会社が多いです。このため障害者雇用数を誇る大手の求人があります。
例えば以下は、大手化学メーカーの障害者・正社員求人です。
東証一部上場企業の化学メーカーの求人です。以下は、この求人の会社案内欄の一部です。
障害者雇用率の達成していることが記されています。このように障害者雇用実績が豊富であり、熱心に障害者雇用に取り組んでいることが示されていれば配慮を受けながら安心して働けます。
一方、中小や零細の会社では障害者枠の求人はほとんどありません。障害者の採用義務がないからです。このため施設面で車いすや視覚障害などに配慮できている会社は少ないです。また障害者の雇用実績がないため、働き方に理解や配慮が受けられない場合があります。こうしたときは、配慮の申し出もしづらいです。
このため、障害への理解や配慮を受けたくて就職や転職を考えている場合は、大手で障害者雇用実績が豊富な会社を選ぶようにしましょう。
大手は精神障害者雇用実績も豊富
ただ、障害者のうち精神障害者には特有の問題があります。それは精神障害者は身体障害者よりも採用されにくいことです。
身体障害者の場合、精神面は健常者と同じくらい安定しているので人間関係のトラブルが少ないです。また身体障害者は外見からすぐに障害があることがわかりやすいです。このため理解や配慮が受けられやすいです。
一方、精神障害者は外見で障害者であることがわかりづらいです。一見すると健常者と変わらないため、障害が原因で仕事を進められずにいると「怠けている」と決めつけられることもあります。
また、たとえ精神障害を職場に周知されていたとしても、周囲が感情面までを配慮することはなかなか難しいときがあります。精神障害者は感情コントロールができませんが、健常者でも感情のコントロールがうまくない人は多いです。
このため、仕事での行き違いで健常者が精神障害者からネガティブな感情をぶつけてこられたとき、相手の障害者を頭ではわかっていても寛大に受け入れることは難しいです。こうしたことから精神障害者は、身体障害者と違って職場の人間関係や顧客との間でトラブルを起こしがちだとみられます。
例えば以下は、情報通信会社の障害者雇用・正社員求人です。
事務職求人ですが、採用が身体障害者に限られています。このように精神障害者は身体障害者よりも採用されにくいことがあります。採用側としては、同じ障害者であってもトラブルを起こすリスクをできるだけ避けようとするのが普通だからです。
それでは精神障害者は、どのような会社の求人を選べばいいのでしょうか。このとき大手の障害者雇用であれば、精神障害者の採用実績が豊富です。精神障害者の採用実績があれば、精神障害にも働き方に配慮がしてあるからです。
例えば以下は、大手コンサルタント会社の障害者雇用・正社員求人です。
身体障害者・精神障害者ともに採用実績が豊富な事務職求人です。障害の種類で採用を区別していないことがわかります。また、障害者雇用の背景として強い経営基盤を誇っています。
この求人のように大手であれば経営が安定しているため、金銭面で障害者に施設や働き方に配慮するゆとりがあります。また、体制面でも職場で一人になれる環境を用意されていたり、仕事で障害の特性に応じた手順にマニュアルを作成されていたりします。こういった配慮は、安定した経営と障害者雇用の実績が豊富な大手でなければ難しいです。
このため精神障害者が障害者雇用で就職や転職をするときは、精神障害者の雇用実績に着目して大手の会社の求人を選びましょう。
大手障害者雇用求人は雑用事務が多い
このように大手の障害者雇用では、障害の種別に関係なく働き方への配慮があります。また、こういった配慮は採用後だけでなく求人の段階で見受けられます。それは、無理なく仕事ができるような職種の求人が多いということです。
このとき、大手の障害者雇用に多い職種は事務補助職や軽作業です。例えば以下は、大手プリンター製造会社の障害者・正社員求人です。
来客対応やファイル、郵便物の仕分けなどの簡単な事務職です。仕事は雑務ですが、年収は400万円以上であり高給です。この求人の応募要件は以下の通りです。
事務職の実務経験が必要ですが、期間に定めがありません。このため、実務が短期間でも応募可能です。また、資格やスキルは一切不要です。こうした大手の障害者雇用であれば、簡単な事務職でも高給の求人があります。
このように大手では、障害者に体力的な負担や知的・精神的な負担がないように一般枠とは別に障害者枠を設けていることが普通です。そして、健常者とは別の部署に所属することで役割分担をしていることが多いです。
このため障害者でも無理なく働きたいときは、負担の少ない大手の事務職求人を選びましょう。
大手の特例子会社求人で障害に対する配慮を受けながら働く
また大手では、障害者雇用のために別の子会社を設立していることがあります。それは、特例子会社です。特例子会社で雇用されている障害者も、会社本体の障害者雇用とみなされて障害者雇用率に反映されます。
特例子会社の求人も事務職が多いです。障害者が働くために設立された会社なので、バリアフリーなどの施設面や電話接客対応などの働き方は配慮が行き届いています。このため、障害者にとって働きやすい環境があります。
例えば以下は、大手広告代理店の特例子会社の障害者雇用・正社員求人です。
なお、この求人の業務内容は以下の通りです。
データ入力やファイル綴じなどの簡単な雑用が大半です。障害への負担が少ない事務仕事のため、給与は低く設定されています。なお、この求人の雇用実績や障害への配慮については以下の通りです。
身体障害者から精神障害者まであらゆる種別の障害者の採用実績があります。また施設や働き方などの障害配慮が行き届いています。
このように特例子会社は、大手会社に多いです。また、障害者雇用を目的とした会社のため負担の少ない事務職が大半です。ただ仕事の負荷が少ないため、この求人のように給与は安くなってしまいます。
こうした特例子会社は、障害者のための施設から働き方まで細かいところまで配慮が行き届いています。このため働き方への配慮をもっとも重視している障害者は、特例子会社を中心に求人選びをするといいです。
大手であっても障害者雇用求人は給与が低い
ただ、障害者求人の場合、仕事の負荷が低いため給与が低いというデメリットがあります。そのため、大手の会社であっても給与は低いです。
障害者という理由だけで健常者よりも給与を低くすることは法律で禁止されていますが、負担の少ない仕事では相応の低い給与にしかならないのは仕方ありません。
例えば以下は、機械メーカーの障害者向け正社員求人です。
書類整理や電話対応のほか事務補助の仕事です。この求人の給与や応募要件は以下の通りです。
年収が172万円となっており安いです。ただ休日が土日祝日であり、週4日の勤務も選べるため障害者にとっての働く条件はいいです。
また障害者雇用の場合、高いスキルや専門性が求められない事務職が多くスキルアップができません。勤務年数に応じてマネジメントやリーダーシップを身につけてキャリアアップできなければ、ポストや給与は低いままです。
負担の少ない働き方などの配慮が多ければ、たとえ大手でも給与が低くなりスキルアップはできません。一方で、無理なく安定して働きたいと考える障害者は多いです。そのような障害者は、この求人のような負荷の少ない大手の事務補助職を選びましょう。
大手の障害者雇用は大都市に集中している
前述の通り、障害者雇用は大手の会社では大半が事務職です。そして配属される部署は施設や配慮の充実した本社の事務職が多く、求人が東京や大阪などの大都市に集中しています。このため、地方には大手の障害者求人が少ないです。
例えば以下は、障害者向け転職サイトの全国の上場企業の正社員求人の検索結果です。
全国で124件の求人があります。次に大都市圏を有する関東・関西・東海地方に限定して検索した結果は以下の通りです。
120件の求人があります。つまり障害者雇用の大半を大都市圏が占めています。一方で地方のうち、例えば四国四県に絞った場合は以下の通りです。
わずか9件しか求人がありません。これでは、選択の余地がないに等しいです。このため、障害者が配慮のある大手で長く安定して働こうとするときは、大都市への転居も受け入れなければならない場合があることを理解しておきましょう。
障害者雇用でも大手であれば専門職求人は存在する
障害者には仕事の負荷が高くても、高い専門性を身につけてスキルしたいと考える人はいます。このとき大手では、障害者枠で専門職求人があります。大手の場合、社内で分業化や専業化が進んでいるため、事務職以外の障害者求人もあります。このため障害に関わりなく働ける分野では、健常者と一緒になって働く求人も多いです。
また、大手の会社は障害者でも人材育成に積極的です。せっかく障害者を雇用しても、すぐに退職されては困るからです。即戦力求人ばかりの中小・零細企業とは違って大手では、人材教育に取り組むゆとりがある安定した基盤があります。
例えば以下は、NTTグループ会社のエンジニアの障害者雇用・正社員求人です。
未経験でも応募可能なエンジニア求人です。障害者雇用実績については以下の通りです。
身体障害者の雇用実績が豊富です。また、働き方については障害への配慮も多いです。このため、障害があっても気兼ねなく働くことができます。この求人の仕事内容は以下の通りです。
エンジニアとして、職場の実務指導を通してスキルアップできます。また、将来プロジェクトマネージャーとしてのポストを期待されており、キャリアアップの目標を明確に設定できます。この求人の応募条件は以下の通りです。
短期間でも社会人経験があれば、高卒でエンジニアを目指すことができます。このように大手では、専門的なスキルアップを目指すことができる求人は多いです。
障害者でありながら専門スキルのある優秀な人材は、会社にとって貴重です。このため大手であれば、長く安定して働くことができます。
また専門職求人のメリットは、高収入であることです。特に身体障害者の場合、身体的能力が劣っていても知的生産性が高い人は多いです。このような人材は、即戦力として活躍が期待されるからです。この求人の給与は以下の通りです。
未経験でも年収が350万円からであり事務職求人よりも高いです。
中小や零細企業であれば未経験でも応募可能のエンジニア求人というのはほとんどありません。一方、大手であれば優秀な技術者を育成するノウハウも資源もあるため、障害者雇用でも専門職でスキルアップが目指せる求人が存在します。
このように仕事の負荷が多少高くても、専門性を身につけてキャリアアップしたい障害者は大手障害者雇用の専門職求人を選びましょう。
まとめ
大手の会社では障害者雇用の求人が多く、障害者雇用は一般枠とは別枠です。このため、人気の大手企業でも障害者であれば採用されやすいというメリットがあります。また大手の会社には経済面や人員の体制面で余裕があるので、施設や働き方にも配慮が行き届いています。
ただ、障害者雇用は大手でも補助的な事務職の求人が多いため給与が少なく、スキルアップが難しいです。また、求人が大都市に集中しているため、地方からは転居が必要になります。
一方で大手では専門職の障害者雇用という求人があり、この場合は例外的にスキルアップや高収入がねらえる場合があります。
このように大手であれば様々な職種で長く安定して働くことができます。ただ障害者雇用で就職や転職を成功させるためには、大手に就職することだけを目的としないようにしましょう。そして、長期的なキャリアプランを考えてから求人選びをしましょう。
障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。