ADHDの発達障害の人は、障害の特性が職場で不利に働くことが多いため辛いと感じています。こうしたとき「自分に向いている仕事はないのか」と悩みます。
ADHDの人が職場になじめない理由は、その特性が事務職などのような一般的な仕事に適していないからです。例えばADHDの特性である多動や発想力など、一般的な職場では必要とされません。むしろ職場では不利になることが多いです。
ただ、このようなADHDの特性であっても、その特性に合致した仕事はいくつか存在します。こうした適職といえる求人に出会えれば、就職・転職を成功させることができます。ただし、そのような求人には、障害に対する配慮などいくつか条件があります。
そこで以下ではADHDの人が、その特性を活かして選ぶべき求人について解説します。
もくじ
ADHDに向いている求人の選び方
ADHDの人が転職で成功するためには、ADHDの特性が有利になる求人を選ぶことが必要です。ただADHDの特性は、事務職のような一般的な職場との相性があまりよくありません。
ADHDの人が苦手とする環境は、以下の通りです。
- 複数の仕事を同時進行でこなすマルチタスク
- チームワークをことさら要求される
- 明確な目標や評価基準があいまい
- 結果より過程を重視
- 単純作業の繰り返し
こうした特徴を持つ仕事は、大半が事務職です。ただ、障害者求人で事務職求人が占めるの割合は高いです。そこで以下では、こうした仕事の特徴を踏まえADHDが有利となる限られた求人の中で、どのような求人を選べば就職や転職が成功できるのかを解説します。
ADHDの人は「好き」や「得意」にこだわって求人を選ぶことが重要
ADHDの人の求人選びでもっとも重要な要素は、「好きな仕事を選ぶ」ということです。「当たり前ではないか」と思われるかもしれませんが、ADHDの人の場合この要素が特に重要です。それはADHDの人は一般的な人に比べて、「できること」と「でないこと」の差が激しいからです。
ADHDの人は飽きやすく、集中力は長続きしません。ただ、心から好きな仕事や得意な仕事に対しては、普通の人とは比べ物にならない強い集中力を発揮するといわれてます。これを、ハイパーフォーカスといいます。
このとき普通の人も、好きなことであれば集中できます。またADHDの人と比べて幅広く集中できたり、その集中力を長続きさせたりすることができます。ただ、その集中力のレベルは「好き」や「得意」にはまっているADHDの人には、到底かないません。
また普通の人は好きや得意を仕事にしたとしても、それだけでは仕事に対する満足度が高くなりません。それは「好き」以外に他の多くの要素も必要となるからです。例えば「人ととのコミュニケーション」や「上司との信頼関係」、「収入の満足度」などです。
このためADHDの人と違って、「好き」や「得意」だけで求人選びをしても失敗することが多いです。
このようにADHDの人は、好きなことへの過集中できることが特性です。このため求人選びでは「好き」や「得意」にこだわって就職・転職活動をしましょう。
スピードや生産性が重視される求人で就職・転職を成功させる
またADHDの人は、短期的な集中力を発揮します。このため、迅速な結果が求められる職業が向いています。これはADHDの特性が中長期的な目標よりも「目に見える成果を、すぐに得たい」と考える特性があるからです。
このため、結果よりも過程を重視したり、作業途中に細かいチェックされたり指摘されたりする仕事はモチベーションや集中力を途切れさせるため、こうした仕事を嫌います。
こうしたADHDの人が嫌う仕事は、公務員や大手の会社の事務職が持つ特徴に多いです。一方で、創業間もない元気な会社や成長中の会社であれば、多少仕事の負荷が高くても、それを跳ね返して没頭できるパワーがあります。
一般的には「優れた求人」といわれるのは大手や安定した会社ですが、ADHDの特性を活かした求人を選ぶときは、こうした常識にとらわれず、中小・零細も含めた幅広い求人を選択肢に入れましょう。
ADHDに適した障害者雇用求人の職業一覧
このようにADHDの特性に適した求人は専門的だったり、障害者が避けがちな求人であることが多いです。このため一般的な求人よりも職種が絞られます。なおADHDの特性を活かした仕事や職種は、特性別に下記の通りとなります。
ADHDの最も代表的な特性は、ひとつのことに集中する力です。一方で、複数の作業を同時に進めるマルチタスクは向いていません。一方で、他のことには構っていられないような突発の出来事には素早く対応する仕事に適性があります。
これは対処すべき事が、目の前のひとつに限られるからです。こうした状況が多く発生する主な仕事は医師・看護師、エンジニア、警備員、介護士、コールセンター、施工管理者などです。
またADHDの特性は、明確な目標や手順がある仕事が向いています。あいまいなことが苦手だからです。
このため適性がある主な仕事は、成果がわかりやすい販売員や営業職、エンジニアやプログラマー、ルーティンワークの作業員やプロジェクトマネージャー 経理・会計職などです。
そしてADHDの特は、創造性です。ADHDの人は注意が散漫になりがちですが、この特性によって一つの物事に対して多角的な視野で物事をみることができます。これは普通の人だと、意識してやらないとできません。このため普通の人が思いつかないようなアイデアを提案することができます。
こうした創造性は、ユニークな手法で成果を出そうとするビジネスなどの実用的な場面で活かされます。例えば代表的なものは、独自性が求められるイラストレーターやデザイナーなどです。また、独自の手法や方法でライバルと差をつけて成果を出そうとする営業職や販売の仕事にも適しています。
そしてADHDの特性は、人から直接感謝される社会的報酬や、成果が収入に結び付くことを好みます。やったことが、すぐに成果として感じられるからです。
こうした特性に向いている主な仕事は、例えば教師・講師などの他、介護士、社会福祉士などのソーシャルワーカーです。他にもアクティビティのトレーナーなどです。
ただこうした特性が発揮されるためには、環境や配慮が職場にあることが重要です。これは皆が同じようなことを、同じようなやり方でやらなければならない仕事には必要ないからです。
またミスが許されないような仕事は普通の人に比べて確実に劣ります。このため極端な場合、パワハラやいじめの的になることがあります。
このとき障害者雇用であれば、障害に対する配慮が会社に義務付けられています。こうした配慮によって、ADHDの持つ特性や障害に配慮や理解を受けながら仕事ができます。
このため自分の特性を活かせる仕事を強く意識しながら、障害者雇用求人で就職・転職を成功させましょう。
ADHDの集中力が発揮できる障害者雇用求人
ADHDの特性のひとつは、前述の通り過集中です。いったん過集中にはまれば、生産性を上げることができます。ただ集中力を発揮するためには条件があります。それは前述した「明確な目標」のほか、「一点に集中する業務」です。
このとき障害者求人には、こうした特性を活かせる求人が存在します。例えば以下は、ゲーム開発会社の障害者雇用・正社員求人です。
この求人は、プログラムのバグを見つける仕事です。誤りを見つける作業のため、一層の集中力が必要です。この求人のように「エラーを見つける」という明確な目標があれば、ADHDの人が持ち味である集中力を発揮できます。
このためADHDの人が障害者雇用の求人を選ぶときは「マルチタスクではなく、業務が絞られていること」「集中力を必要とされること」を条件にするといいでしょう。
専門性が求められる事務職求人
ADHDの人は、複数の仕事を同時進行するマルチタスクが必要な事務が苦手です。ただ障害者雇用の求人には、事務職が多いです。これは心身の障害に対する配慮がしやすいからです。
一方で事務職の中には、ひとつの業務に集中できる事務職があります。それは、経理、会計などの専門性の高い事務職求人です。専門性が高ければ、「やるべきこと」「やらなくてもいいこと」が線引きできるからです。
例えば以下は、大手機械メーカーの障害者雇用正社員求人です。
実務経験や日商簿記2級程度以上の知識を必要とする、専門性の高い求人は経理職求人です。こうした大手の求人は、中小零細の会社と違って分業化の進んでいます。このため一般的な雑務を一手に引き受ける事務職ではなく、経理・会計に特化した部署の求人が多いです。
こうした専門性を活かせる求人であれば、貴重な戦力として扱われることがあります。障害者雇用にありがちな、補助的な仕事ではありません。このためやりがいを持ち、集中力を発揮して仕事に取り組めます。
なお事務系の専門職は、他にも語学を活かせる翻訳・通訳、給与計算、社会保険事務などの人事・労務管理などがあります。このようにADHDの人が求人を選ぶときは、スキルや実務経験を活かせたり専門性が高かったりするようにしましょう。
体力・行動力を活かせる求人
ADHDには多動性の傾向があります。多動は子供のADHDに多く、大人になってからは仕事に支障がないほど落ち着くことが多いです。ただ多動の傾向は完全になくなることはありません。このため、じっとしていられない特性から注意散漫を生みだします。そうすると書類ミスが増え、緻密さや正確さを求められる事務職では不利となります。
こうした特性からADHDの人の中には、デスクワークよりも外に出て体力を使う職種に適していることが多いです。例えば以下はトラック会社の障害者採用・正社員求人です。
長距離トラックの集荷ドライバーの求人です。集荷業務のため、荷物の搬送などで終日体を使う仕事です。体力は必要ですが、こうした終日動き回る仕事であれば、落ち着きやじっとしていることが不要です。
デスクワークが苦手なADHDの人は、こうした体力勝負の求人を視野に入れて求人を選びましょう。
豊かな想像力が求められるデザイン系の求人
ADHDの人は前述の通り、豊かな発想力を持つ人が多いです。このため、柔軟な思考でアイデアを形にすることが好きです。
こうした特性のために、デザイン、イラストや建築などのクリエイティブな仕事に適性があります。このためデザインセンスやスキルがあれば、クリエイティブな求人に応募できます。
また、こうした求人は自由で活発な社風の会社が多いです。このため、事務職のように型にはまった仕事が苦手なADHDの人には向いています。
デザインや建築の仕事は進捗が目に見えてわかるため、やりがいを感じやすいです。ADHDの人は集中力が途切れやすいため、こうした努力がすぐに目に見える形で成果として現れる仕事は、特にやりがいを感じやすいです。
例えば以下は、製薬会社の特例子会社の障害者雇用・正社員求人です。
Web制作や広告物の印刷物など、親会社からデザインを請け負う特例子会社のデザイナーの求人です。IllustratorやPhotoshopなど、デザイナーには必須のデザインソフトを使いこなすスキルが必要です。障害者雇用を目的として設立された大手会社の特例子会社であるため、職場環境は障害者への配慮や理解が行き届いています。
こうしたクリエイター関連の求人は、Web制作会社や広告代理店、印刷・出版会社などにも存在します。
なお求められるデザインやWeb制作スキルは求人によって様々です。このため自分の実務経験やスキルに合わせて幅広く求人を集め、就職・転職を成功させましょう。
高収入や肩書が得られやすいハイクラス求人に挑戦する
障害者で採用された従業員は一般的にスキルの高くない仕事や業務の補助的な仕事が多いため、収入が低い傾向にあります。また精神的に不安定だと、業務や人事管理が難しいため役職に就くことはほとんどありません。
ただ障害者であってもADHDの人に限っていえば、成果が報酬に結び付く仕事や、ポストや肩書など、周囲から認められたり称賛されたりする社会的報酬にモチベーションが上がりやすいです。
つまりADHDの人は、普通の人よりも収入や社会的地位を求める傾向があります。この特性を意識して求人を探せば、満足できる就職や転職ができます。
このとき障害者雇用であっても、実力次第で管理職のポストが狙える求人が存在します。例えば以下は大手ITコンサルタント会社の障害者者雇用・正社員求人です。
障害者雇用でありながら、管理者候補の求人です。年収が1000万円超をねらえるハイクラス求人です。一般的に発達障害者など精神疾患系の障害者が、幹部候補として採用されることはまれです。ただ近年はキャリア形成にも公平や平等がますます重視されるようになり、こうした求人は今後増えることが見込まれます。
こうした求人の職場では健常者といっしょに働きますが、肩書や報酬で仕事のモチベーションが上がるADHDの特性を活かせば障害者であっても成功できる可能性があります。このため健常者に負けないキャリアを目指したいADHDの人は、こうしたハイクラス求人にチャレンジしましょう。
顧客の反応が直接得られる求人
ADHDの特性は前述の通り、成果に対する報酬でモチベーション一気に高まりやすいことです。この報酬は金銭的なものだけでなく、社会的なものも含まれます。
つまり上司や同僚からだけではなく、お客さんなどからねぎらわれたり、感謝されたりしたときに社会的な報酬としてやりがいを感じやすいです。
こうした特性に合う仕事の中で、もっとも一般的な職種は営業や接客業務などの対人販売です。面前で感謝されたり喜ばれたりする場面が多いからです。例えば以下は住宅会社の障害者雇用・正社員求人です。
個人向けの住宅営業です。モデルハウスなどの来場者へ住宅を売り込みます。こうした営業職は成果が勤務・人事評価に反映されるため、やりがいは感じやすいです。ただ、実績については障害の有無にかかわりなく求めらる厳しさがあります。
こうした求人は、行動力・社交力をフル活用します。こうして優れた提案でお客に満足してもらえたり、喜んでもらえたりすることでやりがいを最大限に感じることができます。
このようにADHDの人は、デスクワークにあまり適していないため、こうした社会的報酬の得られやすい求人で就職・転職を成功させましょう。
ADHDの人が転職エージェントを利用する必要がある理由
ADHDの人が特性を活かして求人を探そうとするとき、ひとりでは難しいです。自分の特性を理解したつもりであっても、客観的に判断することが蒸すかしいからです。このため必ず、第三者の意見を参考にする必要があります。
このとき注意しなければいけないのは、家族や友人など近しい近しい人の意見を参考にしないことです。近しい人というのは「類は友を呼ぶ」というように、自分の特性と似たような人が多いからです。
このとき障害者に対する転職のサポートは、ハローワークなどの公的なものがあります。ただ、こうした機関は担当者の熱意やスキルがまちまちです。あっせんした実績が、担当者の評価として直接結びつかないからです。
一方で障害者雇用には一般枠と同じように、多くの障害者向け転職サイトや転職エージェントが存在します。こうしたサイトに登録すれば公開している求人だけでなく、その会社が持つ多くの非公開の求人も案内を受けることができます。
また、それだけでなくADHDの人にとって最も有益なサービスは、エージェントの担当者が面接指導をしてくれるところです。求人の紹介だけでなく、利用者が転職に成功できるまでをしっかりサポートしてくれます。
このときADHDの特性を理解した専門の担当者が利用者とやりとりする中で、ひとりひとりの特性を見出してくれます。またその特性に見合った求人を紹介してくれたり、面接の指導やアドバイスをしてくれます。
このように転職サイトに登録して転職エージェントを利用すれば、担当者から質の高いサービスが受けられます。このためADHDの特性を活かし、自己理解をしたうえで優れた求人を選ぶためには、必ず複数の転職サイト、エージェントに登録して就職転職を成功させましょう。
まとめ
ADHDの人がその特性に向いている求人の選びで必要なのは、「好き」や「得意」にこだわることです。普通の人が仕事に満足を感じるのは、仕事の内容だけでなく人間関係や収入・待遇など多様な要素がありますが、ADHDの人はそのような要素はあまり左右されません。好きであればその仕事に過集中できるからです。
またスピードや生産性が重視される求人のように、仕事に対する成果・報酬がすぐに得られると集中しやすくなります。
このようにADHDの人が仕事で特性を活かせるもっとも重要な条件は、集中力が発揮できることです。このため、必ず特性に配慮が得られるように、障害者雇用求人を必要があります。
ただ障害者雇用は、ADHDの人には適していない事務職求人が多いです。このとき事務職求人の中でも、業務が限られた専門性が高い会計や経理などの求人であれば集中しやすくなります。
またADHDの特性は、多動です。このため体力・行動力があれば、終日体を動かす求人がおすすめです。さらに独創性や発想力が豊かであるため、デザイン系の求人やエンジニアに適しています。
ただ、このような特性を活かした求人を選ぶとき、客観的な視点で自分の特性を見極めねければいけません。障害者には様々な転職サービスがありますが、転職サイトに登録して転職エージェントを利用すれば、求人案内から面接指導まで、障害者求人専門の担当者から手厚いサービスが受けられます。
このようにADHDの人が自分に合った求人を選ぶときは、自分の特性に合った仕事で就職や転職を成功させましょう。
障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。