デスクワークや都会の暮らしになじめずにいる障害者は多いです。そのような障害者の中には、農業で自然を相手にした仕事をしたいと思っている人もいます。

ただ、農業の基盤を持たない未経験の障害者が、いきなり就農することはリスクが高すぎるため、退職して就農を目指すのではなく、農業・農園求人で転職して雇用就労で農業に携わりましょう。そうして、農園に勤務しながら資金やノウハウを蓄積しましょう。

障害者雇用の農業求人は、メリットばかりではありません。そこで以下では、障害者が農業求人で就職や転職するときに失敗しないための考え方を解説します。

障害者雇用求人の勤務条件はメリットが多い

障害者雇用の農業求人では、大半が会社や法人、事業所の求人です。このうち最も多い求人は、食品会社です。食品会社の中には農作物の栽培も手掛ける会社があります。

例えば以下は石川県の食品会社の障害者雇用・正社員求人です。

この求人は食品加工会社ですが、農作物の栽培から収穫・出荷まで行います。春から秋までは野菜の生産、冬から春先にかけては農作物の加工に携わります。食品会社はこの求人のように、農作物の加工食品だけでなく、農作物の生産を行うことがあります。

このような会社の求人であれば、野菜の栽培に携わることができるため、農業のノウハウを基礎から学ぶことができます。また農業だけでなく、食品加工の作業を通じて食品の生産工程を学ぶこともできます。

食品会社であれば農業に関する様々な知識が学べるメリットがあることを理解して求人選びをしましょう。

実働時間・残業が少なく週休2日が一般的

農業求人は、肉体的に過酷な求人ばかりだと思っている障害者は多いです。自然を相手にした仕事であり暑さや寒さ、風雨などの環境下でも仕事しなければならないことがあるからです。

ただ、障害書雇用であれば勤務環境は恵まれています。障害者の農業求人には、働き方に配慮がされている求人が多いからです。

例えば農作物の栽培では、夏期に日中の作業は厳禁です。このため朝は日の出に合わせて作業を始め、日差しが厳しくなるころには切り上げます。そして正午の前後は数時間休憩した後、日差しが弱まる午後4時ころから作業を再開し、日没に終了します。このため実働は長くても8時間、短い場合は4時間程度です。荒天のときは当然お休みです。


こうした自然環境に合わせた仕事なので、デスクワークなどの一般的な会社員と違って生活リズムが整い健康的です。このため生活規律を整えることが重要なうつ病や精神障害者、発達障害者は特に適しています。

例えば以下は、沖縄県の農業法人の障害者雇用・正社員求人です。

仕事内容は主に野菜栽培の農作業ですが、栽培だけでなく加工・出荷までの作業を行います。この求人の勤務内容欄は以下の通りです。

午前7時から午後6時までの11時間のうち、実働は4時間の交代勤務であり、勤務時間については相談に応じてもらえます。また休日は週休2日であり、月の平均残業時間は10時間と少ないです。

このように農業の障害者雇用求人では実働時間が少なく、休日が一般的な会社と比べて充実しています。人や機械を相手にする一般的な会社勤務と違ってストレスがありません。

このため都会でデスクワークに疲れた障害者や、長い休職期間から少しづつ仕事に復帰したいと考えている障害者には適しています。

酪農求人であれば早朝勤務のみの働き方も可能

このように障害者雇用・農業者求人は大半は農作物の栽培です。ただ、農業求人は農作物の生産に限りません。酪農業の障害者求人もあります。以下の写真は、障害者を雇用している大分県の牧場です。

酪農求人の特徴は、家畜の生態に合わせた勤務になることです。家畜の飼育・管理なので早朝や夜間の仕事もあります。例えば以下は福岡県の酪農業者の障害者雇用・正社員求人です。

牧場で乳牛の飼育・搾乳、繁殖作業を行う求人です。この求人の勤務時間、休日は以下の通りです。

早朝6時から10時までの4時間の勤務と、夕方4時から夜8時までの4時間勤務です。勤務時間は相談に応じてもらえるため、実働時間も希望すれば短縮できます。

休日については週休2日であり、年間休日125日となっていて多いです。また月の平均残業時間は10時間となっており少ないです。このように勤務時間や休日は、一般の会社と比べてかなり恵まれています。

酪農求人は農作物を生産する求人と同様、勤務条件が恵まれています。このため精神的な負担が少ない仕事で、自然を相手にした仕事をしたいと考えている障害者に適しています。

ただ農業求人の障害者雇用は、事務職など一般的な求人に比べて数が多い方ではありません。このため農業求人では農作物の栽培の求人に絞らず、酪農業の求人にも目を向けて求人の選択肢も広げましょう。

給与が安く単純作業のため明確なキャリアプランが描きにくい

このように農業の障害者雇用求人は勤務条件が恵まれていること多いです。ただ、いくつか注意点があります。

  • 単純作業のため給料が安い
  • 特別に必要なスキルがないため、将来のポジションなどキャリア設計が描きにくい

農業求人のデメリットは単純作業で誰でもできる仕事なので、給与は安いということです。またスキルアップができないため、将来のキャリア形成は難しいことです。

例えば以下は愛媛県の食品会社の障害者雇用・正社員求人です。

キクラゲの栽培、加工・出荷業務の求人です。この求人の給与欄は以下のとおりです。

正社員の求人ですが月給は約13~14万円となっています。一般的な事務職の障害者雇用求人の場合、月給は18~20万円くらいが多いため、それに比べるとかなり低いです。このように障害者雇用の農業求人は、スキルが低い分だけ給料が安いのが普通です。

また、応募条件は「資格不要」「経験不要」の求人ばかりです。スキルアップや管理職など将来のキャリアやポジションが明示されている求人はありません。

大手企業グループの農業求人であれば高収入

ただ、農業求人はすべて給与が低いとは限りません。農業求人の中には障害者雇用であっても給与が一般的な企業と同じくらいか、それ以上の求人があります。それは大手会社が手掛ける農業の求人です。

例えば以下は、長野県にある大手農業資材会社の障害者雇用・農業求人です。

花や農作物の生産・出荷作業です。月給は18~26万円です。これは他の農業求人だけでなく、一般的な会社の求人よりも高めです。

また、苗の栽培や出荷作業は施設や温室などの室内であり、日差しや寒さをしのぐことができるため体の負担になりません。なお、この求人の会社説明は以下の通りです。

日本有数の大手会社である旧財閥系・住友化学グループの農業関係会社です。このような会社であれば経営が安定しているため、長く安定して働くことができます。会社の規模も大きいためポストや職種が豊富です。このため障害者でも単純作業だけでなく、長く勤務すればリーダーや管理者の可能性もあります。
このような大手の求人であれば、障害者雇用の農業求人でも将来の目標をもって業務に取り組むことができます。農業求人であっても長く安定して働きたい障害者は、こうした大手の求人にチャレンジしましょう。

就労支援事業所で農業を通じて就労を目指す

農業の障害者雇用の求人は、営利目的の民間の会社に限られていません。障害者の農業者雇用を障害者福祉サービスとして行っている事業所があります。それは、就労支援事業所・NPO法人です。
このような事業所では、障害のために継続的な就労が困難な障害者の支援・訓練を目的としています。このため支援員の指導の下で、訓練として農作物の栽培・加工作業に従事しています。

例えば以下の写真は、障害者の就労支援を行っているNPO法人の事業所です。

このような就労継続支援事業所は、国の施策として農業の後継者不足解消と、障害者の就労先の確保を目的として農業と障害者を結ぶ農福連携事業の担い手となっています。

例えば以下は長野県のNPO法人の障害者雇用・農業求人です。

就労継続支援A型の事業所の求人です。えのきの栽培や加工・出荷作業を行います。この求人の給与欄は以下の通りです。

月給が約13万円となっています。就労継続支援事業所は福祉サービスですが、法定の最低賃金以上の給料が支給されます。この求人のように就労継続支援A型事業所では、障害者が事業所と雇用契約を結びます。そして従業員として支援員の指導を受けながら働いています。

以下の写真は、就労継続支援A型事業所のしいたけなどの加工・出荷作業の様子です。

就労継続支援事業所では、こうした単純作業を通じて就労継続の訓練を行っています。

なお、B型事業所の場合は障害者と事業所との間に雇用関係はありません。福祉サービスの利用者としてA型よりも、より短時間・単純作業で負担なく訓練を受けています。このため賃金も安くなります。

なお、就労継続支援A型の事業所で働くためには以下の手続きが必要です。

  • 事業所に履歴書を送り、面接などの選考を受ける
  • 採用が決まったら、市区町村の窓口を通じて就労継続支援A型のサービス利用を申し込む
  • 援事業所から採用内定をもらう
  • 市区町村の障害福祉窓口で調査員による生活状況などの聞き取り調査を受ける
  • 市町村の障害福祉担当部署でサービス等利用計画案が作成される
  • 市町村から受給者証が発行されて勤務開始

このように障害が原因で一般の会社で継続的に勤務することが困難な障害者は、就労継続支援事業所に転職することができます。このため対人不安などが強い精神疾患で休職期間が長かったり、一般の会社への復帰が難しかったりする場合、視野を広げて就労継続支援事業所の農業求人を選択肢に入れましょう。

まとめ

農業の障害者雇用求人は時短勤務や時間が勤務時間が選べる求人が多かったり、残業が少なかったりします。また休日は週休2日が一般的です。特に酪農の求人であれば、早朝勤務のみの働き方も可能です。このように農業求人は勤務条件が一般の会社に比べて恵まれています。

ただ勤務条件が恵まれているだけでなく単純作業のため、給与が上がらずキャリアアップができません。
一方で大手会社の求人だと高収入であり役職や部署も多く、長く安定して働くことができます。このため将来のキャリアプランも描きやすくなります。

他にも重い障害のため、通常の障害者雇用では就労が難しい障害者は、継続的な就労を訓練・支援してくれる就労継続支援事業所も転職先として検討しましょう。

このように農業求人には、将来就農を目指す障害者から長いブランクを経て少しずつ就労を目指す障害者まで様々な求人があります。このため将来にわたって農業でどのような働き方をしたいのか、よく考えながら求人選びをしましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。