建築業界は障害者採用の求人が多く、ハイスキルの資格や経験が必要な設計士・施工管理者から体を使って作業する建築作業員まで様々です。

建築会社に勤務する障害者の中には会社の将来に不安を感じたり、現在の職場環境が障害を抱えて働くことに合わなかったりして転職を考える人は多いです。

ただ自分の適性や将来をよく考えてからでないと、転職しても「また自分には合っていない会社にきてしまった」ということになります。これは建築業界では障害者雇用の求人の職種が多く、仕事内容や得業が職種によって大きく違うからです。

そこで以下では障害者が建築業界で転職するとき、どのような求人内容があり、どのような求人を選べばよいのかを解説します。

建築求人でもっとも多い建築士・設計業務

建築業界には、どのような障害者雇用の求人があるのでしょうか。建築業界は建設会社を含めて求人の種類が多く、会社によって職種の呼び方が違います。このため一概にいえませんが、大きく分けると以下のようになります。

  • 設計
  • 施工管理
  • 建築作業
  • 積算・購買

障害者雇用には、これらの職種に加えて「補助職」があります。各職種の見習いとして実務経験を積むことができるため、実務経験の浅い障害者には適しています。

これらの職種の中でもっとも多い障害者雇用は設計です。設計求人は建築士の資格があることが応募条件で必須だったり、優遇されたりします。このとき条件となる資格が、一級建築士と二級建築士です。

二級建築士は設計する建物に制限があります。木造であれば3階建てまでであるため、一級建築士に比べて求人数が少ないです。ただ、個人住宅の場合はこれで十分です。このため住宅メーカーを中心に二級建築士が応募条件の求人があります。

一方で一級建築士は設計する建物に制限がありません。工場やスーパー、学校など大型施設を手掛ける会社の設計にも携わることができます。このため求人の応募条件は、一級建築士の方が圧倒的に多いです。

例えば以下は、設計会社の障害者雇用・正社員求人です。

官公庁から受注した施設の設計と意匠図などの作成を担当します。この求人の応募条件は以下の通りです。

設計の実務経験が必須となっています。また資格については必須ではありませんが一級建築士の資格があれば優遇されます。設計求人は実務経験必須の即戦力求人多いです。

また設計士の場合、建築業界に多い建築現場で動き回る職種ではありません。スキルがあれば健常者と同じように仕事ができるため障害が不利になりません。このため設計士は障害者にとって、建築業界の職種の中ではもっとも適した求人です。

このように設計は障害者採用でも即戦力求人が多いです。このため一級建築士の資格を持ち実務経験を持っている障害者であれば、多くの求人の中から有利に転職することができます。

設計補助求人でCADなどの作図スキルを習得する

ただ、すべての設計求人で実務経験や建築士の資格が必要なわけではありません。設計が未経験だったり建築士の資格がなかったりしても応募できる求人があります。それは、設計補助です。建築士の資格がないので、設計補助求人で「設計士」として仕事をします。

設計の豊富な実務経験や建築士資格を持った障害者の数は限られています。このため設障害者向けの求人には、設計補助が多いです。

設計補助は建築士が設計した図面を作図するのが主な仕事です。このとき作図に使われるパソコンソフトがAutodesk社のAutoCADです。例えば以下はAutoCADの作業画面です。

設計補助の求人ではAutoCADのスキルが応募条件となっていることが多いです。このため設計補助はCADオペレーターという呼称で求人が行われていたりします。例えば以下は、大手プレハブ建築会社の障害者雇用・正社員求人です。

設計を補助するCADオペレーター求人です。工場・倉庫や学校などの大型施設の製図が仕事です。この求人の応募条件は以下の通りです。

設計やCADの実務があれば応募可能の求人です。なお、この会社は大型施設の建設業者なので設計は一級建築士の資格が必要ですが、この求人では建築士の資格が応募条件となっていません。また実務経験が浅い障害者でも社内教育で学ぶことができることが記されています。このため即戦力ではなく見習いとして応募できます。

このように設計補助の求人は、一級建築士を目指している障害者や、設計士として実務経験を積んでいきたい障害者に適しています。

建築確認検査求人で資格や経験を活かしてスキルアップする

設計の求人は障害者向けの補助的な仕事だけではありません。設計の実務経験があったり一級建築士の資格を持っていたりする障害者は、これらの経験や資格を活かして別の職種の求人を選ぶことができます。それは建築確認検査の求人です。

建築確認検査では設計士が設計・製図したものについて、構造に問題がないかを審査・確認します。このため設計を熟知しておく必要があります。

なお、審査は公的機関と民間会社の検査機関が行っていますが、民間の検査機関には障害者雇用求人が存在します。例えば以下は、建築確認検査機関の障害者雇用・正社員求人です。

建築確認審査補助員の求人です。この求人の応募資格は以下の通りです。

一級建築士の資格が必須となっています。仕事内容は以下の通りです。

建築確認検査の仕事は「建築基準合否判定」の資格がないことが記されています。また、この資格を取るための条件が以下のように記されています。

  • 一級建築士であること
  • 建築確認関係業務を2年以上経験があること

この求人では一級建築士の資格が必須条件となっています。そして一級建築士の資格を持った障害者が実務経験を積んで「建築基準適合判定者」の資格を取ります。このため審査業務の補助員として働く求人となっています。

このように建築確認検査の求人は、一級建築士の資格や実務経験が必須であるなどハードルが高いです。ただ有資格者の場合、こうした経験や資格を活かせる求人にも目を向けることが必要です。そうすれば求人の幅が増して有利な求人に出会えるチャンスが広がります。

障害者雇用では施工管理求人が多い

このように設計求人は建築業でもっとも多い求人ですが、障害者雇用では施工管理で設計求人と同じ程度の求人数の職種があります。

施工管理は建設現場を監督したり、工事の進ちょくの管理や顧客に施工案を提案したりします。そして完成後はアフターサービスを担うこともあります。

また施工管理者は工事責任者として多くの部下を使って仕事をするため、心身の負担は大きいです。ただリーダーシップがあったり任せられた仕事のためにチームを引っ張ってやり遂げることにやりがいを感じたりす障害者には適しています。

こうした施工管理の障害者雇用求人はどのようなものがあるのでしょうか。例えば以下は、大手リフォーム会社の障害者雇用・正社員求人です。

改修工事の現場監督が主な仕事内容です。また公示前の現場調査や予算・計画作成したり、工事後のアフターメンテナンスの計画まで行ったりします。

このように施工管理者は工事の始まりから終了だけでなく、終了後のフォローも必要な仕事です。つまり工事現場のといった建築技術の仕事のほかに、事務の仕事がプラスされます。

こうした施工管理業務を長く経験すれば工事だけでなく、人や金の管理など建築の様々な分野で管理能力が身に付きます。このため施工管理求人は建築業界に必要な多くのスキルを身につけて長く建築業界に携わりたい障害者や、人を動かすことが上手な障害者に適しています。

体を資本にして働く建築作業員求人

一方で頭を使ったり人を使ったりすることが苦手なため、建築現場で体を動かして仕事をしたいと考える障害者もいます。こうした障害者には、建築作業員の求人が適しています。

一般的に障害者雇用求人は、法定で障害者を雇用しなければならない大手の会社が多いです。ただ建築作業員の求人は、中小・零細企業の求人が多いです。高い知識や技術を必要とせず、体を動かすことができれば仕事ができるからです。このため外国人技能実習生といっしょに働くことが多いです。

例えば以下は、リフォーム企業の障害者雇用・正社員求人です。

建築現場で内装や大工仕事などが仕事です。必要な資格は運転免許証だけです。なお、この求人の会社の従業員は以下の通りです。

わずか8人の零細企業です。建築作業員の求人では、こうした小規模事業者の求人が多いです。

工事現場は天候に関係なく工期が決められるため、暑さや寒さに関係ありません。このため建築作業員は過酷な環境下で作業しなければならないことを覚悟する必要があります。

また建築業界には昔気質の人が多いです。このような親方や同僚は言葉遣いが荒く、こうした環境に慣れていなかったりメンタルが弱かったりする障害者は避けた方がいいです。

このような求人に応募できる障害者は身体を自由に動かせる障害者に限られますが、資格や経験が応募条件になっていることはありません。建築業界で経験を積みたい場合や肉体労働もいとわず働くことができれば、求人の選択肢に入れることができます。

建築業界の経験を活かす事務職求人

このように建築求人は、工事現場に直接関わる職種がほとんどですが、工事現場を事務で支える求人も存在します。建築会社には一般の会社と同じように総務や経理、人事などの事務系の求人がありますが、そのほかにも建築業界ならではの求人もあります。それは購買と積算事務です。

これらの仕事は建設現場に直接関わりませんが、建設現場を支える重要なポジションを担っています。以下で、購買と積算の求人についてみていきます。

会社の収益を支える購買求人

建築現場の工事で必要な資材は多種多様でです。また工事に使用される資材は大量です。そして、これらの資材を仕入れるのが購買の仕事です。

購買の仕事は工事原価を下げて利益を確保する上で重要です。いかに安く高品質な材料を見極めて仕入れることが購買担当の仕事です。このとき、材料の見極めには長年の経験と知識が必要です。

このため購買の求人では、建築業界の実務経験が必須となっています。例えば以下は大手建設会社の障害者雇用・正社員求人です。

建築購買の求人であり、資材の調達が仕事です。この求人の応募条件は以下の通りです。

建築業界で購買の実務経験が必須となっており、即戦力求人です。購買の求人で買い付けの対象となる資材は、建築業界特有のものばかりです。このため建築資材の知識がなければ調達しようとする資材の良し悪しを判断できません。

このように建築業界の障害者雇用求人は、建築現場で作業する求人ばかりではありません。建築業界の経験を活かして事務系の仕事を担うこともできます。こうした工事現場の裏で、本業を支える求人にも目を向けることで求人選択の幅を広げましょう。

設計・施工から管理まで広い知識が必要な積算求人

こうした購買以外にも、建築会社の事務職特有の職種があります。それは積算の求人です。

積算では設計図面をもとに建築工事にかかるコストを計算して見積などを作成する仕事です。積算に必要な知識は多岐にわたります。具体的には以下の通りです。

  • 設計や設計図面の読み取り
  • 工事の工程・工法の管理知識
  • 工事価格や人件費、材料費などの相場

このような知識は実務経験が豊富でなければ身に付きません。このため積算の求人は経験や資格などが必須の求人が多いです。例えば以下は、大手ゼネコンの障害者雇用・正社員求人です。

実務経験のある障害者の積算の求人です。職場が事務所内であり、外回りが必要ないことから身体障害者でも働くことができます。この求人の応募条件は以下の通りです。

一級施工管理技士や一級建築士などのハイスキルな資格が必要です。また積算の実務経験も必須となっており即戦力求人です。

このように積算の求人は、建築業界の情勢から建築工事の各工程の実務に精通している必要があります。このため業界や会社の情報のアンテナが高く、建築業界の実務が豊富な障害者はこうしたハイキャリア求人にチャレンジしましょう。

まとめ

建築業界は多くの職種で障害者求人があります。このうち、もっとも多い求人が設計です。設計の求人では一級建築士を持っていることが応募条件となっていることが多いです。一方で経験が浅くても設計補助でCADオペレーターとして求人を選ぶことができます。

設計に次いで多い求人は施工管理です。施工管理は工程だけでなく部下の管理やコスト管理などあらゆるスキルが必要です。一方でスキル不要の建築作業員の求人がありますが、過酷な環境でも現場作業ができるような障害者に限られます。

また購買や積算の事務系求人は実務経験をベースにした専門的な知識を活かすことができます。

このように建築業界では障害者雇用でも様々な職種の求人があります。このため長機関にわたって将来を見据え、どのようなポジションに就いたりどのようなスキルを身につけたりしたいのかをよく考えながら求人選びをしましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。