CADオペレーターは建築や土木、機械などの設計で多くの障害者が活躍しています。パソコンソフトのCADを使って製図するデスクワークなので、障害者でも障害に関係なく仕事ができます。

CADオペレーターは、ミスのない製図が求められるため、細かい点まで注意が行き届く障害者に適しています。特に細かなミスに敏感な自閉症スペクトラム症や想像力が豊かなADHDなどの発達障害者は、ハマれば集中力があるためCADオペレーターの仕事に適しています。

また、CADオペレーターの仕事は施工や製造前の初期段階の仕事なので納期など時間に追われることが少なく、週休土日2日制や年休が充実した求人が多いことが特徴です。

ただ、CADオペレーターの障害者の中には「設計担当者と折り合いが悪く、仕事がやりづらい」「簡単な製図ばかりで、ちっともスキルが身につかない」「このまま契約社員として不安定なまま働きたくない」など待遇や環境に悩みや不満を持つ人は多いです。

ここでは、障害者雇用のCADオペレーターの求人の特徴や、正社員として就職や転職をするにはどのような求人を選べばよいかを解説していきます。

CADオペレーターの障害者求人は多いが経験者採用が多い

CADオペレーターの障害者採用求人は、経験の浅い求人から経験が豊富な求人まで様々です。ただし正社員の場合、障害者でも未経験での応募可能な求人は少ないです。

CADは年々使いやすくなっており、図面をトレースするだけの簡単な作業であれば、設計担当者や建築士が自分でやってしまいます。また、ある建築会社では商業高校卒の新人の事務職員に1ヶ月ほどCADを学ばせて製図させています。そのため、簡単な製図のCADオペレーターの仕事はすでに飽和状態です。

例えば以下は資材メーカーの障害者向けCADオペレーターの正社員求人です。

3DCADであるSOLID WORKSの経験が必要な求人です。この求人では、CADオペレーターとして図面作成を補助する内容となっています。

障害者が転職するとき、特定のスキルや実務経験があれば有利であることは普通ですが、この求人の場合、CADオペレーターのスキルと経験は応募の前提条件に過ぎません。

その理由は、同じCADの使用経験があっても、建築業界と土木業界のように業界が違えばCADの使い方が違うだけでなく、同じ業界でも会社によって使い方や活用方法が違う場合があるからです。

違う会社のCADに慣れるのは意外と時間がかかるため、たとえ実務経験があっても最初のうちは製図の補助など簡単な仕事の求人が多いことを理解しておく必要があります。

設計補助や製図のほか業界勤務経験が必須

それではCADオペレーターの障害者が就職や転職をする場合、どのような実務経験が必要なのでしょうか。

それは、業界知識や業界の勤務経験です。業界での勤務経験は、CADの実務経験以上に重要な場合があります。CADオペレーターはどの分野でも、設計担当者から専門用語を交えた細かな指示を確実に理解し、図面にします。そのため、いくらCADの扱いに詳しくても、業界の知識がないままでは仕事になりません。

こうした理由から、CADの実務経験以上に営業職でも事務職でもいいので業界の勤務経験を重視する求人があります。

例えば以下は、建設会社のCADオペレーターの障害者向け正社員求人です。

この求人はCADオペレーターの求人なのに、CADの実務経験ではなく建設業界の勤務経験を必須条件にしています。

これは、図面の種類、工法、部品、専門用語や業界特有の習慣に理解がなければ、製図はもちろん、積算や見積りなどを進めることができないからです。CADオペレーターの中には、CADでマクロを作ってカスタマイズすることが得意な人もいますが、求人では障害者雇用でも業界の知識に精通している方が重宝されるのです。

このため、障害者のCADオペレーターが正社員で就職や転職するときは、業界を変えてはいけないことを理解しておく必要があります。

必要とされる実務経験期間が長い

では、CADオペレーターの障害者雇用の正社員求人に実務経験はどれくらいの期間が必要なのでしょうか。

営業職や事務職であれば、表面的な業界用語や自社製品の特長などの知識で十分なので半年や1年程度でも十分です。一方、CADオペレーターはエキスパートになるまで一般的に3年かかるといわれていています。

CADオペレーターのような製図をする人が、かつて「製図工」と呼ばれ一目置かれてた理由は、建物や製品の細部の構造を理解し、さらにCADを使って製図して形にする必要があるからです。

そのため、障害者求人でもCADオペレーターの正社員は3~5年の実務経験を条件とするものが多いです。例えば以下は、建設会社の障害者向けCADオペレーターの正社員求人です。

製図の実務経験が3年以上必要であることがわかります。他の職種であれば3年の業界経験があれば即戦力であり、給与が高くなるのが一般的です。ただ、CADオペレーターの障害者求人の場合、この求人のように3年の実務経験は有利な条件ではなく応募の条件に過ぎないこともあります。

このようにCADオペレーターの正社員求人の場合、即戦力として必要とされる経験は、相当長いことを理解しておくことが必要です。

CAD以外の雑務もしなければならない求人が多い

一方で、簡単なCADの製図の障害者雇用の求人の場合、正社員はCADで製図する以外に電話対応や事務仕事もしなければならないことが多いです。

CADで製図した後、出来上がった図面は設計士にチェックしてもらいますが、修正対応のための指示待ちをしている間、製図関係でやることは意外とありません。手持無沙汰の時間が長いため、資料整理や電話受付など事務の仕事の手伝いをさせられる場合があります。

例えば以下は、住宅建築会社のCADオペレーターの障害者向け正社員求人です。

この求人では、CADで製図する以外に問い合わせを受け付けたり事務仕事をしたりしなければならないことが分かります。このような求人は、あまり分業化されていないため中小企業に多いです。

このように簡単なCADの製図の障害者の正社員求人の場合、CADオペレーターでも雑務が多いことを踏まえて求人を選ぶ必要があります。

障害者がCADオペレーターの就職・転職で成功するには

CADオペレーターの求人は、他の業種に比べて長い実務や業界経験が必要なのが普通ですが、障害者求人の場合、経験が浅くても応募可能なものがあります。また、採用側が即戦力ではなく障害者を正社員として雇用することが一番の目的の場合、業界知識や高いCADのスキルを必要としない求人も存在します。

障害者雇用を行う採用側の思惑は障害者雇用率の維持など様々なので、条件の厳しい求人から緩い求人まで多種多様です。

そこで、このような障害者求人の中から正社員のCADオペレーターとして就職や転職をするには、どのような求人を選べばいいでしょうか。

経験が浅くても応募可能な求人でスキルアップする

CADオペレーターは、前述の通り、会社になくてはならないレベルになるまで、実務で3年くらい必要といわれています。そのため派遣社員やアルバイトで3年ほどCADオペレーターとして経験を積み、スキルアップしてから正社員となるのが普通です。

ただ、設計担当者から渡された図面をトレースするだけの仕事を延々と続けていては、いつまでたってもスキルが上がらず、給料の低い派遣やアルバイトのままです。

製品開発であれば、設計担当者の作った検討図を見て部品図まで展開したり、改善点を提案できたりするくらいのレベルにならなければ、CADオペレーターを一生の仕事にすることができません。

そのためCADオペレーターは、設計の仕事に長く携わりながら技術や知識を学んでいくことが重要です。

一方で障害者雇用の場合、一般枠と違って経験が浅くてもCADオペレーターで応募可能な正社員求人は存在します。例えば以下は、住宅建築会社の障害者向けCADオペレーターの正社員求人です。

実務経験が浅くても、応募可能の求人です。経験不足は、社内教育で補ってもらえることがわかります。また国内でもっとも使用されている汎用性の高いAutoCADを使用するため、スキルを他社で活かせるので将来の転職にも有利です。

障害者でこのような一般枠ではあまり見られない求人が存在する理由としては、法律による障害者雇用率の維持など様々です。このため、応募条件が緩い求人もいくつか存在します。

このためCADオペレーターの障害者の場合、障害者雇用にしかない条件の緩い求人をうまく活かすことができれば、正社員として就職や転職を成功させることができます。

経験豊富なら在宅OKの求人もおすすめ

一方で、CADオペレーターの豊富な業界経験と実務経験を持つ障害者も多いです。このような障害者は、在宅勤務の求人を選ぶことができます。

CADオペレーターの中でも身体障害や適応障害などは、通勤して出社することが負担な場合があります。経験の浅い障害者に在宅勤務の正社員求人はありませんが、CADオペレーターとして経験豊富な障害者ならば、在宅勤務可能の求人があります。

例えば以下は、建設会社のCADオペレーターの正社員求人です。

この求人は電力会社の関連企業です。障害配慮の一つとして、在宅勤務が可能であることがわかります。この求人のような規模の大きな会社であれば部署ごとの分業化により、CADオペレーターの仕事に専門的に関わることができます。

そのため、障害者採用のCADオペレーターの正社員求人にありがちな雑務に煩わせれず、障害者が在宅でCADによる仕事に特化しながら負担なく働くことができます。

管理の仕事などをプラスして高収入をねらう

ただ、CADオペレーターとして長く働く障害者の中には、給与が低いままの人もいます。また、せっかく長年の経験で高いスキルや専門知識があるのに、自分より知識や経験のない設計担当者から軽んじられて給与が低いことに不満に思っている人も多いです。

このとき、障害者が収入や待遇に対する不満や問題点は、転職で解決する方が早いです。

ただ、CADオペレーターで高収入の正社員として就職や転職を果たすには、製図の仕事にとどまらず設計の工程全般に携わるなど、CADオペレーターの仕事以外の役割を果たすことが必要になります。

例えば以下は、建設系コンサルタント会社の障害者向けCADオペレーターの正社員求人です。

建設業界のCADオペレーターの募集です。この求人の月収は以下の通りです。

給与が月29万円からとなっており、障害者のCADオペレーターの求人ではかなり高いです。ただ、仕事の内容は製図のほかにも施工管理をしなければならず、設計全般に関わることがわかります。

製図の仕事に加えて人を動かす仕事なので、対人関係に問題のある障害者は無理です。一方で、人並みにコミュニケーションが取れる障害者であれば、このような高収入の求人をも選択できます。

このため、給与が少ないなど現在の待遇や給与の問題を解決したいと考えている障害者や、設計や施工全般の仕事に携わりたい障害者に適しています。

まとめ

このようにCADオペレーターの障害者向けの求人は多いですが、平面図のトレースなど簡単なCADの仕事のままではスキルアップできず、給与も上がりません。

このため、障害者が正社員のCADオペレーターとして長く働くためには特定の分野で実務を積み重ね、専門知識を習得し製図のエキスパートになることが必要です。

また、CADオペレーター以外の設計全般の仕事に関わることで、待遇を上げ続ける目標を強く持つことも大切です。

このように、障害者がCADオペレーターで就職や転職を成功させるためには、自分がCADオペレーターとしてどのようなキャリアを目指すのか、ライフプランを踏まえてよく考えておく必要があります。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。