デザイナーのように感性が求められるクリエーターの職種は、障害者にとって障害が不利になりません。そのため、デザイナーとして活躍する障害者は多いです。ただ、デザイナーは美的感覚に敏感な人であれば誰でも考える人気の職種です。そのため障害者であってもデザイナーとして正社員で就職や転職をすることは、倍率が高くて難しい場合があります。
また、デザイナーとして就職や転職しようとするとき、学歴や転職回数はあまり重視されません。そのため、クライアントや消費者に刺さるデザイン力や製品・サービスの魅力を引き出して販売に貢献できるデザイン力が重要になってきます。
このようなスキルはセンスではなく、マーケットや企業戦略を意識したデザイン経験や知識などの実務の方が重要になります。
ここでは、デザイナーが障害者雇用で就職や転職するときに知っておきたいことや、障害や適性に合わせてどのような求人を選べばよいか解説します。
もくじ
障害者採用のデザイナーの働き方
多くのデザイナーはデザイン事務所に勤務していますが、デザイン事務所の多くは中小や零細企業です。こういった小規模の会社が障害者採用枠を個別に設けて求人することは少ないです。これは、デザイナーの求人も同じです。そのため多くの障害者のデザイナーが、障害への配慮が足りないまま一般枠で働いているのが実情です。
一方、大手企業であれば障害者採用のデザイナー求人はあります。これは、大手企業は法律で一定の割合の障害者を雇用しなければならず、障害者雇用率の達成や維持しなければならないからです。
このため大企業でデザイナーとして働く障害者は、広告のほか製品の企画・設計部門で働いています。大手であれば障害者の雇用実績が豊富なので、施設や勤務時間などの障害への配慮も行き届いているため、障害者にとって安心です。
以下では、障害者雇用のデザイナー求人の特徴について確認していきます。
Photoshopやillustratorのスキルは必須
デザイナーの場合、未経験者でも応募可能な求人は少ないです。これは障害者雇用枠でも同じであり、デザイナーとして勤務していた人が中途退社したことによる求人が大半なので、その穴埋めで実務経験のある即戦力が必要だからです。このため障害者採用のデザイナー求人には、グラフィックデザインのデザインツールに不可欠なAdobe社のPhotoshopやillustratorの使用経験は必須です。
例えば以下は、情報通信サービス会社に関する障害者雇用のデザイナー正社員求人です。
この求人は、Webデザイナーとしてイラストレーター(illustrator)やフォトショップ(Photoshop)の使用経験が必須となっています。
グラフィックデザインのツールは会社によって得意不得意があり、中にはPhotoshopしか使っていないような会社もあります。また、自分が使い慣れているからといって転職先で別のソフトを併用し、同僚から「互換性がないから、デザインデータを共有できない」と嫌がられることもあります。
ただ、Webデザインであっても、デザイナーとして必要なデザインツールはillustratorとPhotoshopです。
このため障害者雇用でデザイナーとして就職や転職するとき、デザイナーなら広告の印刷物であっても多くの人が利用するPhotoshopとIllustratorの使用経験が絶対条件であることを理解しておく必要があります。
大手企業のクリエイティブ職求人でデザイナーとして配慮を受けて働く
前述の通り、障害者雇用のデザイナー求人は大手企業が大半であり、障害者の雇用実績が豊富なので障害への配慮が充実しています。身体障害者にとっては施設面での配慮が必要ですが、精神障害者にとっては職場の同僚や上司の理解が重要です。
障害への理解のない職場だと、障害者にとって過酷です。例えば「能力がない」「怠けている」とみなされて、いじめの対象になることもあります。
職場での障害者への理解は、一朝一夕で簡単に根付くものではありません。そのため、会社の障害者雇用実績が豊富な必要があります。
このとき、求人を選ぶ上で注意すべきことがあります。それは中小規模の企業のデザイナー求人では、「障害者でも応募可能」という求人が多いことです。例えば以下は、情報通信企業のデザイナーの正社員求人です。
ただこの求人では「障害者でも応募可能」という記載があるだけで、障害への配慮はまったく記されていません。これでは健常者と同じように働くことが基準であり、障害への配慮は期待できません。
就職や転職の理由として障害への配慮が必要なデザイナーは、このような求人は避けたほうがいいです。
一方で大手企業では、障害者雇用枠の求人があり障害への配慮を明らかにしていることが多いです。例えば以下は、ソフトバンクの障害者雇用の正社員求人です。
ソフトバンクのデザイナー総合職求人です。障害者の雇用実績と障害への配慮は以下の通りです。
この求人では、障害配慮の実績が豊富であることがわかります。このような求人であれば職場での配慮を受けられる上、配慮の申し出もしやすいです。さらに上司や同僚も多くの障害者と仕事をした経験があることから、障害への理解も深いことが期待できます。
このように障害者のデザイナーが配慮を受けながら安心して仕事をしたい場合は、障害者の雇用実績と障害への配慮を明らかにした求人を選びましょう。
障害者採用には在宅勤務可能のデザイナー求人がある
障害者の中には障害のため、在宅勤務を希望する人は多いです。ただ、勤務先で「在宅にしてほしい」と上司に申し出をしづらいため、我慢して働いている場合もあります。一方でデザイナーの場合、時間や場所にとらわれず仕事ができるため、障害者雇用の求人には、在宅勤務可能の求人があります。
例えば以下は、大手Web制作会社に関する障害者雇用のデザイナー正社員求人です。
この求人は障害者雇用のWebデザイナーであり、テレワークによる勤務であることがわかります。
この求人に限らず、障害者への配慮の一環として在宅勤務OKの求人は存在します。ただ、デザイナーの実務経験がない障害者には、在宅勤務はデザイナーとして仕事をどう進めていいのかわからず無理なので、経験者限定の場合がほとんどです。
いずれにしても身体障害者など出社が困難な障害者が転職しようとしている場合、在宅勤務可能の求人は適しています。
様々な分野で活躍できる障害者雇用のデザイナー求人
デザイナーはクリエイティブ職であり、時間や場所に縛られないため働き方は多様です。また、デザインする対象が工業製品やデジタルまで様々です。このため、どのような求人を選べばよいか迷うときがあります。
ただ前述の通り、障害者枠の求人は大手が中心なので、身体障害者が心配する施設面での配慮は充実している場合が多いです。また、精神障害者にとって気になる働き方についてはだいたい分業しているため、中小のデザイン事務所などに比べて勤務時間などが柔軟な場合が多いです。
そのため、デザイナーの障害者が求人を選ぶ場合、「どのような配慮が受けられるのか」は気になりますが、それと同時に「どのようなデザインの仕事に携わりたいか」を考えることが大切です。
そこで、障害者のデザイナーが経験や得意を活かしてどのような求人を選ぶべきか確認しましょう。
障害者雇用求人の大半はWebデザイナー
デザイナー求人の中で最も多いのが Webデザイナーです。広告や集客の主体はネットのため、障害者採用のデザイナー求人のうちWebデザイナーが6~7割を占めています。
Webデザイナーの場合、デザインだけでなくWeb制作のスキルも必要となります。例えば以下はWebデザイナーの障害者採用の正社員求人です。
この求人は、Webデザイナーとしてサイトの制作や更新に携わることが分かります。このようにWebデザイナーの求人の多くは、サイトのデザインだけでなくサイトの制作や運営のスキルも必要です。さらに、HTMLなどのプログラミング言語を使ってコーディングできることが必要です。
また、できあがったサイトの更新作業やSEO対策も求められます。こうしたとき、デザインよりもデザイン以外のサイト制作や運営の方が仕事の方が中心になります。
このように、印刷物が対象のグラフィックデザインとの違いは多いです。Webデザインで重要なのが、ユーザーが使いやすいかどうかです。いくらデザイン性に優れていても、わかりづらいかったり操作しづらかったりするサイトやアプリは二度と使ってもらえません。
また、illustratorやPhotoshopの使い方や目的も違います。illustratorを使うとき、グラフィックデザインではレイアウトですが、Webデザインではパーツの作成です。Photoshopを使うとき、グラフィックデザインではレタッチですが、Webデザインではバナー作成です。
そのため障害者がWebデザイナーで就職や転職をしようとするとき、求められるスキルが多いことを理解しておきましょう。
Webから広告イラストまで手掛けるインハウスデザイナーの求人
障害者雇用のデザイナー求人は大手ばかりなので、会社のデザイン部署に勤務するとき、広告や販促物など社内に必要なデザインすべてを引き受けるインハウスデザイン求人もあります。これは大手企業の場合、デザインを外注せずに社内の企画部門が引き受けることが多いからです。
例えば以下は、大手地方銀行の障害者採用のデザイナー正社員求人です。
この求人は、デザインで企業価値向上のためのコーポレートブランディングに貢献する仕事です。また、販売促進だけでなく銀行アプリのユーザーインターフェイス(UI)などの設計に携わるなど、社内に必要なデザインを一手に引き受けています。
このような求人は、デザインツールを使いこなすだけでなくWebのデザインなど幅広い知識やスキルが必要です。
このため、安定した大手で手堅く勤務し続けたい障害者や、幅広いデザインスキルの実務実績を積みたい障害者に適しています。
企画から管理まで幅広いスキルが必要なゲームデザイナー求人
デザイナーの求人には、障害者雇用はWebデザイナーと並んで大手ゲーム会社の求人が多いです。
ゲーム会社の障害者雇用求人の特徴は、プログラミングのスキルや3DCGの制作スキルなどの経験が必要となる場合があることです。またデザイン以外にも企画書や制作管理なども行うことがあります。
例えば以下は、大手ゲーム開発会社に関する障害者雇用のデザイナーの正社員求人です。
有名作品を多数生み出している大手ゲーム制作会社のゲームデザイナー求人です。この求人の会社の障害者雇用実績は以下の通りです。
雇用実績も障害への配慮もあることがわかります。そして求人内容は以下の通りです。
この求人では、ゲームデザインのほかに企画や制作工程の管理、ゲームの難易度調整するデータ入力など制作の全般に関わります。
ゲーム会社では分業が進んでいる方ですが、デザインだけの仕事はほとんどありません。
このようにゲーム開発会社の求人は、たとえデザイナーとして勤務したとしても、デザイン以外にも高い知識とスキルが必要な仕事をしなければならないことを理解しておく必要があります。
製品デザインならプロダクトデザイナー求人
デザイナーがデザインする対象は様々であり、商品や工業製品などのデザインを手掛けるプロダクトデザイナーがあります。障害者雇用のプロダクトデザイナーは、大手製造業の求人が大半です。プロダクトデザイナーは、社内の製品のデザインを手掛けるインハウスデザイナーとして、設計担当者と綿密に打ち合わせながら製品を形作っていきます。
例えば以下は、大手遊技機製造会社に関する障害者のデザイナーの正社員求人です。
プロダクトデザイナーの求人であり、障害者雇用実績があります。以下は、求人内容です。
この求人は、ぱちんこ台などの製品デザインの求人です。いくらデザインに優れていても製品を量産できなければ意味がありません。そのため製品のデザインには、量産のための設計を考慮する必要となります。こうした理由から、プロダクトデザイナーの場合、設計にも深く携わることになります。
デザインした商品が、消費者やクライアントに受け入れられ売り上げを伸ばすことができれば社内で評価や実績として認められ、給与にも反映されるため、障害者でもやりがいの感じられる求人です。
設計の経験が活かせる建築デザイナー求人
デザイナーが設計に携わる業界は、製造業以外に建設業があります。建築会社やデザイン事務所で建物などの構造物のデザインの経験があれば、建築のデザイナーとして転職できます。
例えば以下は、住宅販売会社に関する障害者採用のデザイナー正社員求人です。
この求人は、住宅の設計士を「住宅デザイナー」として募集しています。
和風やヨーロッパ風などのように、どのようなテイストの建物をどのような間取りにした方がいいのか、マイホームの夢をかなえようとするお客さんの要望は様々です。そこで営業担当者とともにひとりひとり客先に行って要望を聞き取り、要望に沿った設計を実現可能な形でデザインします。
このような建築デザインは、設計を通してお客さんの希望を形にするため、お客さんとのふれあいに喜び感じることができる障害者に適しています。
まとめ
デザイナーはクリエイティブ職であり、時間や場所の制約がありません。障害に関わらず仕事できるため、多くの障害者がデザイン会社や会社の設計デザイン部門で働いています。
ただ、障害者が障害者雇用で就職や転職をする場合、求人は法定の障害者雇用率をクリアしなければならない大手企業がほとんどです。大手の求人の場合、障害者雇用実績は豊富で「在宅勤務を選べる」などの配慮が行き届いているメリットがあります。
また、デザインの対象は印刷物から工業製品まで様々です。このためデザイナーとして就職や転職を成功させるには、自分の経験やスキルが採用側にどのような点で貢献できるかを考え、自分の障害が制約とならないような働き方ができる求人を選びましょう。
障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。