発達障害者など空気の読めない障害者の中には、せっかく仕事が順調でも職場への気づかいで仕事がしづらく感じていることがあります。日本の会社では集団行動やルールを重視しており、ことさら和を重んじることが多いからです。
一方、外資系企業は一般的に個人責任の社風や成果・実績主義、給与水準が高いといった特徴があります。これは外国人の中では、日本人ほどの同調圧力に気をつかわなければならないことが少ないからです。このため障害者の中には、外資系企業に適している人もいます。
また外資系企業であれば、個人の判断でできる仕事の範囲が広いです。例えば、同僚や上司に気を遣ってつき合い残業やサービス残業をする必要はありません。
このため、外資系企業に就職や転職をしたいと考える障害者は多いです。ここでは外資系企業にはどのような特徴があるのか、どのような求人を選べばいいのかをみていきます。
もくじ
外資系企業の障害者求人の特徴
外資系企業には英語力を求められる求人が多いです。ただ、会社によって求められる英語力や社風がだいぶ違います。
外資系で働いていても「まったく英語を使って仕事をすることがない」という人は意外と多いです。それは、外資系企業の成り立ちが違うからです。外資系企業の成り立ちは、大きく分けて3つあります。
- 海外の会社が日本進出で設立した日本法人
- 海外の会社と日本の会社がそれぞれ出資した合弁会社
- 海外の会社に買収された日本の会社
日本法人の主な例は、マイクロソフトジャパンやコストコなどです。こういった外資系企業は上司や同僚に外国人が多く、職場や親会社とのやりとりで英語を使うことが多いです。
一方合弁会社の主な例は、富士ゼロックスやセイコーエプソンなどです。このような会社には外国人の管理職がたくさんいますが、外資系の色合いは薄いです。そのため、職場の雰囲気や仕事のやり方は、一般的な日本の会社とあまり変わりません。
また海外の企業に買収された日本の会社の主な例はシャープやサンヨーなどです。こういった会社も外資系ですが、中身は完全に日本の会社です。求人では、外資系であることを明示していないこともあります。同僚が日本人ばかりなので英語力がなくても勤務できます。
このように外資系企業には大きく分けて3つの違いがあることを踏まえ、以下で外資系企業の主な特徴をみていきます。
成果・実績主義の年棒制求人が多い
外資系企業は成果主義、実績主義のため年棒制を導入している企業が多いです。個人の実績や成果を給与に反映させるためには、半期などの短期間では実績や成果を見極められないからです。このため年棒制を導入し、年間の実績を踏まえて年棒を月単位に分割して給与を支給します。
例えば以下は、フェイスブック・ジャパンの障害者雇用・正社員求人です。
在宅勤務の障害者求人です。この求人の給与については以下の通りです。
年棒制で年収は500~800万円となっています。そして年収を月割りにして支給することから、月給は41~66万円となっています。
この求人のように外資系企業では、年棒制を導入しています。評価が月単位や半期単位では、実績にムラがでてしまいます。一方、年棒制であれば年間の実績が評価されるため、短期間の評価よりも長期計画で仕事に取組めます。なお残業代については、月単位で支給されます。
ただ日本の会社では余程の事情がない限り解雇されませんが、外資系企業では能力不足などの理由で金銭で解雇のようなことがあります。つまり仕事で成果を出していなければ、手切れ金を渡されて解雇されることもあります。
このように年棒制に基づく勤務評価や給与体系は日本ではまだ少数ですが、海外では一般的です。ただ、成果を公平に評価して適性に給与に反映させるためには優れた制度なので、年棒制をメリットととらえて外資系企業求人にチャレンジするといいでしょう。
外資系企業の福利厚生は充実している
一方、外資系企業のデメリットとして「福利厚生が充実していない」と思っている人は多いです。日本の会社は雇用を守ることを最優先にしていますが、外資系企業は能力不足で解雇されるようなことをするのでドライな印象があるからです。
ただ実際は外資系企業でも、大手の日本の会社と大差はありません。中には日本の大手よりも休日や手当などが充実していることもあります。例えば以下は、外資系コンサルティングファームの障害者雇用・正社員求人です。
休日については土日2日間の週休・祝日休みとなっており、年休は120日以上です。また育児休暇など日本企業の中には申し出しづらい休暇も特別有給休暇として充実しています。この求人の待遇は以下の通りです。
健康保険などの法定の福利以外では資格取得補助、各種サービス割引のベネフィットステーション、社内イベントなど大手の日本企業よりも充実しています。
この求人の福利厚生は、多くの外資系企業の中のほんの一例です。障害者雇用求人をしている外資系企業では、大手の日本の会社と同じくらい福利厚生は充実しています。このため障害者の外資系企業求人だからといって、福利厚生についてはあまり気にする必要はないといえます。
外資系企業障害者求人はコミュニケーション重視
外資系企業は個人実績・成果主義なので、同僚同士で成果を競い合い緊張感のある職場をイメージする人は多いです。
ただ外資系企業でも、協調性やコミュニケーション力や協調性を重視する求人が多いです。それは、障害者雇用求人でも同じです。外資系企業では空気を読んだり、上司や同僚の心情を察してふるまったりなどの気遣いはあまり必要とされませんが、その代わりに互いの意見はきちんと伝え合うコミュニケーションが重要になります。
このため障害者雇用の求人内容も、コミュニケーション力を求めることが多いです。例えば以下は、外資系IT企業の障害者採用・正社員求人です。
外資系企業の事務職求人です。この求人の求める人材は、以下の通りです。
コミュニケーションスキルの高い人材を求めています。外資系企業では、この求人のように日本の会社の求人よりもコミュニケーション力を求める求人が多いです。
外資系企業の場合、おとなしい人は仕事に自信を持っていないとみなされて評価が低くなる傾向があります。そのため遠慮がちな障害者は、はっきりと意見をいうなどの心がけをした方がいいです。
特に外資系には、日本の大手の会社と違って障害者を雇用する目的の特例子会社がほとんどありません。個人の裁量で仕事できる範囲が日本の会社に比べて大きい分、会社からの配慮を期待するよりも自分から障害への必要な配慮を申し出て話し合うことが大切です。
このように外資系企業の障害者求人では、日本企業以上にコミュニケーション力が必要であることを理解しておきましょう。
外資系企業の障害者雇用に多いのは事務職求人
それでは、外資系企業の障害者求人はどのような職種や業界があるのでしょうか。もっとも多い求人は事務職です。外資系企業なので英文によるメールでのやりとりや翻訳、資料作成の仕事が中心になります。このため英語力が求められます。
外資系企業では、日本企業の事務職求人と違って英語のスキルが求められる分だけ給与が高いです。一般的な事務職よりも年収で50~100万円程度高くなります。
ただ、外資系企業の事務職の障害者求人で求められる英語力に違いがあります。また、求められる英語力によって年収が変わってきます。
以下で、事務職求人の応募条件にある英語力によって、どのくらい年収が変わるのかをみていきます。
ビジネス英語レベルの事務職求人は年収400~500万円
外資系企業の事務職求人には、応募条件にビジネス英語レベルとなっている求人が多いです。ビジネス英語とは、ビジネスの実務で支障なく英語が使えるレベルです。例えばビジネスシーンで特有の丁寧な言い回しを難なく理解したり、表現できたりするスキルです。
このため実務経験のある即戦力の求人が多いです。例えば以下は、外資系企業の障害者障害者向け正社員求人です。
メーカーの事務職求人です。ビジネスレベルの英語力を必要としており、年収は初年度から500万円となっていて高いです。一般的な事務職求人よりも200~300万円高いです。なお、この求人の障害者雇用実績等は以下の通りです。
身体障害者を中心に多くの雇用実績があり、最低限の障害への配慮はあります。このように高いレベルの英語力を求める事務職求人は、障害者でも英語を使って幅広い業務を担うことになるので高収入が狙えます。このため、英語を使った実務経験がある障害者には適しています。
ただ求人の条件となっているビジネス英語の基準は分かりづらいです。採用側の求めるレベルよりも実際の自分のレベルが低くて職場に居づらい状況は誰もが避けたいです。
それでは、ビジネス英語のレベルとは、どのようなレベルなのでしょうか。このとき、TOEICでおおむね800点以上が目安といわれています。これは、英検では準1級よりも高いレベルの英語力です。
例えば以下の外資系生命保険会社の障害者雇用・正社員求人です。
英文事務の求人であり、英語力の目安がTOEIC800点以上です。翻訳から電話対応まであらゆるビジネスシーンで英語力が必要です。このように一般的にいわれているビジネス英語スキルは、TOEIC800点以上と理解しておきましょう。
ビジネス英語初級レベルの外資系求人では年収300~400万円
ただ、このような高い英語力を持つ障害者はほんの一握りです。このときビジネス英語レベルのように流暢でなくても、英文読解や日常英会話が不自由なくこなせる障害者は多いです。つまりTOEICでいえば600点レベル、英検であれば2級から準1級レベルの英語力です。
このレベルであれば日本の上場会社でも英語力をプラス要素として認めてくれます。それは、外資系企業も同じです。
外資系企業の事務職求人では、このようなビジネス英語初級レベルの英語力からが大半です。例えば以下は、外資系商社の障害者雇用求人です。
経理の事務職求人です。英語力としてTOEIC600点以上が必須となっています。年収は400万円からとなっており、日本の大手の事務職求人に比べて100万円くらい高いです。
このように外資系企業の障害者雇用は、業種を問わず事務職求人が多いです。そしてどの会社でも、事務仕事のほかに英文資料作成や英会話などの英語力が求められます。また外資系の事務職では英語のスキルが求められる代わりに給与が高いです。
このため外資系企業を目指している障害者は、求人ではTOEIC600点を目安にしましょう。そして実務を通じてビジネス英語に磨きを掛け、さらにキャリアアップをしていきましょう。
英語力歓迎の求人では年収は200~300万円程度
それでは外資系企業に就職や転職をするためには、英語力がない障害者はあきらめなければならないのでしょうか。このとき障害者雇用の事務職には、英語力がなくても外資系企業の求人があります。ただ、給与は低いです。一般的な日本の会社と同じくらいか、少し高い程度です。
例えば以下は外資系物流会社の障害者雇用・正社員求人です。
グローバル企業の経理事務補助職の求人です。この求人の応募要件は以下の通りです。
英語力のある障害者を歓迎していますが、初年度の年収は200万円からであり、一般的な事務職求人と大した違いはありません。このように、高い英語力が求められなかったり、高い事務処理能力が必要ではなかったりする求人は、外資系企業でも年収が低いです。
これは前述の通り、外資系企業でも法定で一定割合の障害者を雇用しなければならない義務があるからです。そのため障害者雇用を優先する場合、応募条件の緩い求人を出す場合があります。
ただ、実務の英語力をこれから身につけたいと考えている障害者や外資系企業にこだわって就職や転職をしたいと考えている障害者には適しています。
このように外資系企業の障害者事務職求人は英語力が高ければ収入が上がり、低ければ日本の会社と同じくらいです。このため外資系企業を希望する場合、自分の今の実力と将来のキャリアアップ、欲しい収入のバランスをよく考えながら求人を選ぶようにしましょう。
外資系障害者雇用のハイクラス求人
なお外資系の障害者求人では、どのような求人が高収入を狙えるハイクラス求人なのでしょうか。それは、日本の会社と同様に専門職です。外資系の専門職求人については日本の会社よりも英語力を必要とされることが多いため、初年度から給与が高いです。
ただ外資系企業は、日本の会社と大きなメリットがあります。それは、実績を上げれば給与は青天井で上がる場合があることです。実績が目に見えやすい専門職では、特にこの傾向があります。
日本の会社では個人がどんなに突出した成果を上げても給与が勤務評定の枠組みに抑えられます。そのため外資系に比べて、結果に見合った給与が得られないことが多いです。
以下では、外資系企業の主なハイクラス求人の特徴をみていきます。
営業職求人が多い外資系製薬会社
外資系企業が多い業界のひとつは製薬業界です。外資系製薬会社はすべて欧米のグローバル企業であり、国内に多くの拠点・工場があります。
外資系製薬会社では、事務職と並んで営業職の求人が多いです。これは、障害者雇用も同様です。例えば以下は、外資系製薬会社の障害者雇用・正社員求人です。
医師や薬剤師など医療関係者に、自社の医薬品について情報を提供したり売り込みをしたりするMR(Medical Representatives)職の求人です。年収は500万円からとなっており高いです。
MR職は医師や薬剤師など知的レベルが高い人たちばかりが相手なので、医薬品に関する高度な専門知識が求められます。このため難関のMR認定試験を突破しなければなりません。なお求人への応募は文系出身でも可能ですが、学歴は大卒に限られています。
また最新の新薬開発情報などに触れるには、英語力が必要です。営業職なので、当然対人力も必要です。
外資系企業の営業職は、障害者でもこのような製薬会社のMR職やコンサルティングファームなどの専門性の高いハイクラス求人が大半です。専門性を身につけて高収入を狙う障害者は、英語力と障害者雇用枠の恩恵を活かしてチャレンジするといいです。
外資系IT企業エンジニア求人は高収入
外資系の専門職求人は、障害者雇用の中ではIT業界でエンジニアの求人が多いです。エンジニアは、早く正確にクライアントの要望をくみ取り、対応できるスキルが必要です。そのためには、専門性以外にコミュニケーション力やリーダーシップも発揮する必要があります。
例えば以下は、外資系IT会社の障害者雇用・正社員求人です。
自社開発のクラウドサービスをクライアントが導入するときに、エンジニアとして作業を行う求人です。年収は初年度から500万円以上と高いです。以下は、この求人が求める人材です。
英語力については「英語力があれば尚可」となっているのであまり重視されていませんが、実務経験を重視しています。つまり、エンジニアとしての即戦力を求めていることがわかります。
このように、外資系の専門職では英語力も求められますが、それ以上に即戦力としての専門スキルが必要であることがわかります。
このため、エンジニアとしての経験を活かして給与や待遇を上げたいと考えている障害者に適した求人です。
まとめ
外資系企業は日本の会社と違って、実績を公平に評価して給与に反映させるために年棒制を採用している求人が多いです。また、日本の大手の会社と同様に、休暇や福利厚生は充実しています。
ただ、職場では日本の会社以上に自分の意見をはっきりと主張する必要があるため、コミュニケーション力が重要です。特に障害者の場合、障害への配慮が必要なときは遠慮せずに申し出て話し合うことが大切です。
外資系企業は英語力が求められる分、給与は高いです。ただ事務職の場合、求められる英語力のレベルに応じて給与が変わります。ビジネス英語レベルであれば高い給与が狙えますが、英語力が必要でない求人であれば一般の事務職と変わりません。
また外資系企業の障害者求人のうち、高い専門性を持つ営業職やエンジニアなどの求人で障害者でも高収入が狙えるハイクラス求人があります。
このように障害者が外資系企業へ就職や転職をしようとするときは、自分の英語の実力や専門性などの強みを客観的に分析して将来のキャリアアップに有利になるよう求人を選びましょう。
障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。