公務員の仕事は安定していて、給与や雇用に不安が少ないです。だから、たくさんの人が公務員になりたがります。でも、障害者が公務員になるときは、働き方や採用の特徴がさまざまです。

私は今、民間の会社で働いていますが、公務員の親戚や知り合いがたくさんいます。県庁や市役所だけでなく、消防署や財務局、税務署などもあります。中には地方銀行から県職員に転職した親戚や、県庁の仕事を嫌になって証券会社に転職した知り合いもいます。

彼らから本当の話を聞く中で、障害者採用の公務員には民間の会社と比べてメリットがあるだけでなく、デメリットもあることがわかりました。

今回は、公務員に就職や転職を考えている障害者が知っておくべきことについて説明していきます。

障害者の働く環境が整備されている公務員の仕事

公務員の仕事には、以下ような特徴があります。

  • 施設・働き方の両面で障害者にとって働きやすい職場環境
  • 行政職の公務員は資格・専門性不要
  • 年功序列・終身雇用
  • 残業が少なく充実した福利厚生や各種手当、休暇
  • ノルマがなく個人実績よりも和を重んじる職場

こうした特徴は、大手の会社の一般的な事務職とよく似ています。

ただ公務員の仕事は民間の会社のように利益を生み出さないバックオフィス型の事務職です。ライバル会社と技術やサービスを競い利益を求める仕事はないため、スキルや専門性を磨いたり、障害者でも健常者と変わらず仕事ができます。

これらの特徴のうち、障害者にとって公務員の仕事の大きなメリットは、施設と職場環境の両面が充実している点です。

・障害者にとっての職場環境が充実している
官公庁の建物は、様々な来庁者向けにバリアフリーや手すり点字などの配慮が行き届いています。このため職場でも、身体障害者が庁舎内で働くときに施設面で困ることは少ないです。

また、働き方への配慮も受けやすいです。公務員は民間でいえば独占企業の従業員です。ライバル他社との競争や、営業実績を同僚同士で競っている民間の会社と比べて、職場の雰囲気は相当のんびりしています。業務を支え合う仲間意識が強いため、障害者であれば周りが配慮してくれることが多く、休暇も取得しやすいです。

専門職以外は資格・スキル不要、高卒・大卒の学歴区分はある

公務員は行政職が大半です。行政職は民間の事務職と同じデスクワークです。専門性や高い知識は求められません。同じ部署に長く勤務することはなく2~5年で異動になることから、民間に比べて高い専門性が必要な部署は少ないです。

特に公務員の障がい者採用は行政職の求人ばかりなので、専門性が不要です。

例えば以下は、神奈川県相模原市の障害者雇用・正職員求人です。

行政職と学校事務職の求人です。行政職は市民サービスの事務全般の他、民間と同じように企画、会計などの部署があります。現場対応もありますが、基本はバックオフィスの仕事です。

なお公務員にも建築・土木、化学、薬剤師など専門職はありますが少数です。

公務員は民間の会社や、現場の最前線で働く民間の人たちを広く管理・監督することが多いため、高い専門性はありません。また専門職であっても、民間のようにキャリアアップにつながることも少ないです。

・受験資格は自治体によって学歴不問の場合と大卒以上の場合がある

公務員試験の受験資格は、自治体によって大卒以上のケースと学歴を問わないケースがあります。このとき障害者採用では、学歴不問のケースが多いです。

例えば以下は、神奈川県相模原市の障害者雇用・正職員求人です。

応募資格に必須項目はなく、「学歴不問」となっています。公務員の障害者雇用では、他にも「高卒以上」の求人があります。

こうした受験資格であれば専門知識や社会人経験がなくても、誰でもチャレンジできます。

ただ自治体によっては、障害者雇用であっても受験資格が「大卒以上」に区分している場合があります。

例えば以下は、愛知県刈谷市役所の障害者採用・正職員求人です。

受検資格は「大卒以上」となっています。このように障害者雇用であっても、学歴に区分がある場合もあります。

他にも受験資格に学歴を設けていなくても、採用試験は難易度によって「大卒程度」「高卒程度」のように区別されていることがあります。このとき自治体によっては「上級職」「初級職」、「Ⅰ種」「Ⅱ種」など呼び方が違うこともあります。

ただ高卒の障害者が大卒程度の採用試験にチャレンジしても、難易度が高いため採用されることは少ないです。

職員採用で、こうした学歴の区別は年々減少していますが、自治体や職種によってはこうした学歴区分がある事を理解しておきましょう。

充実した福利厚生

公務員は、大手以外の民間の会社に比べて福利厚生が充実していることが特徴です。国であっても自治体であっても、公務員であれば福利厚生は充実しています。

例えば以下は愛知県刈谷市の障害者採用・正職員求人です。

民間と同じように健康保険や厚生年金、公務労働災害などの社会保険があります。

なお公務員には雇用側の事情で解雇されないため、民間と違って雇用保険はありません。公務員を中途退職するときは、失業保険がでないので注意しましょう。

なお、公務員ならではの福利厚生は、以下の通りです。

  • 利息が非課税の「共済貯金」や銀行よりも低利子の「共済貸付」
  • 民間保険の半額程度の掛け金で済む「共済保険」
  • 共済組合が運営する安価な「保養所・宿泊施設」
  • 「ベネフィット・ステーション」が利用できる

このうち「保養所・宿泊施設」は、共済組合が運営する低料金の宿泊施設です。全国各地の観光地だけでなく、大都市の一等地にも存在します。

「ベネフィット・ステーション」は官公庁や国内の大手の会社から福利厚生事業を受託し、運営している会社の福利厚生サービスです。全国各地のレジャー・サービスや物品購入などを、通常よりも1~2割安く利用できます。

私は民間の会社に勤務していますが、公務員の福利厚生の充実ぶりを実感できたことがあります。それは、県職員の親戚のつてで東京駅近くの共済のホテルに宿泊したときです。民間が受託・運営しているホテルなので、食事やサービスは充実していました。広々とした快適な部屋で、民間のホテルであれば、5~6万円くらいが相場ですが、家族4人で1万7千円で利用できました。

取得しやすい有給休暇

障害者の場合、通院のための有給休暇や時間休が必要となるケースが多いです。このとき、公務員の休日は充実しており、これらを取得しやすいので障害者にはとっては働きやすいです。

例えば以下は、神奈川県相模原市の障害者雇用・正職員求人です。

年次有給休暇20日となっています。他にも祝日や年末年始・夏季休暇、冠婚葬祭の休暇などがあります。

公務員の職場では、上司から有給休暇を積極的に取るように指示されため、実際に有給休暇を取得しやすいです。職員の有給取得率が低いと、上司が幹部から注意や指導を受けることも珍しくありません。

また、公務員の職場はバックオフィスの仕事ですが、その業務を補助してくれる非正規雇用の職員数も充実しています。

こうした非正規職員の中には、転勤がある正規職員よりも同じ部署に長期間在籍していることがあります。町役場に勤務する私の知人は、「正規職員以上に仕事をこなしてくれるため、助かる」と話していました。

・給与は民間大手の会社の水準に合わせている

公務員の給与は、若いうちは民間の大手の会社と大きな違いはありません。地方であれば、地元の大手の会社の水準に合わせてあります。
これは公務員の給与は、民間の会社と大きな差が生まれないように調整されているからです。

例えば以下は相模原市の障害者雇用・正職員求人の給与欄です。

大卒で初任給が約21万円であり、高卒程度で約17万円です。これは、首都圏の大手の会社とほぼ同程度の水準です。

公務員は業績に左右されない終身雇用・年功序列です。勤務年数を重ねることで自動的に昇給していくため、公務員では初任給の差を心配する必要はありません。

また障害者採用であっても一般採用であっても給与は同じです。理由なく健常者の職員と差をつけるのは違法だからです。

公務員採用試験は障害者雇用であっても難題で競争率が高い

こうした公務員のメリットから「ぜひ、公務員になりたい」と考える障害者は多いです。ただ、公務員の障害者採用試験にはいくつか特徴があります。

公務員試験の特徴は、以下のようなものです。

  • 障害者採用試験を行っていない自治体がある
  • 採用試験が難題であり、受験勉強に相当の時間と労力が必要
  • 一般枠に比べて競争倍率が高い

障害者雇用であっても受験勉強が必要であり、競争率は高いです。

なお障害者雇用の公務員採用試験は、自治体によって実施しているところと、実施していないところがあるので注意が必要です。

例えば以下は、熊本県内の自治体の障害者採用試験の実施状況です。

熊本県や熊本市、八代市など人口が多い自治体では実施されていますが、人口が3万人程度の宇土市では実施していないことがわかります。
県庁所在地や中核市などのように規模が大きな自治体であれば確実に実施されますが、人口が数万人程度の自治体では実施しない場合があります

これは公務員採用が、退職者の補充だからです。人口が増加している自治体は増員もありますが、多くの自治体は人口が減っているため、職員数の維持にとどまっています。

ただ国や機関、各自治体には、法律で一定割合以上の障害者を雇用する義務があります。このため人口が少ない自治体であっても障害者の雇用が少ないときは、障害者を採用する傾向があります。

・障がい者採用の競争倍率は一般枠に比べて高い

また障害者採用の公務員試験は、一般枠に比べて相当競争率が高いことが多いです。

例えば以下は、福岡県の公務員採用試験の受験倍率です。

行政職の場合、大卒程度の一般枠は7.0倍ですが、障害者採用は12.3倍です。

行政職をはじめ多くの公務員の業務は、障害者にとっては健常者と同じように仕事ができるため働きやすいです。このため障害者採用は障害者に人気が高く、どの自治体でも競争率は高いことを理解しておきましょう。

また前述した福岡県の障害者採用は選考試験です。一般枠のような競争試験ではありません。例えば、「どうしても福岡県職員に採用されたい」と思っても、書類選考や面接で適性をアピールしてライバルに差をつけるしかありませんが、面接担当者の選り好みに振り回されることになります。

このように公務員の障害者採用試験では、競争試験だけでなく選考試験も多いです。このとき、公務員一本に絞って採用に向けた努力をしても、高い倍率の中から選ばれるとは限りません。

年に1度しかない採用試験で不採用となれば、また1年後を待たなければなりません。このため、職種や自治体を絞るよりも他の自治体や民間の会社への就職・転職活動を並行して選択肢を増やしておきましょう。

五肢択一の教養・専門試験や論述問題、論文、面接試験・集団討論

それでは、公務員の障害者採用試験はどの程度の難易度でしょうか。また、どのように選考が進んでいくのでしょうか。

例えば以下は、相模原市の障害者雇用・正社員求人です。

神奈川県相模原市の採用選考方法です。1次試験で「教養」と「論述」の筆記試験です。2次試験が「適性検査」、「面接」、3次試験が「最終面接」です。
適性検査は、民間の会社でも普通に行われている社会人の適性を測るペーパーテストです。心理テストに似た設問に対して、業務に差支えのない回答をするだけで済むため、このテストの対策は簡単です。

・障がい者採用であっても教養問題の難易度は高い

ただ公務員試験は、障害者であっても筆記試験の難易度が高いのが特徴です。

例えば以下は、広島県職員の障害者採用試験の教養試験問題です。

衆議院と参議院の機能に関する5肢択一問題です。こうした高校の社会科レベルの出題もあれば時事問題も出題されるため、学生時代に学校の授業や普段から教養として新聞やニュースの情報や解説を入手する習慣が必要です。

他にも以下は、広島県の障害者採用の教養試験問題です。

図形の問題です。教養試験のひとつである「数的推理」では、こうした図形の回転運動が多く出題されます。障害者であっても受験対策では、過去問や問題集などに時間をかけて取り組む必要があります。

なお知的障害者については、難易度が低い出題がされます。以下は、同じ広島県の障害者採用試験の教養問題です。

漢字の読み方の出題です。知的障害者であっても業務では最低限の常識的な知識は必要です。このため、こうした読み書きや計算能力をみる問題が出されます。

・論理的思考が問われる論述問題

また公務員試験で、障害者採用であっても論述試験が行われることがあります。

例えば以下は、福岡県の職員採用試験の論述問題です。

「現代の高度化した情報技術を、どのように活用するか」について論述する問題です。

これは普段から時事問題に興味を持つだけでなく、自分なりに意見を意識的に持っておくことが大切です。また、自分の意見を論理的に記述するスキルも必要です。

こうした問題は、小手先だけの対策では到底太刀打ちできません。試験対策のために、まとまった時間と労力を使って取り組む必要があります。

障がい者採用では作文・面接のみの採用試験がある

ただ障害者採用試験では、こうした難題ばかりではありません。競争試験は行われず面接と作文のみの選考試験があります。

例えば以下は、愛知県刈谷市役所の障害者採用・正職員求人です。

公務員採用試験では試験対策で、勉強に多くの時間と労力を必要としますが、この障害者採用では競争試験ではなく「自己PR試験」と呼ばれる選考試験が行われます。自己PR試験の採用過程は、以下の通りです。

3次試験まで実施されますが、自己PR型では一般型の試験と違って教養試験がありません。

ただ、面接だけでなく最終試験では小論文試験や集団討論なども行われるため、いずれにしても受験対策が必要となります。

・障害者採用であっても集団討論試験が行われることがある

なお、集団討論では一つのテーマを数名の受験者がグループを作って話し合い、結論を出します。

例えば以下は、熊本県の職員採用試験です。

IR誘致の影響や是非を話し合うものです。このとき重要なのは、結論の良し悪しではありません。採用側は各受験者が討論の中で、受験者一人ひとりがどのような役割を果たしているかをみています。

こうした討論では、どのようなテーマが出題されても意見ができるようにしておくことが必要です。そのためには日ごろから、社会の出来事に興味を持って情報を取る習慣が身に付いていなけらばいけません。

このような試験では、試験対策として短期間で修得できるものではありません。集団の論議の中で積極性と協調性のバランスを取りながらグループの議論に貢献できるように普段から自分の意見を持ち、わかりやすく説明することを意識しておきましょう。

このように公務員採用試験では教養試験がない場合もあります。ただ、こうした試験は少数であり、実際の採用人数もごくわずかなので競争が激しいことを理解しておきましょう。

障害者や民間の会社からみた公務員のデメリット

このように公務員は、民間と比べてメリットが多いですが、障害者でも採用試験の競争率は高く、試験問題も難しい場合が多いです。

また仕事内容や職場環境については、障害者にとってのデメリットがあります。

公務員は良くも悪くも日本型雇用の組織です。このため古い日本の会社にありがちな多くのメリットとデメリットが凝縮されています。

民間に比べて公務員の主なデメリットは以下の通りです。

  • 専門性が低くスキルアップができない
  • 協調性をことさら求められ、業務目標や勤務評価基準があいまい
  • 部署によっては障害者への配慮が足りない

業務内容や福利厚生などの表面的な内容は、採用パンフレットや募集要項をみれば分かりますが、こうしたデメリットは実際に働いている人でなければわからないことばかりです。

専門性やスキルが身に付かない

公務員の大半を占める行政職は事務職であるため、専門性は必要ありません。

私の親戚は医療・福祉の素人の文系大学卒ですが市役所の福祉課に勤務し、翌年は市立病院の事務職に転勤しました。

また銀行員から県職員に転職した私の友人は、「採用面接で経済企画や中小企業支援で貢献したいと熱く語ったのに、配属は環境生活課だった」とぼやいていました。

このように公務員は、スペシャリストよりもどのような部署でもオールマイティにこなせるようなゼネラリストが中心です。公務員には専門性は必要とされておらず、新しいスキルや専門性を尊重する雰囲気も民間に比べてありません。

専門性やスキルを活かして活躍したいと考えている障害者は、こうした公務員のデメリットを理解しておきましょう。

・公務員にも及びつつある事務合理化の波

こうしたバックオフィス型の業務で専門性やスキルがない環境では、民間では普通に取り入れられているシステム化が公務員の職場では進みません。

ただ、事務合理化の波は公務員にも押し寄せていて、働く環境も変化しつつあります。

以下は、県職員で会計業務を担当している私の友人の話です。

これまで民間よりもずっとシステム化が遅れていたが、近年は急激に事務の合理化が進んでいる。

年末調整や毎月の給与、残業や各種手当、経費など、これまで10人以上の職員で1~2週間かけて手作業でとりまとめや計算をしていた。

ところがシステム化によって一瞬で処理できるようになり、こうした人員がすべて不要となった。余った人員をどう活用するかが今後の課題となっている。

公務員では、システム化によって仕事が奪われることによる抵抗が強く、合理化や効率化が進んできませんでした。一方で民間では他社との競争で生産性や利益率が優先されるため、事務の改善や合理化は不可欠であり迅速に行われています。

こうして合理化が進んだとき、専門知識やスキルのない大半の公務員は、慣れない部署や不本意な部署への異動を余儀なくされることが増えていきます。
公務員のような専門性やスキルの身に付かない業務は今後、長いキャリアにとってのリスクとなるおそれがあることを理解しておきましょう。

実績目標があいまいで協調性が強く求められる

民間では、他の支店や同僚とお互いに実績や成果を競い、結果を出せば給与や勤務評価に反映されます。

一方でバックオフィス型の事務職である公務員は、こうした目にみえる形で成果を示しにくいため評価もわかりにくいです。

例えば以下は、銀行から県職員に転職した友人の話です。

銀行時代は営業成績、事務職では融資金の延滞の解消や事務のエラー率の低さで努力が評価され、ボーナスや勤務評価に反映された。

しかし公務員では、サボりがちな人でも標準の勤務評価が得られる。一方で積極的な業務にはミスやトラブルが伴うが、ミスや苦情を受けたときは、ちょっとしたことでも評価が下げられる。

反対に突出した成果を出せば同僚からねたまれたり、仕事のやり方にケチを付けられひがまれたりする。

勤務の優良表彰はあるが平等が重視されるため、業務成績の良し悪しはあまり関係なく順番に表彰される。

これではやる気が起こらない。

このように公務員では、アットホームな職場が多いため同調圧力が強いです。結果や成果よりも協調性が強く求められます。このため職場の空気を読める人の方が仕事がしやすいです。

こうした職場は障害者でも外交的なタイプであれば問題ありませんが、対人不安や周りに合わせることが苦手な精神障害者や発達障害者はなじめない場合があります。

障害者への配慮や福利厚生が充実している大手会社の求人

公務員の恵まれた待遇やでデメリットをみてきましたが、公務員以外でも公務員以上に待遇や環境の恵まれた求人があります。

公益性の高い法人や大手の会社であれば、公務員並みに雇用が安定していることが多いです。また、障害への配慮や福利厚生、休日が公務員以上に充実していることもあります。

独立行政法人の求人は公務員と同じ好待遇

公務員ではなくても、公共性が高い法人があります。それは例えば理化学研究所、国立大学や国立病院などの独立行政法人などです。こうした法人は国の各省庁の所管の下にあるため公共性が高く雇用は安定しており、福利厚生などの待遇は公務員と変わらず恵まれています

例えば以下は、障害者でも応募可能な独立行政法人の正職員求人です。

住宅金融支援公庫の求人です。個人向け住宅ローンを専門とする政府系金融機関です。このため金融市場全般の専門知識やスキルを身に付けることができます。以下は応募条件や給与です。

学歴は大卒以上となっていますが、障害者でも応募可能です。月給は初任給が大卒で20万5000円であり、大手の会社や公務員と同じです。

この求人の勤務時間、福利厚生や休日は以下の通りです。

勤務時間は「8時55分~午後5時15分」の定時となっており、福利厚生は社会保険や健康診断がある他、土日祝日休、20日間の有給休暇など公務員とほぼ同じです。以下は、この求人の選考方法です。

書類選考や面接、筆記試験のみです。筆記試験で適性検査は行われますが、公務員採用試験のような教養試験はありません。競争試験ではなく面接重視の選考試験であるため、公務員試験対策に時間や労力は必要ありません。

こうした行政法人であれば、公務員と同等の待遇でありながら、法人の特性によっては公務員では不可能な資格やスキルを身に付けることもできます。

また、試験対策に時間と労力を割かれることもないため、公務員を目指しつつ準備ができていない障害者は、こうした公共性の高い行政法人に挑戦してみましょう。

大手の会社の障害者雇用は公務員と同じ事務職求人が多い

大手の会社には、時代の流れに乗って成長している新興の会社もありますが、こうした会社は合理性を重視しており、実績や効率を問われることが多いです。このため、公務員志向の障害者には適していないことが多いです。

一方で、公務員のように景気の変動に左右されにくい安定した業界で、長く安定して働くことができる求人も多いです。

例えば以下は、ガス事業会社の障害者雇用・正社員求人です。

データ入力や書類作成などの事務職なので、公務員と同じようなデスクワークです。以下は、この求人の休日休暇です。

土日2日の週休2日、祝日や夏季・年末、慶弔・特別休暇があり、休日休暇も公務員と全く同じです。このため、ゆとりある働き方ができます。

以下は、この求人の給与、福利厚生や勤務時間です。

年収はスタートが「257~296万円」からとなっており、地方公務員の高卒程度です。この求人は給与水準が全国トップレベルの愛知県ですが、大手の民間企業に比べれば1~2割程度低いです。

ただ、勤務時間は定時であり、年休も120日であることから公務員と全く同じです。

このように民間の会社でも、社会インフラを支えるこの求人のような会社はほぼ独占企業です。このため経営は安定しており、恵まれた待遇で働くことが可能です。

また、こうした会社の他にも長年日本の産業を支えてきた大手の会社には障害者雇用が多く、公務員と同じような環境で安定して長く働くことができます。

公務員を目指している障害者は、こうした大手の会社で好待遇の求人も視野に入れて選択の幅を広げてみましょう。

障害者雇用を目的に設立された特例子会社

大手の会社には、好待遇でありながら公務員よりも障害への配慮や理解がある求人があります。それは特例子会社です。
特例子会社は、大手の会社が障害者雇用率を維持・向上させるために設立した会社です。障害者従業員のための会社なので、当然施設面や働き方への配慮が充実しています。

例えば以下は、大手広告代理店の特例子会社の障害者雇用・正社員求人です。

書類確認やパソコンによるデータ入力など、公務員や一般的な事務職求人と同じ仕事内容です。以下は、この求人の働き方や施設についての配慮の内容です。

手話通訳や音声読み上げアプリの他に、仕事の中で支援員による相談受付、面談など障害者が安心して働けるように様々な配慮があります。またキャリアアップのための相談窓口で資格取得や研修、障害者の特性を理解するためのセミナーなど、様々な支援があります。

こうした取り組みは、公務員にはない多様性を重視した大手会社ならではの姿勢がうかがわれます。

以下は、この求人の給与や福利厚生です。

給与は年収が「247~332万円」がスタートとなっており、首都圏の大手の給与水準だけでなく、一般的な公務員の水準と比べても1~2割くらい低いです。ただ公務員と同じ昇給があるため、勤務年数によって上がります。

また福利厚生も、社会保険や健康診断、育児・介護休業なども認められており、長期勤務への報奨金や保養所など公務員と全く同じです。

以下は、この求人の休日の内容です。

「土日完全週休2日、祝日休暇」、「有給休暇20日、年間休日120日」となっているため、公務員とまったく同じです。ほかにも障害者は通院が必要ですが、働き方への配慮として定期通院制度があります。

公務員でも通院を申し出れば配慮をしてもらえますが、この求人は制度にしているため、気兼ねすることもありません。

このように民間大手の会社には、公務員以上に障害者の働きやすさを追求した求人があることを理解しておきましょう。

まとめ

公務員の最大のメリットは、長く安定して働くことができることです。障害への配慮がある充実した施設、有給休暇や福利厚生など障害者にとって働く環境が恵まれています。

ただ、障害者採用は人気があるため高倍率です。五肢択一問題や論述、面接・集団討論など多くの時間と労力をかけて試験準備が必要です。障害者採用では、作文や面接のみの場合もありますが、ごく少数です。

また、公務員のデメリットは専門性やスキルが身に付かないことです。成果よりも協調性が強く求められるため、やりがいが得られません。

このとき公務員以外でも障害者に適した求人はあります。公務員採用試験ほどの試験準備の時間と労力が必要はありません。

公務員以外の求人のうち各省庁が管轄している独立行政法人であれば、公務員と同待遇であり、その法人の特性によっては障害者でもスキルや専門性が磨かれます。

また民間の会社であっても、公共性の高い会社や業歴の長い大手の会社であれば経営が安定しており、公務員並みに好待遇です。

他にも障害者雇用を目的に設立された特例子会社であれば、障害者に対して施設や働き方への配慮が公務員の職場よりもはるかに行き届いています。

このように障害者が公務員を目指す場合、公務員のメリットとデメリットを十分に理解しましょう。そして公務員だけにとらわれず、民間の会社も視野に入れて選択肢を広げ、就職転職を成功させましょう。


障害者が就職・転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい障害への配慮や労働条件の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、障害者特有の事情説明や交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「障害に応じた求人情報が多いか、少ないか」「転職エージェントが障害の特性に理解があるか」「転職後のフォローが手厚いか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。